極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん

文字の大きさ
上 下
16 / 22
王子様との関係

本気の告白

しおりを挟む
 夕方に差し掛かり、周りがじわじわとオレンジ色に染まりだした頃。

「ね、最後に観覧車乗らない?」

 不意に言われた提案に、一瞬反応が遅れきょとんとしてしまう。

 でもすぐ笑顔を作り、大きく頷いて返した。

「うん、乗ろうっ。」



「それではいってらっしゃ~い!」

 キャストさんの元気な言葉と共に閉じられる、重そうなゴンドラの扉。

 観覧車を待っている人はそこまでいなくて、想ってたよりもすぐ乗ることができた。

 秦斗君と向かい合わせになるように座り、興味からきょろきょろと辺りを見回す。

 このゴンドラ、おしゃれだなぁ……。

 私たちが乗ったゴンドラは落ち着いた配色のもので、ちょっぴりほっとする。

 ライトアップも綺麗だし、今日来てよかった。

「秦斗君、今日は誘ってくれてありがとうっ。すっごく楽しかった!」

「こちらこそ。俺も結衣さんと来れてよかったし、よければまた一緒に行かない?」

「もちろんっ!」

 軽い微笑みを返してくれる秦斗君の対応は、まさに王子そのもの。こうやってさらっと嬉しくなれることを言える人って、本当に尊敬する。

 前々から尊敬してたけど、秦斗君はやること成すこと全部がスマートすぎて、憧れても憧れ足りない。

 私もこんな素敵な人になれたらなぁ……。

 そのタイミングで頭に浮かんできたのは、メガネのこと。実はジェットコースターを降りた時からずっと考えていて、未だにもやもや悩んでいる。

 メガネをかけている理由。正直に言おうか、このまま隠しておくか。

 隠していたら絶対、秦斗君に後ろめたさを感じる。きっと秦斗君は隠しごとをしない人だ、私も隠しごとはなしにしたい。

 ……本当は、少し不安だけど。

「秦斗君……私がメガネをかけ始めた理由、聞いてくれる?」

「……うん、もちろんだよ。」

 秦斗君も戸惑いの表情を見せた、不安なのは私だけじゃない。

 そう気付けて、少しだけ緊張がほぐれる。

 だからかな、自分が思ってたよりもすっと話し始めることができた。

「私、幼い頃から誰かと関わるってことが苦手で……でも、メガネをかけてる時は安心できるからつけてたんだ。それでなんとか生活はできてるし、私にとってメガネは守ってくれる存在なんだよね。」

「それじゃあ俺が仮交際を申し込んだ時も、本当はずっと……怖かったの?」

 秦斗君が心配そうに目を伏せる。

 だけど私は裏腹に、はっきりと否定した。

「ううん、怖くなかった。驚きはしたし戸惑ったけど……秦斗君はあの時私を助けてくれたから。」

 阿辺君たちから守ってくれたから、怖いとは思わなかった。

 むしろ、何回でもありがとうと伝えたいくらいだ。

「本当に……嬉しくて、感謝してるんだ。大げさかもしれないけど、秦斗君がずっと私の心の支えになってたから。」

 うざったいって思われるくらい感謝を口にしたい。

 自分の口からありがとう……って。

「……話してくれてありがとう。俺、結衣さんにそれくらい信頼されてるって思ってもいい?」

「うん! 秦斗君は私にとって、とっても大事な人だから!」

「大事な人、か……。」

 小さく零された言葉が、私の耳に届く。

 その途端、秦斗君は何の前触れもなく私の左手をとった。

「俺もさ、結衣さんに伝えたいことがあるんだ。今、言ってもいい?」

「う、うんっ。いいよ……!」

 改まって言われると妙に緊張が走る。

 顔だってほんの少し強張り、静佳に息を呑んだ。

 ……――瞬間のことだった。

「結衣さんのこと、ずっと好きだった。」

「…………、え?」

 ま、待って……っ。どういうこと、どういう意味……!?

