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ミッドウェー海戦
第25話 猛襲 一航艦攻撃隊
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第一航空艦隊から出撃した攻撃隊は、敵艦隊を視認する前から敵機の襲撃を受けた。
これらは「エンタープライズ」と「サラトガ」から迎撃のために緊急発進した四八機のF4Fワイルドキャット戦闘機だった。
さらに同じ頃、第二航空艦隊の攻撃隊もまた、「ホーネット」ならびに「ワスプ」戦闘機隊の迎撃を受けている。
ミッドウェーをめぐる戦いが始まる前、これら四隻の米空母にはそれぞれ三六機のF4Fが用意されていた。
このうち、一二機が攻撃隊に随伴し、残る二四機が母艦を守るための直掩戦力として残されていた。
そのF4Fの襲撃から九九艦爆や九七艦攻を守るため、「赤城」戦闘機隊と「加賀」戦闘機隊、それに「瑞鳳」戦闘機隊と「祥鳳」戦闘機隊が阻止線を形成する。
「龍鳳」戦闘機隊は九九艦爆や九七艦攻のそばを離れず前進、そのまま敵機動部隊を目指す。
三六機の零戦は四八機のF4Fを乱戦に持ち込むべく旋回格闘戦の土俵へと誘う。
撃墜よりも牽制を意図した動きだ。
しかし、F4Fの搭乗員もそのことは理解しているから、完全にこれを阻止することができない。
零戦の挑戦をスルーした一〇機近いF4Fがその防衛網を突破して九九艦爆や九七艦攻に迫ってくる。
そこへ最後の盾の役割を果たすべく、「龍鳳」戦闘機隊がF4Fの前に立ちはだかる。
ほぼ同数だったこともあり、「龍鳳」戦闘機隊はそれらF4Fの拘束に成功する。
零戦隊はかろうじてF4Fの猛攻を凌ぎきり、護衛の任務をまっとうすることに成功した。
当初は過剰だと言われていた四五機にものぼる零戦の護衛も、しかし蓋を開けてみればぎりぎりの数だった。
九九艦爆それに九七艦攻の搭乗員らは零戦隊への感謝を胸に抱きつつ、米機動部隊をその視界に収める。
空母二隻を中心に、四隻の中型艦とそれに八隻の小型艦がその周囲を固めている、典型的な輪形陣だった。
「艦爆隊は中隊ごとに敵巡洋艦を叩け。艦攻隊は艦爆隊の攻撃が終了次第突撃せよ。一航戦艦攻隊は前方、三航戦艦攻隊は後方の空母をその目標とせよ。攻撃法については各隊指揮官にこれを一任する」
一呼吸置き、一航艦攻撃隊指揮官兼「赤城」艦攻隊長の村田少佐は直率する一航戦艦攻隊に命令を重ねる。
「『赤城』隊は左舷、『加賀』隊は右舷から攻撃せよ」
誤解の余地のない端的な命令を下した後、村田少佐は降下しつつ機体を輪形陣の左前方へともっていく。
一方の「加賀」艦攻隊は速度を上げつつ輪形陣の右前方へと回り込んでいく。
その艦攻隊より一足早く、艦爆隊が輪形陣に迫っている。
艦爆隊は二手に分かれ、「赤城」隊は左翼、「加賀」隊は右翼に位置する巡洋艦にそれぞれ狙いを定める。
一番槍をつけたのは「赤城」第一中隊だった。
その「赤城」第一中隊が目標としたのは、輪形陣の左前方に位置する巡洋艦だった。
その巡洋艦は一万トン級巡洋艦に比べて明らかに艦型が小さく、そのボリュームは帝国海軍の五五〇〇トン級軽巡に近い。
しかし、そこから吐き出される火弾や火箭の量は、これまでの巡洋艦のそれとは一線を画すものだった。
まず、第二小隊三番機が高角砲弾の危害半径に捉えられて火を噴く。
さらに、急降下の途中に第三小隊二番機が機関砲弾の直撃を食らって爆砕する。
投弾後の離脱の際にも、第三小隊一番機が機銃弾の追撃を浴びてミッドウェーの海面へと叩き墜とされる。
生き残った他の機体もその多くが胴体や翼に無惨な被弾痕を刻まれている。
