改造空母機動艦隊

蒼 飛雲

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改造空母

第3話 新たなる戦力

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 航空本部長である山本中将の願いは、一部だが受け入れられた。
 本来であれば、新型戦艦が就役するのに合わせて旧式戦艦を空母へと改造することとされていた。
 一方、山本本部長のほうは新型戦艦が起工するタイミングで旧式戦艦を空母へと改造するよう要望していた。
 これに対し、軍令部総長の伏見宮元帥は新型戦艦が進水するのと同時に旧式戦艦を空母へと改造するよう方針を変更した。
 これは、軍令部次長である嶋田中将の口添えが大きくものを言っていた。
 もし山本本部長が訴えるだけであったならば、あるいはスケジュールの変更は無かったかもしれない。
 この件については日本人らしい、まさに絵に描いたような折衷案にも思える。
 しかし、帝国海軍もまた日本の官衙のひとつであり、民族の本能のようなものの束縛からは逃れられなかったのかもしれない。

 いずれにせよ、この決定で旧式戦艦の空母改造スケジュールが二年近く前倒しになったことは間違いなかった。
 このことで、第一号艦の進水に伴って「金剛」の空母改造工事が開始された。
 昭和一五年八月八日のことだった。
 同じく昭和一五年一一月一日に第二号艦が進水、同時に「比叡」もまた空母へと生まれわかるべく「金剛」に続いた。

 一方、高速給油艦の「高崎」と「剣埼」、それに潜水母艦「大鯨」のほうはすでに改造工事を終えていた。
 これら三隻はそれぞれ「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」の名を戴いて連合艦隊の編成に加わっている。
 この三隻だが、これらはそのいずれもが「陽炎」型駆逐艦のエンジンを搭載するはずだった。
 ただ、「瑞鳳」や「祥鳳」に比べて排水量が二〇〇〇トンほど多い「龍鳳」は速度不足が懸念されていた。
 なので、こちらは「鈴谷」型巡洋艦のエンジンの半数を搭載することとされた。
 このことで、「瑞鳳」や「祥鳳」は五二〇〇〇馬力で二八ノット、一方「龍鳳」のほうは七六〇〇〇馬力で二九ノットの速力を得ていた。

 さらに、新型機にもある程度対応できるよう、当初予定よりも飛行甲板を延長し、「瑞鳳」と「祥鳳」は一九五メートル、「龍鳳」のほうは二〇〇メートルとしていた。
 また、三艦ともに小ぶりながらも魚雷調整室が設けられ、各艦ともに一二本の航空魚雷を搭載している。

 「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」が加わったことで連合艦隊は九隻の空母を保有するに至った。
 しかし、このうちで大型乃至中型の空母は半数以下の四隻にしか過ぎず、残る五隻は戦力の小さな小型空母かあるいは特務艦改造空母だった。
 それゆえに、搭載機数は九隻合わせても常用機ベースで三八〇機にしか過ぎなかった。
 空母がその戦力の大半を自艦が搭載する飛行機に依存する以上、その艦上機が少ないことは大問題だ。

 戦力の不足を訴える飛行機屋たちの声に、海軍上層部はさらなる特務艦を空母にすることでこれに応えた。
 水上機母艦の「千歳」と「千代田」それに「瑞穂」の三隻の水上機母艦を空母へと改造する決定を下したのだ。

 これら水上機母艦は「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」に比べて全長が短く、そのことで飛行甲板は三隻ともに一八〇メートルしか確保できなかった。
 しかし、一方で爆弾搭載能力や魚雷調整能力は「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」よりも優れており、魚雷については五割増しの一八本を搭載している。
 それと、「千歳」と「千代田」はディーゼルとタービンの併用で五六八〇〇馬力、「瑞穂」のほうは五二〇〇〇馬力を発揮する「陽炎」型駆逐艦の主機ならびに主缶を搭載している。
 エンジンを強化したことで前者は二九ノット、後者は二八・五ノットの速力を得ていた。
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