「と、友達としてってことだよね……?」

「いや、違うよ。友達としてじゃない、俺は前からちゃんと結衣さんに恋してる。今だってどうしようもないくらい好きだよ。」

 真剣な瞳で見据えられて、完全に体が硬直する。

 っ、そんな、そんなことって……。

「それって、いつから……?」

「結構前から。始業式から一か月くらい経った頃の時、結衣さんが俺を助けてくれたんだ。……覚えてる?」

「……資料持っていくのを、手伝ったこと?」

「うん、それ。」

 秦斗君に言われて少し考えてみると、意外なことにすぐ思い出せた。

 確かあの時は、見ていてあまりにも大変そうだったから思わず口走っちゃったんだっけ……。

 けど、相当時間が経っている。今はすっかり秋で、半年くらい経ってるのに。

 あの時から想ってくれてたなんて……なかなか考えられない。

 すっかり戸惑って、何も言えなくなってしまった私。言葉が喉に引っかかって、なかなか出てきてくれない。

 ……でも何でだろう。

 “断る”って選択肢は、浮かんでこなかった。

 むしろ自分でその言葉を避けているみたいに、頭の中から払拭しようとしている。

 そううろたえていると、秦斗君がはっきりとした口調で、凛とした瞳で言った。

「結衣さんにとってはどうでもいいことかもしれないけど、あの時……すごく嬉しかった。」

「嬉しかった……?」

「そう。結衣さんは誰にでも優しく接してるけど、俺はそうじゃない。というよりも、結衣さんの何気ない優しさに救われたんだ。……だから好きになったんだよ。」

 ……秦斗君が、私を。

 まさか告白されるなんて思ってなかった。そもそも秦斗君は、その場の流れで仮交際をしてくれたんじゃなかったの……?

 情報はすぐ行き渡ってしまうから、このまま付き合ってることにしようって……。

「それじゃあ、阿辺君から助けてくれたのは……」

「あれは本当に偶然。たまたま近くを通ったら男の子たちの声が聞こえて……それがもめごとぽかったから、最初は興味本位で近付いたんだ。……でも、咄嗟に体が動いてた。」

 そこまでで一旦言葉を切り、私の手を握る力を強めた秦斗君。

 そして……今まで見た中で、一番真剣な表情を私に見せた。

「事情はよく分かってなかったけど、結衣さんを守らなきゃって思った。だって俺は、結衣さんに惚れてるんだから。」

「……っ。」

 秦斗君が私の隣に移動してきたとほぼ同時。

 ぎゅ……っと、優しい力で抱きしめられた。

 そのせいで、心臓が力強く掴まれた感覚に陥る。

 そんな中秦斗君は、とびっきり優しい力で私の頭を撫でた。

「今までは仮の恋人として近くにいたけど……これからは、好きな人として近くにいたい。こうやって抱きしめられるだけでも、俺にとっては幸せだから。」

「……でも、私まだ……」

 『信じられないよ。』

 そう言おうと口を開いた時、ふわりと頬に触れられた。

「分かってる。結衣さんが信じられないっていうのは、分かってるから。だから、今すぐに信じてほしい……とは言わない。」

 少しだけ影を落とし、哀しそうに笑った秦斗君。ははっと、乾いた笑みが貼りついてるよう。

 ……秦斗君には、全部お見通しなんだ。

「ごめん、ね……。」

 振り絞ったような声は、自分が思っていたよりも小さかった。

 それでも伝わっていたようで、秦斗君は意地悪そうな笑みを浮かべる。

「謝らないで。……でも、これからは覚悟しといてね。」

「えっ?」

 覚悟とは……?

 何のことを指しているか分からず、ついきょとんとしてしまう。

 すると秦斗君はそれすらも分かっていたように、ちょっぴり妖しい微笑みに変わって。

「……これから、結衣さんに好きになってもらえるように全力でアタックするから。」

「っ……は、はい。」

 ビクッと、肩と心臓が同時に跳ねる。

 未だ握られてる手からは秦斗君の体温が伝わってきて、変に熱がこもっていく。

 だけど、温かくて落ち着く。

 私はこれまで、ずっとこうしてドキドキする理由を知らなかったけど……秦斗君にオキドキさせられてるからだって、やっと分かった。

 ……何でこんなドキドキしてるのかは、はっきりとはまだ分かっていないけど。

 ゴンドラの外はもうすっかり夜の色が入ってきていて、よりライトアップが明るく見えつつあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ
児童書・童話
 動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。  周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。  そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。  どうやら蒼太くんには秘密があって……!?  身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!  

小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。 歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。 大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。 愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。 恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。 扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

処理中です...