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ハワイ最終決戦
第65話 正規部隊全滅
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第五次攻撃隊総指揮官の嶋崎中佐は当初、第四艦隊には空母を、そして第五艦隊に対しては中型艦を攻撃するよう命令していた。
しかし、空母が二隻なのに対して中型艦、つまりは巡洋艦のほうは四隻もある。
一方で、第四艦隊それに第五艦隊はともに天山が五四機だから、戦力配分に偏りができてしまう。
そこで、嶋崎中佐は第四艦隊のうちで「雲龍」隊については、その目標を空母から中型艦に変更するよう指示している。
第五艦隊の「天城」隊と「葛城」隊、それに「笠置」隊と「雲龍」隊の攻撃は第六艦隊のそれと似たような経過をたどった。
ただ、第六艦隊の「金剛」隊と「比叡」隊、それに「榛名」隊と「霧島」隊がそれぞれ二隻の「アイオワ」級戦艦とそれに「アラスカ」級大型巡洋艦を相手取ったのに対して、「天城」隊と「葛城」隊、それに「笠置」隊と「雲龍」隊のほうは同じ四隻でも「ビロクシ」と「パサデナ」それに「トピカ」と「ダルース」の「クリーブランド」級軽巡をその攻撃目標としていた。
「クリーブランド」級軽巡は同クラスの巡洋艦の中では極めて高い対空能力を有している。
それでも排水量の限界から「アイオワ」級戦艦や「アラスカ」級大型巡洋艦には及ばない。
このため、撃墜された天山は少なく、その分だけイ号一型丙無線誘導弾を多く被弾することになった。
一万トン級巡洋艦の範疇を超えない「クリーブランド」級軽巡が、五〇〇キロ爆弾を内包する一トン近いイ号一型丙無線誘導弾を、しかもそれを一ダースも同時に突き込まれてはさすがに致命傷は免れない。
四隻の「クリーブランド」級軽巡は一隻の例外も無く炎上、完全にその戦力を喪失した。
第七艦隊と第六艦隊、それに第五艦隊と「雲龍」隊の猛攻によって大小二四隻にものぼる護衛艦艇を無力化され、むき出しとなった二隻の空母に第四艦隊の「飛龍」とそれに「蒼龍」所属の合わせて三六機の天山が迫る。
一方、二隻の「エセックス」級空母、米軍で言うところの「シャングリラ」と「ランドルフ」は対空火器を総動員して必死の防戦に努める。
しかし、帝国海軍の母艦航空隊の中でも屈指の練度を誇る「飛龍」それに「蒼龍」の艦上機隊からの攻撃を躱しきることは不可能だ。
「シャングリラ」と「ランドルフ」はそれぞれ二機の天山を撃墜したものの、しかし抵抗はそこまでだった。
「シャングリラ」と「ランドルフ」はともに一〇発以上のイ号一型丙無線誘導弾を被弾し、そのほとんどは艦橋とさらにその下の船体部分に集中した。
そのことで煙突と一体化した艦橋は跡形もなく吹き飛ばされ、島型艦橋だった空母は平甲板型空母へと即席モデルチェンジする。
さらに煙突が破壊される際に炎と熱が煙路を逆流、そのことで大半のボイラーが損傷した。
第七艦隊と第六艦隊、それに第五艦隊と第四艦隊の攻撃を上空から俯瞰していた第五次攻撃隊総指揮官の嶋崎中佐は見る影もなくなった米機動部隊に対して憐れみのような感情すら覚えていた。
二六隻あった艦隊のうちで無傷なものは一隻もなく、どの艦も盛大に煙を噴き上げている。
一体、この攻撃でどれだけの米兵が死傷したのか想像もつかなかった。
しかし、憐憫の情は心の片隅に追いやり、非情の指揮官として任務をまっとうする。
