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幼少期〜伯爵家の実状について〜

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異世界に生まれてから早五年が経過していた。

ミコトとしての意識はしっかりあるものの『ミーティア・エマーユ・マッコール伯爵令嬢』というのが、今現在の自分だ。

今のミコト、もといミーティアには二つ年下の弟がいる。

弟は母に似て、見事な金髪に翡翠のような濃い翠の瞳を持って生まれてきた。
ミーティアはというと、残念なことに父にそっくりな色合いを持っている。

栗色の髪に、濃い翠の瞳。

ロビンのように、、、弟のように金髪がよかったなと密かに思う。

それにしても、だ。

ミーティアがこの世界に生まれてすぐの頃に比べれば、マッコール伯爵家は随分と静かになってしまった。

ミーティアには乳母が付いていたが、ロビンに乳母はいないし、執事や侍女と呼ばれる使用人の数は片手で足りるはずだ。
いくらミーティアの行動範囲が狭いとはいえ、あまりにも接する人々が少なすぎやしないか。

ようやく五年が経過して、中身がアラフォー超えて半ばに差し掛かろうとも、外見はあくまで五歳児なので、出来ることは限られるが、ミーティアなりにこの世界について見聞を広めることに努めていた。

少し早いがまずは文字を覚えることから始めた。文字が読めなければ、書物を読むこともままならない。
父母は『この子は天才かもしれない!』と喜んでいたが、天才かどうかはともかく、世の中を渡るには知識が多いに越したことはない。

そうして文字を覚えると、伯爵家の図書室にある本を読み漁ることにした。

元々、本を読むことは好きだし、知らない世界について知ることがとても楽しかった。


*****


ミーティアが生まれ出たこの国は、フォリシア大陸という大きな大陸の東側に位置する国で、『ファランダール』という国だった。
ファランダールの歴史は、大陸に降り立った神を中心として東西南北に国を分かち、それぞれを神の子が統治したことから始まる。
ファランダールの始祖は『ファラン』という神の子の一人だそうだ。同じように、西と南北に始祖と言われる神の子がいる。そのせいなのか、大陸の中での争いはなく、それぞれの国が穏やかに平和に暮らしているらしかった。

らしかった、というのはあくまで書物の中での話なので、実際のところはよくわからない。

様々なファランダールの歴史についての本を読み進めていくうちに、頭の片隅に引っ掛かりを覚えるようになった。この引っ掛かりはなんなのか?疑問に思いながらも、歴史書に加えて、女性が好みそうな小説のたぐいにも手を出した。

小説は世情を映すものも多いというし、埃っぽい歴史書よりは読みやすい。

そして、ついにというか、今更というか、引っ掛かっていたことを思い出すことに成功する。

(こここ、こ、この世界は!!)

歓喜にうち震えて危うく踊りだすところだったーーー乳母のニナがいなければ。


*****

アラフォー独身女のミコトは、三度のメシよりゲームが好きだった。時間がなくてネトゲには手を出せなかったが、RPGやアドベンチャー、アクションも好きだった。
ゲーム原作のアニメ化は毎週きっちり録画予約をしていたし、例の、人でひしめき合う薄い本の祭典にも毎回休みをもぎ取って並んでいた。

そして同じ趣味の友人の勧めで、初めてプレイした乙女ゲームがあった。

初めてを捧げた(大袈裟)そのゲームにハマり倒しーーーそのゲームがここ『ファランダール』王国を舞台にした、学園恋愛アドベンチャーだったのである。

五歳児の身体には毒だったのか、その事実を知った夜には熱を出してうなされたほどだ。

だが、ミコト、もといミーティアは、『ミーティア』という名を全くもって思い出せないことに気が付いた。せめてモブの地位だけでもゲットしたいのだが、学園にいなければ話にならない。

ここで舞台となる、学園ーーー。

ファランダール王立学園は、貴族の紳士、淑女が集う学校である。
当然、それなりの金貨が必要なわけで、、、、、。

ーーーー今の我が家の財政で、、、無理ゲーな気がするんだが?

そう、中身はとうに四十を超えたからこそわかる。世の中、なんだかんだ金さえあればなんとかなるということを。

こうなったら、我が家の財政を立て直して、絶対に学園に入ってやる!そうでなきゃ、何のためにこの世界に生まれたのかわからんじゃないか!!

さすが、轢かれてもただでは起きない、液晶を突き破った女である。








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