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ミッドウェー海戦
第23話 ミッドウェー空襲
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戦闘海域に突入するのと同時、連合艦隊は所定の作戦行動に移った。
まず、ミッドウェー島に存在する米軍の撃滅をその任とする第三航空艦隊が攻撃隊を出撃させる。
旗艦「金剛」それに姉妹艦の「比叡」からそれぞれ零戦が九機に九九艦爆が一八機、それに九七艦攻が九機。
「隼鷹」から零戦九機に九九艦爆が一二機、それに九七艦攻が九機。
「龍驤」から零戦九機に九七艦攻が六機。
合わせて一一七機からなる攻撃隊は、ミッドウェー島にある軍事施設の中でも特に脅威とされる飛行場ならびにその関連施設に対して空爆を実施することとしていた。
三航艦が攻撃隊を出すのにわずかに遅れて、第一航空艦隊と第二航空艦隊のほうは索敵機を発進させている。
一航艦の「赤城」から九機に「加賀」から二一機。
二航艦の「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ三機。
合わせて三六機の九七艦攻からなる、史上最大規模の索敵だった。
これら機体のうち、二四機からなる第一次索敵隊は機体の数と同じ二四本の索敵線を形成する。
一方、第二次索敵隊は一二機からなり、それらは太平洋艦隊が存在する可能性が特に高いと判断される索敵線に投入される。
つまり、二四あるうちのその半数の索敵線については、これを二段索敵とすることで念を入れていた。
三六機もの索敵機を投入するに至ったのは、インド洋海戦の戦訓を受けてのことだった。
同海戦では三〇機もの索敵機を投入したことで、東洋艦隊をその捜索網に捉えることができた。
しかし、それは際どいものであり、あと少し索敵機が少なければ同艦隊の捕捉に失敗し、当時の連合艦隊は奇襲を食らっていたかもしれなかった。
さらに重要なことは、どういった手段を用いたのかは分からないが、東洋艦隊は連合艦隊の位置を正確に知っていたことだ。
諜報員の働きによるものか、あるいは暗号が解読されているのかは分からないが、しかしこちらの手の内が筒抜けになっていることは間違いない。
だから、今次作戦についてもそういった前提で臨むことにしていた。
作戦が開始されて以降、真っ先に干戈を交えたのは三航艦攻撃隊とミッドウェー島に配備された海兵隊所属の戦闘機隊だった。
それらは七機のF4Fワイルドキャット戦闘機とそれに二〇機のF2Aバファロー戦闘機で編成されており、これら機体はミッドウェー島を守るべく三航艦攻撃隊の前に立ちふさがった。
最初、海兵隊戦闘機隊は三航艦攻撃隊に対して奇襲を仕掛けようとしていた。
日本軍と違い、すでにレーダーと航空無線を活用した航空管制を実施している米軍だからこそ、それが可能だった。
航空管制官の誘導に従い、海兵隊戦闘機隊は日本側編隊の死角になるはずの空域へと移動していく。
しかし、一方の零戦隊のほうはミッドウェー島に対する攻撃が強襲になることを承知しており、そのことでふだんよりも見張りを厳にしていた。
これが奏功し、F4FやF2Aの早期発見に成功した。
敵に機先を制されるようなこともなく、零戦隊は急速に戦闘態勢をつくりあげていった。
一方、奇襲の失敗を悟ったF4FそれにF2Aは九九艦爆や九七艦攻への襲撃は一時棚上げとし、立ち向かってきた零戦にその機首を向ける。
零戦をそのままにして九九艦爆や九七艦攻を狙うことはできない。
そのようなことをすれば、九九艦爆や九七艦攻を攻撃する間に零戦に側背を突かれてしまう。
偶然や必然が重なった結果、F4Fは「比叡」戦闘機隊と、F2Aのほうは「龍驤」戦闘機隊それに「隼鷹」戦闘機隊と干戈を交えることになった。