一方、「赤城」第一中隊に狙われた米巡洋艦もただでは済まなかった。
七発投じられた二五番のうちの二発が直撃、このうちの一発が機関部を直撃した。
さらに、至近弾となった二発が水線下の船体にダメージを与え、同艦の下腹に亀裂や破孔を穿っている。
これらの被害によって米巡洋艦は脚を奪われ、洋上を這うように進むだけとなってしまった。
その「赤城」第一中隊に狙われた巡洋艦だが、それは最新鋭軽巡「アトランタ」だった。
同艦は基準排水量が六〇〇〇トン台と小ぶりな一方で、一二・七センチ両用砲を八基も装備していた。
帝国海軍の一万トン級重巡が搭載する連装高角砲が四基だから、実に二倍の数だ。
そのうえ、射撃照準装置も帝国海軍のそれに比べて明らかに優越しているから、さらにその性能差は隔絶する。
もし、「アトランタ」が初陣ではなく戦慣れした艦であったとしたら、あるいは被害はこの程度では済まなかったかもしれない。
一方、他の三隻の巡洋艦、米軍で言うところの「ノーザンプトン」と「ペンサコラ」それに「ヴィンセンス」を攻撃した「赤城」第二中隊と「加賀」第一中隊、それに「加賀」第二中隊もまたそれぞれ二発乃至三発の二五番を命中させ、これらすべての重巡の脚を奪っている。
ただ、一方で損害も大きく、「赤城」第二中隊と「加賀」第一中隊はそれぞれ二機、「加賀」第二中隊に至っては三機を失った。
艦爆隊は大きな代償を払ったものの、一方で四隻の米巡洋艦に甚大なダメージを与えた。
そのことで輪形陣は崩壊、エスコートを失った空母がむき出しとなる。
そこへ一航戦の「赤城」と「加賀」、それに三航戦の「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」の合わせて三六機の九七艦攻が挟撃を仕掛けるべく二隻の空母へと肉薄する。
それぞれ二〇機近い九七艦攻に狙われては、さすがの米空母もこの攻撃を完全に躱し切ることは出来ない。
「エンタープライズ」と「サラトガ」はそのいずれもが複数の魚雷を横腹に突き込まれ、その韋駄天を奪われてしまった。
これらは「エンタープライズ」と「サラトガ」から迎撃のために緊急発進した四八機のF4Fワイルドキャット戦闘機だった。
さらに同じ頃、第二航空艦隊の攻撃隊もまた、「ホーネット」ならびに「ワスプ」戦闘機隊の迎撃を受けている。
ミッドウェーをめぐる戦いが始まる前、これら四隻の米空母にはそれぞれ三六機のF4Fが用意されていた。
このうち、一二機が攻撃隊に随伴し、残る二四機が母艦を守るための直掩戦力として残されていた。
そのF4Fの襲撃から九九艦爆や九七艦攻を守るため、「赤城」戦闘機隊と「加賀」戦闘機隊、それに「瑞鳳」戦闘機隊と「祥鳳」戦闘機隊が阻止線を形成する。
「龍鳳」戦闘機隊は九九艦爆や九七艦攻のそばを離れず前進、そのまま敵機動部隊を目指す。
三六機の零戦は四八機のF4Fを乱戦に持ち込むべく旋回格闘戦の土俵へと誘う。
撃墜よりも牽制を意図した動きだ。
しかし、F4Fの搭乗員もそのことは理解しているから、完全にこれを阻止することができない。
零戦の挑戦をスルーした一〇機近いF4Fがその防衛網を突破して九九艦爆や九七艦攻に迫ってくる。
そこへ最後の盾の役割を果たすべく、「龍鳳」戦闘機隊がF4Fの前に立ちはだかる。
ほぼ同数だったこともあり、「龍鳳」戦闘機隊はそれらF4Fの拘束に成功する。
零戦隊はかろうじてF4Fの猛攻を凌ぎきり、護衛の任務をまっとうすることに成功した。
当初は過剰だと言われていた四五機にものぼる零戦の護衛も、しかし蓋を開けてみればぎりぎりの数だった。
九九艦爆それに九七艦攻の搭乗員らは零戦隊への感謝を胸に抱きつつ、米機動部隊をその視界に収める。
