ずっと隣に

をよよ

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桃の章

ねむたい

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「んん……、朝。。おはよ~。あれ?」

 朝、目が覚めて周りを見たけど誰もいない。そしてなんかネックガードの後ろの方にタオルが巻いてある。

「なにこれ。」

 だいぶボロボロだったからその辺にポイッと捨てておいた。

「あ、起きたんだ。おはよう。」

 一仁がお風呂の方から来た。

「おはよう、一仁。朝シャン?、禿げちゃうよ。」

  「まだ大丈夫だよ。」

 そう言ってまだベッドの上にいる僕に抱きついてくる。

「もうちょっとゆっくりしよう。」

「いいよ、僕もまだ動きたくない。」

 時計を見るとまだ七時半、こんなに朝早くに目覚ましなしで起きれたのは初めてかもしれない。

「一仁、ボディーソープの匂いがする。」

「唯も同じ匂いだよ。」

「ふふ、そうだった。でもなんか、ちょっといい匂いするかも。」

「うん、もっと嗅いで。」

 昔から傍にいた、大好きな匂い。石鹸の匂いが邪魔をするけど確かにある安心する匂い。一仁のいい匂いを探してるうちに少しずつ瞼が重くなってくる。

「寝る?、寝てもいいよ。」

「寝ない。もったいない。」

「じゃあ、そろそろ起きる?」

「まだ。」

 まだ、起き上がれない。あとちょっと、あとちょっとだけ嗅いでいたい……。

「……おやすみ、唯。」








「唯、そろそろ起きよう。」

「んん、一仁?、おはよぅ。」

「おはよう、朝ごはんできてるよ。」

「うん。」

 眠い目を擦って起きる。さっき一回起きた気がするけど、なんかふわふわする気がする。結局、一仁に抱っこされてテーブルに着く。今朝はパンとスープだ。

「美味しい?」

「うん、美味しい。」

 そろそろ目も覚めてきたのに、連れてこられたまま僕は一仁に餌付けされている。

「自分で食べれる。」

「ううん、無理。はい、アーン。」

「んぅ、あー。」

「美味しい?」

「美味しい。」

 これの繰り返し。ちょっとやだ。

「今日は何か予定あるの?」

「特にないよ。ここでまったりしよう。」

「買い物とかいいの?」

「食べるものならあるから心配しなくていいよ。」

「…服とかは?」

「着るものもあるけど、新しい服見に行きたいの?、待ってね車呼ぶから。三時間くらいで来ると思うよ。」

「え、いい!、要らない。」

 ちょっと外に出たいなと思って言ってみただけなのにまさかあの長い距離を無駄に運転させることになるとは思わなかった。

「そう?、他にしたいことがあったら行ってね。」

「えっと、少し外に出ない?」

「お外出たいの?、庭で日向ぼっこでもする?」

 なんかちょっと違う気がする。

「ううん、しない。ゲームしよ。」

「うん。」

 僕は元からインドア派だからこの室内でまったりするのがとっても心地いい。今日もゲームをしてお昼を食べて勉強をする。

「なんか、この課題の時間がなかったら僕ダメ人間になるところだった。」

「そうかな。毎日二人でゆっくりして、有意義だよ。あ、ここ違うよ。」

「う、……もうわかんない。一仁助けてぇ。」

 僕は隣に座っている一仁の足に寝転がる。

「寝ても課題は無くならないよ。」

「うん、分かってる。けど……。」

 急に眠気に襲われて、僕は抗うことが出来なかった。







 次に目が覚めると一仁に抱き抱えられてソファの上だった。

「おはよう。」

「あ、起きた。おはよう。」

「課題やらないで寝ちゃった。」

「大丈夫、また明日やろう。」

「うん。」

「まだ夜ご飯にはちょっと早い時間かな。」

「もうちょっとゆっくりする。」

「うん。」

 今日はほとんど寝ていた気がする。でも仕方ない、一仁の隣が心地よすぎてとても動きたく無くなるんだもの。
 そうしてごろごろしていたがさすがにお腹が空いてきたから一仁が簡単に夜ご飯を用意してくれた。今夜は焼かれたお肉。食後にはケーキが出てきた。僕が寝すぎて暇だったのかも、ごめん。