「『信濃』隊は敵大型艦、『赤城』隊は空母にトドメを刺せ。『加賀』隊は小隊単位で傷の浅い駆逐艦を攻撃せよ」
嶋崎中佐が見たところ、四隻の米巡洋艦はそのいずれもが猛煙に巻かれ、その姿が見えなくなっている。
こちらは被弾したイ号一型丙無線誘導弾の数から考えて間違いなく致命のダメージを被っている。
ダメ押しの必要は無い。
四隻の大型艦と二隻の空母についても、こちらもまた助かりそうには無かったが、しかし米軍のダメコンは日本側のそれに比べて非常に優秀だ。
死に体だと思っていた艦が、実は生きていましたといった事例はそれこそ枚挙にいとまがなかったから念を入れる必要があった。
一方、一六隻あった駆逐艦は、そのうちの四隻がすでに沈んでおり、また浮いている艦もそのほとんどが助かりそうには見えなかった。
それでも、当たりどころがよかったのか、いまだに航行能力を有している艦も少なからずあった。
だから、「加賀」隊はこれらの始末にあたる。
もちろん、嶋崎中佐としては直率する部下たちには大物を狙わせてあげたいというのが本音だ。
しかし、誰かがこれをやらねばならない。
そうであれば、指揮官こそがこれを率先して引き受けるべきだった。
嶋崎中佐は傷の浅い駆逐艦を物色、適当なそれを見つける。
一方、狙われた側の駆逐艦はすべての両用砲を振りかざして必死の抵抗を企てる。
しかし、自艦が吐き出す煙に邪魔をされているのか、砲弾は見当外れの位置で炸裂するばかりだ。
「撃てっ!」
裂帛の気合とともに嶋崎中佐はイ号一型丙無線誘導弾を発射。
第一小隊二番機、それに三番機もそれに続く。
幸い、途中で脱落するイ号一型丙無線誘導弾は一発もなく、そして全弾が命中する。
被害が累増した駆逐艦はひとたまりもなく艦首から沈降、あっという間に海上からその姿を消した。
その頃には大型艦それに空母の始末を担当した「信濃」隊、それに「赤城」隊からの戦果報告も上がってきている。
両隊ともにその目的を達成、すべての艦にとどめを刺したとのことだった。
しかし、空母が二隻なのに対して中型艦、つまりは巡洋艦のほうは四隻もある。
一方で、第四艦隊それに第五艦隊はともに天山が五四機だから、戦力配分に偏りができてしまう。
そこで、嶋崎中佐は第四艦隊のうちで「雲龍」隊については、その目標を空母から中型艦に変更するよう指示している。
第五艦隊の「天城」隊と「葛城」隊、それに「笠置」隊と「雲龍」隊の攻撃は第六艦隊のそれと似たような経過をたどった。
ただ、第六艦隊の「金剛」隊と「比叡」隊、それに「榛名」隊と「霧島」隊がそれぞれ二隻の「アイオワ」級戦艦とそれに「アラスカ」級大型巡洋艦を相手取ったのに対して、「天城」隊と「葛城」隊、それに「笠置」隊と「雲龍」隊のほうは同じ四隻でも「ビロクシ」と「パサデナ」それに「トピカ」と「ダルース」の「クリーブランド」級軽巡をその攻撃目標としていた。
「クリーブランド」級軽巡は同クラスの巡洋艦の中では極めて高い対空能力を有している。
それでも排水量の限界から「アイオワ」級戦艦や「アラスカ」級大型巡洋艦には及ばない。
このため、撃墜された天山は少なく、その分だけイ号一型丙無線誘導弾を多く被弾することになった。
一万トン級巡洋艦の範疇を超えない「クリーブランド」級軽巡が、五〇〇キロ爆弾を内包する一トン近いイ号一型丙無線誘導弾を、しかもそれを一ダースも同時に突き込まれてはさすがに致命傷は免れない。
四隻の「クリーブランド」級軽巡は一隻の例外も無く炎上、完全にその戦力を喪失した。
