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桃の章
今日から寮生活
しおりを挟む一仁が毎日勉強を見てくれたおかげで高校に無事受かった。有名私立男子高だ。僕の家も一応そこそこ大きいからね。本当は中学から通う予定だったけど近いところがいいってつっぱねてた。クラスはEだった。意外と合格ギリギリだったのかも。一仁はSクラス、さすが。全寮制だから父様母様としばらくお別れ。寮は二人一部屋、同室の子とは上手くやれるだろうか。不安もいっぱいだが新しい学校生活は楽しみだ。
入学式は明日、まずは入寮だ。一仁とは建物が違うから寮の前で別れた。Ω館とαβ館がある。Ωはヒートがあるからわけられてる。僕はまだヒートになったことがない。長らく引きこもりだった僕にはヒートを過ごすような相手はいない。相手がいないのにヒートになったらどうしよう。。。不安だ。
寮に入って自分の部屋の前まで来た。ドアをノックして入る。
「お邪魔します」
同室の子は既に部屋の中にいた。
「わぁ! こんにちは。僕は同室になった佐々木光です。よろしくね。」
「こ、こんにちは、一宮唯です。よろしくお願いします。」
同室の子はとっても可愛くてフレンドリーだった。
「うん、唯って呼んでもいい? 同じ学年だから敬語じゃなくていいよ、光って呼んで?」
「うん、わかった、光くん。」
家族と一仁以外の人と久しぶりに話したけど光くんとなら上手くやっていけそうだ。
僕達は荷解きをして寮の中を一緒に見て回った。部屋はそれぞれのベッドと机があってシャワートイレキッチン付きだ。ベッドが2つもあるのに部屋は全く狭く感じない。
寮は5階建てで2階~5階が学生の部屋、1階にPCルーム大浴場団欒スペースとか色々ある。食堂でαβ館と繋がっていた。今は昼過ぎで人はまちまちだ。
「見て唯ー、スイーツすごい充実してるよー。甘いもの好き?」
「うん、好きだよ。勉強の合間にいつも甘いもの食べてた。」
「だよねー癒されるよねー。ご飯も色々あるよ。オムライス美味しそう。」
2人でメニューを眺めていたら一仁が来た。
「唯。」
「一仁っ、荷解き終わった? お部屋どうだった?」
一仁が僕の隣に座ってくる。一仁の友達っぽい人もいて、光くんの隣にすわった。
「うん、終わったよ。部屋は普通かな。こいつは僕の同室の長谷川、αだから唯はあまり近づかないようにね。」
「長谷川涼です、よろしくね」
「うん、よろしくお願いします長谷川くん。」
「唯、そちらは?」
「あっ、僕の幼なじみの鮫島一仁だよ。一仁、こちら僕の同室の光くん。」
「よろしくね、鮫島君。」
「よろしく。唯、同室と仲良くやっていけそうで良かったね。」
うん、初日からお友達が出来て仲良く話が出来て僕はニコニコだ。
その後しばらく4人で話をした。大浴場があったとか、自販機の飲み物は何があったとか、α館にはジムがあるんだって、いいな僕も行ってみたいや。
―光視点―
僕達は1度部屋に戻った。唯に聞かなきゃ行けないことがあるから。
「唯、一仁は唯の恋人?」
「えっ、なんで!? ただの幼なじみだよ。」
「だって涼に近づくなって言われてたじゃん、どうみたって牽制じゃん。」
「違うよ。あれは、僕がαが苦手だから教えてくれただけだから。」
嘘でしょ、、、すっごい視線とフェロモンが突き刺さって痛かったのに。あの空間、楽しくお喋りしてたの唯くんだけだよ。僕はいたたまれなかったよ。涼は可哀想だった。。唯が部屋に入ってきた時、とんでもない天使来たって思ったのに、本人は自覚がないのか周りの目を気にせず普段通りにおしゃべりしてるし。最高にレベル高いカップル入ってきたと思ったのに番でもなく、付き合ってすらいないなんて。衝撃だった。
「唯は発情期は来た?」
「まだだよ?」
だからかな、フェロモンに鈍いのは。これは唯に近づくαも可哀想だけど一仁も可哀想だよ。唯はびっくりするくらい綺麗なんだからこれからも絶対狙われる。唯になるべく早くΩのハウトゥーを教えなければ。
「そっか、変な事聞いてごめんね?」
とりあえず今日は一仁のせいで気分がちょっと良くないからおやすみ。
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