偶然にも二七機対二七機のぶつかり合いとなった中で真っ先に崩れたのはF4Fだった。
七機のF4Fは九機の零戦に対して果敢に戦いを挑んだ。
しかし数それに機体性能で劣っていては、奇襲にでも成功しない限り不利は免れない。
それに、搭乗員の技量にも差があった。
海兵隊戦闘機隊も腕は悪くはなかったが、しかし平均練度の枠内から逸脱するものではなかった。
逆に零戦のほうは長距離進撃を可能とする、つまりは航法に優れた熟練で固めていたから、その差は歴然だった。
最初、七対九だった高いは、あっという間に六対九、そして五対九へと移行していく。
そうなっては、もはやF4Fは自分の身を守ることに精いっぱいとなる。
とても九九艦爆や九七艦攻に手を出せるような状況ではなかった。
一方、「龍驤」戦闘機隊それに「隼鷹」戦闘機隊に戦いを挑んだF2Aのほうもまた、その結果はF4Fのそれとほとんど変わらなかった。
F2Aのほうは、F4Fとは違ってわずかではあるが数の優位を維持していた。
しかし、その差はわずかに二機にしか過ぎず、零戦との性能差を埋めるには至らない。
最初の一太刀で数的優位を失ったF2Aは、あとは零戦に追いかけ回される一方となり、次第にその数を減じていった。
「金剛」戦闘機隊の護衛のもと、無傷で米戦闘機の阻止線を突破した九九艦爆と九七艦攻は、それぞれ割り当てられた目標へと散開する。
それら機体を猛烈な対空砲火が歓迎する。
九九艦爆や九七艦攻の周囲に爆煙がわき立つ。
運の悪い機体は高角砲弾炸裂時の危害半径に捉えられ、無数の弾片によって切り刻まれていく。
一方、対空砲火をかいくぐった九七艦攻は八〇〇キロ爆弾で滑走路に大穴を穿ち、飛行機の離発着能力を奪っていく。
九九艦爆のほうは得意の精密爆撃によって周辺施設を爆砕していく。
中には燃料庫かあるいは弾薬庫を直撃するものもあったようで、それらは飛行場のみならず島全体に対して甚大な損害を与える。
ミッドウェーをめぐる戦いの第一ラウンドは、日本側が明らかに優勢だった。
まず、ミッドウェー島に存在する米軍の撃滅をその任とする第三航空艦隊が攻撃隊を出撃させる。
旗艦「金剛」それに姉妹艦の「比叡」からそれぞれ零戦が九機に九九艦爆が一八機、それに九七艦攻が九機。
「隼鷹」から零戦九機に九九艦爆が一二機、それに九七艦攻が九機。
「龍驤」から零戦九機に九七艦攻が六機。
合わせて一一七機からなる攻撃隊は、ミッドウェー島にある軍事施設の中でも特に脅威とされる飛行場ならびにその関連施設に対して空爆を実施することとしていた。
三航艦が攻撃隊を出すのにわずかに遅れて、第一航空艦隊と第二航空艦隊のほうは索敵機を発進させている。
一航艦の「赤城」から九機に「加賀」から二一機。
二航艦の「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ三機。
合わせて三六機の九七艦攻からなる、史上最大規模の索敵だった。
これら機体のうち、二四機からなる第一次索敵隊は機体の数と同じ二四本の索敵線を形成する。
一方、第二次索敵隊は一二機からなり、それらは太平洋艦隊が存在する可能性が特に高いと判断される索敵線に投入される。
つまり、二四あるうちのその半数の索敵線については、これを二段索敵とすることで念を入れていた。
三六機もの索敵機を投入するに至ったのは、インド洋海戦の戦訓を受けてのことだった。
同海戦では三〇機もの索敵機を投入したことで、東洋艦隊をその捜索網に捉えることができた。
しかし、それは際どいものであり、あと少し索敵機が少なければ同艦隊の捕捉に失敗し、当時の連合艦隊は奇襲を食らっていたかもしれなかった。
さらに重要なことは、どういった手段を用いたのかは分からないが、東洋艦隊は連合艦隊の位置を正確に知っていたことだ。