第七艦隊と第六艦隊、それに第五艦隊と「雲龍」隊の猛攻によって大小二四隻にものぼる護衛艦艇を無力化され、むき出しとなった二隻の空母に第四艦隊の「飛龍」とそれに「蒼龍」所属の合わせて三六機の天山が迫る。
一方、二隻の「エセックス」級空母、米軍で言うところの「シャングリラ」と「ランドルフ」は対空火器を総動員して必死の防戦に努める。
しかし、帝国海軍の母艦航空隊の中でも屈指の練度を誇る「飛龍」それに「蒼龍」の艦上機隊からの攻撃を躱しきることは不可能だ。
「シャングリラ」と「ランドルフ」はそれぞれ二機の天山を撃墜したものの、しかし抵抗はそこまでだった。
「シャングリラ」と「ランドルフ」はともに一〇発以上のイ号一型丙無線誘導弾を被弾し、そのほとんどは艦橋とさらにその下の船体部分に集中した。
そのことで煙突と一体化した艦橋は跡形もなく吹き飛ばされ、島型艦橋だった空母は平甲板型空母へと即席モデルチェンジする。
さらに煙突が破壊される際に炎と熱が煙路を逆流、そのことで大半のボイラーが損傷した。
第七艦隊と第六艦隊、それに第五艦隊と第四艦隊の攻撃を上空から俯瞰していた第五次攻撃隊総指揮官の嶋崎中佐は見る影もなくなった米機動部隊に対して憐れみのような感情すら覚えていた。
二六隻あった艦隊のうちで無傷なものは一隻もなく、どの艦も盛大に煙を噴き上げている。
一体、この攻撃でどれだけの米兵が死傷したのか想像もつかなかった。
しかし、憐憫の情は心の片隅に追いやり、非情の指揮官として任務をまっとうする。
「『信濃』隊は敵大型艦、『赤城』隊は空母にトドメを刺せ。『加賀』隊は小隊単位で傷の浅い駆逐艦を攻撃せよ」
嶋崎中佐が見たところ、四隻の米巡洋艦はそのいずれもが猛煙に巻かれ、その姿が見えなくなっている。
こちらは被弾したイ号一型丙無線誘導弾の数から考えて間違いなく致命のダメージを被っている。
ダメ押しの必要は無い。
四隻の大型艦と二隻の空母についても、こちらもまた助かりそうには無かったが、しかし米軍のダメコンは日本側のそれに比べて非常に優秀だ。
死に体だと思っていた艦が、実は生きていましたといった事例はそれこそ枚挙にいとまがなかったから念を入れる必要があった。
一方、一六隻あった駆逐艦は、そのうちの四隻がすでに沈んでおり、また浮いている艦もそのほとんどが助かりそうには見えなかった。
それでも、当たりどころがよかったのか、いまだに航行能力を有している艦も少なからずあった。
だから、「加賀」隊はこれらの始末にあたる。
もちろん、嶋崎中佐としては直率する部下たちには大物を狙わせてあげたいというのが本音だ。
しかし、誰かがこれをやらねばならない。
そうであれば、指揮官こそがこれを率先して引き受けるべきだった。
嶋崎中佐は傷の浅い駆逐艦を物色、適当なそれを見つける。
一方、狙われた側の駆逐艦はすべての両用砲を振りかざして必死の抵抗を企てる。
しかし、自艦が吐き出す煙に邪魔をされているのか、砲弾は見当外れの位置で炸裂するばかりだ。
「撃てっ!」
裂帛の気合とともに嶋崎中佐はイ号一型丙無線誘導弾を発射。
第一小隊二番機、それに三番機もそれに続く。
幸い、途中で脱落するイ号一型丙無線誘導弾は一発もなく、そして全弾が命中する。
被害が累増した駆逐艦はひとたまりもなく艦首から沈降、あっという間に海上からその姿を消した。
その頃には大型艦それに空母の始末を担当した「信濃」隊、それに「赤城」隊からの戦果報告も上がってきている。
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