上 下
3 / 4
第1章

2話 RaizinG Hope

しおりを挟む
午前四時。
全国の女性にこの想いを伝えたい。
空手と同様、馬鹿力も身につけても何ら有効活用できることはない、と。


A市でもド田舎な茶玲町だけど、私は嫌いじゃない。ただ公共の交通手段はバスしかないのが死ぬほど不便で、実家が都会の私にとって茶玲町での生活は華やかさとは無縁だった。
でも町の人たちはいい人ばっかで、滅多に家族と会えなくなってもホームシックになったことは一度もなかった。

「遥香、着いたぞ。」

「はい!サクッとやっちゃいましょ!」

私、香坂遥香こうさかはるかは相澤先輩に声をかけられて、送迎車から降りる。今日の舞台は流部町。東地域の半径100m内に、「感染者」がいる。

「センサーの反応だと、一体だけのようですね……二手に分かれましょう。」

特別隊隊長の黒咲さんが提案してきた。

「賛成です!じゃあ私一丁目行きますんで先輩方は三丁目からお願いします!」

「そうしよう。黒咲さんたちは遥香と、残りは俺と来てくれ。」

やっぱ先輩頼りになるなぁ~と思った。けど褒められるのに慣れていない先輩に口には出さず、私は駆け出した。




この町には一年前、巨大な衝突体が降って来て、甚大な被害が出た。


そして何ともヤバいことに……


その衝突体には人間に感染もとい寄生して暴走する生き物が付着していたのだった!!!!!いや本気マジだよ?






Gyyyyyyyyaaaaaaaaaaaaaaaasss!!!!!!!




うるさっ。

「あそこです!あの肉屋の中です!恐らく店主の方に寄生しているのではないかと……」

機動隊の方が報告に来てくれた。なるほど、タンパク質摂取には絶好の場である。

しばらくすると、生臭さや硝煙とともにそいつは姿を現した。



Grrruuuuu....



大体3mくらい?

全身漆塗りみたいな黒にまばゆいラメ見たいな身体中の光。脚は4本足で昆虫みたいな感じで胴体が長い。
背筋いいなこいつ……

んでカマキリみたいな腕。左腕は、これ多分出刃包丁?肉屋だからかな……?


「相澤さんに連絡しました!」
この位なら一人でもやれそうだけど


「サンキュー黒咲さん!でも先輩来る前に片付けちゃうよーー!!!」





私も寄生されかけた一人だった。だけど先輩が必死に助けてくれたおかげで、今こうして生きている。これ以上被害を増やさないためにも、そして何より私と違って喰われてしまった御手洗みたらいちゃんのためにも…

着ていた上着やスカートを脱ぎ捨てて、スポーティな服装に早変わりした私は、右太ももに真っ白なバングルを巻きつける。

ポケットから腕時計の文字盤くらいの、丸いカプセルを取り出して右手に握り、人差し指でスイッチを押し起動する。



[Lightning Street!!!]



膝立ちになり、そのままカプセルを右足のバングルにはめ込むと、チクっとした痛みが登って来る。このバングルから打ち込まれる注射針には、未だに慣れない。



[YES,Ser!!!   Ready?]



サイバーな待機音が鳴る
音いる?と初めは思ったがもう慣れた

カプセルを捻りながら
大きく息を吸って、力一杯声を出す





 スーッ…

「リバイブ!!!!!」



[Started to REVIVE!!!!!]




音声と共に私の体から、水たまりが一瞬で蒸発するほどの熱が上がる。陽炎で目の前がグニャグニャと歪むこの感じは気持ち悪くて嫌いだ。胃や心臓、指先に眼球、あらゆる所からもの凄い暑さと、感電したような(というかしてる)痙攣を感じる。「そいつ」が、私の中を這って出てくる。


額に二本、両腕に七対、背中や両脚にもいっぱいに生えるスパイク。視点がやたら高く、そして両腕も脇が締まらないほどに太く、硬くなっていく。
高圧電流が全身を駆け巡り、大気が震えている音が聞こえてくる。


五秒としないうち
私の体は醜く黒光りしたもの……

少なくとも自分の知ってる人間の姿ではなくなった。




「リバイブ完了_____Lightning Streetライトニング ストリート
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【エゴイスト】~The first world~

綾瀬川
SF
__おめでとう。君たちは選ばれた。 『自らの欲を行使する力を与えよう』 突如、望まない力を手にした少年少女。 だが、己の自我を形成するための能力だった。 その力により、自分が望む世界を造り上げる。 だが、それは彼女たちを絶望へと誘導した。

川崎マフィア 〜こちら、HAPPINESS CLUB〜

ニコラテトラ
SF
日本一治安が悪いと言われる町「川崎」。そこでは毎日のようにギャングやマフィアによる抗争が繰り広げられている。貧乏高校生「卍原 卓郎」(がんじばら たくろう)は学費のために川崎でバイトをすることになる。しかし、そのバイト先はなんとクラブ!? おまけにそのクラブにはマフィアという裏の顔があったのだ、、、 バトルコメディになる予定

鋼月の軌跡

チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル! 未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!

異能テスト 〜誰が為に異能は在る〜

吉宗
SF
クールで知的美人だが、無口で無愛想な国家公務員・牧野桐子は通称『異能係』の主任。 そんな彼女には、誰にも言えない秘密があり── 国家が『異能者』を管理しようとする世界で、それに抗う『異能者』たちの群像劇です。

ヒト

宇野片み緒
SF
地球のかけらで、 原子生物たちは独自の進化を遂げていた。 水まんじゅうに似たその生物は、 心を読み合うことで意思疎通をし、 好きな動物に化けることすらできた。 しかし、彼らはヒトに憧れた。 言葉を操り、道具を使う高度な生命体。 そう思っていた。 ヒトに化けた個体それぞれの、追憶。 カバーイラスト/巻末イラスト:shiratama 装丁/題字/本文:宇野片み緒

宿命の御手

日向 白猫
SF
カフェ&バー「Fingers」で働くアーヌラーリウスはある日、不思議な夢を見る。セピア色の海を漂い、そしてそのまま浮き上がる、という妙な夢――。しかし、目覚めるといつも通りの彼の日常が待っていて、漫然とそれに埋もれていく。夢の意味も分からぬまま。

悪辣な推論

てるぼい
SF
男は宇宙の船外調査の折に同僚に突き落とされ、宇宙空間を独りで漂流していた。残り少ない命の中、彼は過去を振り返る。なぜこんな状況に至ったのか。 この絶望的な状況で彼の運命は一体どこに行きつくのだろうか・・・。

おっさん、ドローン回収屋をはじめる

ノドカ
SF
会社を追い出された「おっさん」が再起をかけてドローン回収業を始めます。社員は自分だけ。仕事のパートナーをVR空間から探していざドローン回収へ。ちょっと先の未来、世代間のギャップに翻弄されながらおっさんは今日もドローンを回収していきます。

処理中です...