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桃の章
授業はじまる
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「んぁ~、おはよう。」
今朝は珍しく最初の目覚ましで起きられたようだ。目覚ましは止めず顔を洗い制服に着替える。まだ光くんが起きなかったから仕方なく起こす。
「んぅ~、、はっ。おはよう、今何時?」
「今日はとっても早いです! 朝ごはん食べに行こう。」
初めて寮の食堂で朝食を食べることが出来た。一仁がいたので相席した。
「おはよう、唯。今日は早いね。」
「おはよう、うん。僕が先に起きた。」
今朝は和食の気分だなーと思いながらメニューを見て注文する。一仁がさりげなく匂いを嗅いでくる。無意識に体が強ばる。
「うん、やっぱりこっちの方がいいね。」
「そっか。」
朝ごはんのサバの味噌煮定食はとても美味しかった。
一限目は数学だった。先生が板書したのを一生懸命写す。すごく丁寧にゆっくり解説をしてくれて、言ってることを全てちゃんと理解出来た。頭が良くなった気分だ。
その後も順調に授業は進み、午前が終わった。
「唯ー、お昼行こー。」
「初めての学食だ。」
「寮のとかわんないよ。」
陽向くんと合流して四人で学校の食堂に向かった。
今日の僕のお昼はクリームパスタだ。
みんなで楽しく食べていると食堂内が一層ザワザワし始めた。
「ぐぇっ。」
「はあぁ♡ 陽向、会いたかったよ。高校はどうだい?上手く過ごせているかな。兄様、陽向のために毎日この学園を良くするために頑張ったんだ。」
「ちょっと、兄様やめてよ。」
そこには陽向くんのお兄さん、生徒会長サマがいた。
「璃来と光と、お、唯と友達だったのか。どうだ?学食は。特にスイーツの類は今年から追加されたんだ、陽向のためにな。」
会長さんはずっと陽向くんにスリスリしている。それにしてもスイーツを導入しただなんて。僕は目をキラキラさせて会長さんを見る。
「確かに、中等部にはなかった。藤宮先輩ありがとうございます!」
光くんも甘党だからすごく嬉しそうだ。お喋りしてたら風紀委員長さんが近づいてきた。
「おい、湊。お前がいたら陽向達がゆっくり昼を食べられないだろう、行くぞ。陽向、また後で。」
「おい颯馬、兄弟の逢瀬だぞ、邪魔をするな。」
会長さんは引きずられて行った。僕達はデザートにさくらのケーキを食べて食堂を後にした。
午後の授業も集中して受けて、一日が終わった。今僕達は三人で寮に向かって帰っている途中だ。陽向くんは委員会、、、というか風紀委員長との逢瀬ってやつ?
「体育のときの光くん凄かったねー。全然ボール当たんなかった!、避けるの上手すぎ。」
「光は昔っから運動神経いいからな。今日もくねっくね避けててちょっとキモかったわ。」
「なんだと、璃来は早々に顔面ヒットしてたくせに。」
今日のドッジボールの話で盛り上がる。
「あははっ、……あいでっ。」
誰かが後ろからぶつかってきた。
「いてて、ごめんなさい。……あっ、お前!」
「え?」
「あんた、今日食堂で藤宮様と話してたよそ者!」
「えっ、僕?」
可愛い見た目の男の子だと思ったら急に怒られてびっくりする。
「そうだよっ。今年から入ってきたよそ者のくせに藤宮様と軽々しくお喋りなんて、礼儀知らずにも程があるよ。しかも、昨日の新歓の時も鮫島様と回ってた!、本当なら鮫島様の隣は桃のだったのに!」
訳の分からないことを色々言われている。僕はびっくりして何も言葉が出ない。
「桃、そういうのやめなよ。」
「光こそ、なんのためにここに入ってるの?、こんなよそ者にこされるなんてっ。」
「なんのためって、快適な生活のためなんだけど…。」
光くんも喚かれて大変そうだ。
「とにかく、あんまり出しゃばらないでよね、泥棒猫! ふんっ。」
言うだけ言って男の子は去っていった。
「……泥棒猫。」
「唯、気にしなくていいからね?」
「うん、光くんのお友達?」
「うーん。吉川桃、昔から周りにライバル意識強いけど今日は凄い爆発してたかなー。大人しければ可愛くて良い奴なのに。」
「そうか?、いつもあんな感じじゃない?」
「僕がよそ者だから…。」
「気にしなくっていいってば!、早く帰ろー。」
「そーだ。早く帰ってケーキでも食べよう、んで忘れろ。」
「うん、そうだね。」
僕達も寮へ帰った。
夜ご飯の時、食堂に行ったら一仁も今からだったらしく一緒に食べることになった。今晩はお魚だ。僕の隣に一仁が座る。楽しく食べていたが僕は夕方に言われたことが頭をよぎる。一仁はこんな、αが沢山のところでも優秀で、僕はやっぱり自分が隣にいるのが申し訳なくなる。将来、一仁の隣で働くのは足でまといかもしれない。下っ端のアルバイトくらいならいいかな、いや、今からそんなこと考えてちゃダメだ。僕は何とか持ち直す。
でも一仁がデザートを分けてくれようと、あーんしてきたのは断った。
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