諜報員の働きによるものか、あるいは暗号が解読されているのかは分からないが、しかしこちらの手の内が筒抜けになっていることは間違いない。
だから、今次作戦についてもそういった前提で臨むことにしていた。
作戦が開始されて以降、真っ先に干戈を交えたのは三航艦攻撃隊とミッドウェー島に配備された海兵隊所属の戦闘機隊だった。
それらは七機のF4Fワイルドキャット戦闘機とそれに二〇機のF2Aバファロー戦闘機で編成されており、これら機体はミッドウェー島を守るべく三航艦攻撃隊の前に立ちふさがった。
最初、海兵隊戦闘機隊は三航艦攻撃隊に対して奇襲を仕掛けようとしていた。
日本軍と違い、すでにレーダーと航空無線を活用した航空管制を実施している米軍だからこそ、それが可能だった。
航空管制官の誘導に従い、海兵隊戦闘機隊は日本側編隊の死角になるはずの空域へと移動していく。
しかし、一方の零戦隊のほうはミッドウェー島に対する攻撃が強襲になることを承知しており、そのことでふだんよりも見張りを厳にしていた。
これが奏功し、F4FやF2Aの早期発見に成功した。
敵に機先を制されるようなこともなく、零戦隊は急速に戦闘態勢をつくりあげていった。
一方、奇襲の失敗を悟ったF4FそれにF2Aは九九艦爆や九七艦攻への襲撃は一時棚上げとし、立ち向かってきた零戦にその機首を向ける。
零戦をそのままにして九九艦爆や九七艦攻を狙うことはできない。
そのようなことをすれば、九九艦爆や九七艦攻を攻撃する間に零戦に側背を突かれてしまう。
偶然や必然が重なった結果、F4Fは「比叡」戦闘機隊と、F2Aのほうは「龍驤」戦闘機隊それに「隼鷹」戦闘機隊と干戈を交えることになった。
偶然にも二七機対二七機のぶつかり合いとなった中で真っ先に崩れたのはF4Fだった。
七機のF4Fは九機の零戦に対して果敢に戦いを挑んだ。
しかし数それに機体性能で劣っていては、奇襲にでも成功しない限り不利は免れない。
それに、搭乗員の技量にも差があった。
海兵隊戦闘機隊も腕は悪くはなかったが、しかし平均練度の枠内から逸脱するものではなかった。
逆に零戦のほうは長距離進撃を可能とする、つまりは航法に優れた熟練で固めていたから、その差は歴然だった。
最初、七対九だった高いは、あっという間に六対九、そして五対九へと移行していく。
そうなっては、もはやF4Fは自分の身を守ることに精いっぱいとなる。
とても九九艦爆や九七艦攻に手を出せるような状況ではなかった。
一方、「龍驤」戦闘機隊それに「隼鷹」戦闘機隊に戦いを挑んだF2Aのほうもまた、その結果はF4Fのそれとほとんど変わらなかった。
F2Aのほうは、F4Fとは違ってわずかではあるが数の優位を維持していた。
しかし、その差はわずかに二機にしか過ぎず、零戦との性能差を埋めるには至らない。
最初の一太刀で数的優位を失ったF2Aは、あとは零戦に追いかけ回される一方となり、次第にその数を減じていった。
「金剛」戦闘機隊の護衛のもと、無傷で米戦闘機の阻止線を突破した九九艦爆と九七艦攻は、それぞれ割り当てられた目標へと散開する。
それら機体を猛烈な対空砲火が歓迎する。
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運の悪い機体は高角砲弾炸裂時の危害半径に捉えられ、無数の弾片によって切り刻まれていく。
一方、対空砲火をかいくぐった九七艦攻は八〇〇キロ爆弾で滑走路に大穴を穿ち、飛行機の離発着能力を奪っていく。
九九艦爆のほうは得意の精密爆撃によって周辺施設を爆砕していく。
中には燃料庫かあるいは弾薬庫を直撃するものもあったようで、それらは飛行場のみならず島全体に対して甚大な損害を与える。
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