超克の艦隊

蒼 飛雲

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第三段作戦

第43話 目標発見

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 第一航空艦隊それに第三航空艦隊が在オアフ島航空戦力と死闘を繰り広げている頃、第二航空艦隊もまた自身に課せられた任務を果たすべく行動を開始していた。

 「翔鶴」と「瑞鶴」それに「雲鶴」から合わせて二四機の二式艦偵が二波に分かれて発進。
 東北東から南南西に向けて末広がりの索敵網を形成していった。
 また、これらとは別に一航艦の「蒼龍」と「飛龍」、それに三航艦の「加賀」からも合わせて八機の二式艦偵が同様に索敵の任にあたっている。

 三二機という大盤振る舞い。
 その情報重視の成果はさっそく二航艦司令部にもたらされる。

 「戦艦五隻、それに一〇隻近い巡洋艦と二〇隻あまりの駆逐艦から成る水上打撃部隊を発見」

 南南東に伸びる索敵線を担当していた「雲鶴」三号機からの報告だった。
 この情報に対し、二航艦を指揮する小沢長官はただちに攻撃隊の出撃を命じる。
 今の太平洋艦隊に機動部隊は存在しない。
 米海軍で使える正規空母は「レンジャー」一隻のみであり、こちらは米本土にあることが分かっている。
 だから、側背を敵の艦上機に突かれるといったようなことはあり得ない。
 逆に言えば、発見した艦隊は敵にとっての最大戦力であり、また唯一の戦力でもある。
 そして、これを攻撃しない手は無い。

 小沢長官の命令からほどなく、「翔鶴」と「瑞鶴」それに「雲鶴」が艦首を風上へと向ける。
 先頭の位置にあった零戦が滑走を開始、さらに後続の機体も次々に発艦していく。
 攻撃隊は「翔鶴」と「瑞鶴」それに「雲鶴」からそれぞれ九九艦爆が九機に九七艦攻もまた同じく九機。
 さらに、これらの護衛にあたる零戦が二四機の合わせて一二六機から成る。
 零戦の数が多いのは、太平洋艦隊の上空に多数の戦闘機が展開していることが予想されたためだ。

 これまでの戦いにおいても、十分だと思われた零戦の数が、しかし実際にはぎりぎりか場合によっては不足する場面さえあった。
 零戦が少ないことで九九艦爆や九七艦攻がF4Fの手にかかって撃墜される。
 このようなことは決して許されないし、また許すつもりもなかった。

 「太平洋艦隊上空に戦闘機有り。その数二〇機あまり」

 索敵から接触維持へとその任務を変えた「雲鶴」三号機からの続報だった。
 「雲鶴」三号機の搭乗員は知らなかったが、発見した艦隊は米海軍で言うところの第一任務部隊だった。

 その第一任務部隊は、現状においては太平洋艦隊の中で唯一艦隊戦に使える力を持った水上打撃部隊だった。
 その戦力は戦艦が五隻に巡洋艦が八隻、それに駆逐艦が二四隻。

 主力を成す戦艦はそのすべてが「サウスダコタ」級乃至「ノースカロライナ」級といった新型だった。
 これら五隻はそのいずれもが四〇センチ砲を九門装備している。
 その四〇センチ砲はSHSに対応した最新のものであり、旧式の「コロラド」級のそれに比べて砲弾重量が二割以上も大きい。
 また、防御力や機動力においても旧式戦艦とは一線を画す性能を有している。
 中でも対空能力は自国の旧式戦艦はもちろんのこと、各国の新型戦艦の中でも抜きん出ており、その能力は日本最大の対空火力を持つとされる「大和」をも凌ぐ。
 巡洋艦のほうもまた火力の大きな重巡で固めており、駆逐艦もそのすべてが型式の新しいものばかりだった。

 その第一任務部隊の旗艦である「サウスダコタ」のレーダーが北北西から迫る日本の編隊を探知する。
 その情報はただちに上空を守るF4Fに伝達される。
 急報を受けたF4Fが北北西にその機首を向けつつ加速を開始する。
 オアフ島をめぐる戦いの第二ラウンド、そのゴングが今鳴らされようとしていた。
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