空母二隻を中心に、四隻の中型艦とそれに八隻の小型艦がその周囲を固めている、典型的な輪形陣だった。
「艦爆隊は中隊ごとに敵巡洋艦を叩け。艦攻隊は艦爆隊の攻撃が終了次第突撃せよ。一航戦艦攻隊は前方、三航戦艦攻隊は後方の空母をその目標とせよ。攻撃法については各隊指揮官にこれを一任する」
一呼吸置き、一航艦攻撃隊指揮官兼「赤城」艦攻隊長の村田少佐は直率する一航戦艦攻隊に命令を重ねる。
「『赤城』隊は左舷、『加賀』隊は右舷から攻撃せよ」
誤解の余地のない端的な命令を下した後、村田少佐は降下しつつ機体を輪形陣の左前方へともっていく。
一方の「加賀」艦攻隊は速度を上げつつ輪形陣の右前方へと回り込んでいく。
その艦攻隊より一足早く、艦爆隊が輪形陣に迫っている。
艦爆隊は二手に分かれ、「赤城」隊は左翼、「加賀」隊は右翼に位置する巡洋艦にそれぞれ狙いを定める。
一番槍をつけたのは「赤城」第一中隊だった。
その「赤城」第一中隊が目標としたのは、輪形陣の左前方に位置する巡洋艦だった。
その巡洋艦は一万トン級巡洋艦に比べて明らかに艦型が小さく、そのボリュームは帝国海軍の五五〇〇トン級軽巡に近い。
しかし、そこから吐き出される火弾や火箭の量は、これまでの巡洋艦のそれとは一線を画すものだった。
まず、第二小隊三番機が高角砲弾の危害半径に捉えられて火を噴く。
さらに、急降下の途中に第三小隊二番機が機関砲弾の直撃を食らって爆砕する。
投弾後の離脱の際にも、第三小隊一番機が機銃弾の追撃を浴びてミッドウェーの海面へと叩き墜とされる。
生き残った他の機体もその多くが胴体や翼に無惨な被弾痕を刻まれている。
一方、「赤城」第一中隊に狙われた米巡洋艦もただでは済まなかった。
七発投じられた二五番のうちの二発が直撃、このうちの一発が機関部を直撃した。
さらに、至近弾となった二発が水線下の船体にダメージを与え、同艦の下腹に亀裂や破孔を穿っている。
これらの被害によって米巡洋艦は脚を奪われ、洋上を這うように進むだけとなってしまった。
その「赤城」第一中隊に狙われた巡洋艦だが、それは最新鋭軽巡「アトランタ」だった。
同艦は基準排水量が六〇〇〇トン台と小ぶりな一方で、一二・七センチ両用砲を八基も装備していた。
帝国海軍の一万トン級重巡が搭載する連装高角砲が四基だから、実に二倍の数だ。
そのうえ、射撃照準装置も帝国海軍のそれに比べて明らかに優越しているから、さらにその性能差は隔絶する。
もし、「アトランタ」が初陣ではなく戦慣れした艦であったとしたら、あるいは被害はこの程度では済まなかったかもしれない。
一方、他の三隻の巡洋艦、米軍で言うところの「ノーザンプトン」と「ペンサコラ」それに「ヴィンセンス」を攻撃した「赤城」第二中隊と「加賀」第一中隊、それに「加賀」第二中隊もまたそれぞれ二発乃至三発の二五番を命中させ、これらすべての重巡の脚を奪っている。
ただ、一方で損害も大きく、「赤城」第二中隊と「加賀」第一中隊はそれぞれ二機、「加賀」第二中隊に至っては三機を失った。
艦爆隊は大きな代償を払ったものの、一方で四隻の米巡洋艦に甚大なダメージを与えた。
そのことで輪形陣は崩壊、エスコートを失った空母がむき出しとなる。
そこへ一航戦の「赤城」と「加賀」、それに三航戦の「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」の合わせて三六機の九七艦攻が挟撃を仕掛けるべく二隻の空母へと肉薄する。
それぞれ二〇機近い九七艦攻に狙われては、さすがの米空母もこの攻撃を完全に躱し切ることは出来ない。
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