「今日はお風呂どうする?」

「今日は一人で入る。一仁先いいよ。」

「そう、じゃあ先に入るね。」

 一仁が出てきた後、僕もお風呂に入った。昨日窮屈な思いをさせてしまったから一人で入る。アヒルがいるから一人と一匹だった。

 お風呂から出てリビングに行ったが一仁が見当たらない。寝室に行く途中、窓が空いてるのに気がついた。

「一仁、何してるの?」

「あ、唯、おかえり。花火する?」

 庭から一仁が大量の花火を手にこちらを見てくる。

「やる!」

 家族用みたいな、大きいセットを二人でやったからなかなかに数が多い。

「わぁ、綺麗!、あははっ。」

 花火なんて子供の頃以来で気分が上がる。でも結局全部はやりきれずに締めに線香花火に火を付けた。

「どっちが長くできるか勝負しよう。」

「いいよ、僕が勝ったら唯は何かしてくれるの?」

「えーと、肩叩きとか?」

「ふふ、そんなお父さんみたいなのはいらないなぁ。」

「えー、じゃあ何がいいの。」

「そりゃあ、き……また今度一緒にここで過ごして欲しいなぁ。」

「そんなのでいいの?、それ僕も嬉しいやつ。」

「本当?、嬉しい。」

「僕は、明日もケーキ食べたい。」

「そんなの、毎日でもやるのに。」

「毎日!、わーい。」

「まだ勝負着いてないよ。」

 結局、僕の線香花火が先に落ちた。

「僕の勝ちだね。約束通り、来年も来ようね。」

「うん、約束だよ?」

 一仁と小指を絡ませて指切りをする。
 花火を片付けて室内に戻る。

「ちょっと花火の匂いするね。」

「お風呂の前にすれば良かったね。ごめんね、ちょっと臭くて。」

「ううん、一仁の匂いもする。いい匂い。」

 お昼寝をした癖に、僕はまた直ぐ眠くなる。

「ベッド行ってから寝ようね。」

 一仁にベッドまで運ばれる。そのまま僕は一仁の胸に顔を埋めて眠った。

 次の日もその次の日もどんどん起きてる時間が少なくたっていった。連休中の課題は何とか終わらせたがそれ以外はゲームもあまりせず、テレビも見ず一仁とごろごろしていた。ご飯も一仁のなすがままで、でも僕はなんの違和感も持たずされるがままだった。お風呂は三日目は頑張って一人で入ったけど、最終日はダメだった。一緒に入るだけでなく、僕はずっと一仁にしがみついていたから体まで洗って貰った。僕はずっとふわふわした気分だったからその状況を素直に受けいれていたし、正直よく覚えていない。
 家に帰る日も、僕は時間ギリギリまで起き上がらず一仁に無理矢理車に乗っけられた。僕の気分がスッキリしてきたのは家に着いて母様に叩かれた辺りだ。母様も酷くて、「いい加減起きろ。」って結構強めに叩かれた。痛かった。





 一仁と一緒に学園に戻ると、既に光くんと璃来くんは戻っていた。

「久しぶり。大丈夫だった?、初日から風邪ひくなんて災難だったね。」

「え、風邪?、なんのこ…ンン。」

 すごい勢いで光くんが璃来くんの口を塞いだ。

「璃来はまだ風邪残ってるんじゃない、あんまり喋らない方がいいよ。僕はもうすっかり元気。あはは。」

「そっか、よかった。」

 立ち話も程々に、一仁と別れて部屋に戻った。明日からまた授業が始まるからそれに備えて早めに寝た。



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