その1歩に全力を

もあい

文字の大きさ
上 下
5 / 6
1組第1レーン「入部」

自分だけ

しおりを挟む
部活をさせてもらえなくなって3日が立った朝、昼、夕方、かかさず謝罪に言っているのに見事に無視される1年生達だった。「俺ら、この人について行って大丈夫なのか?」そういう1年生も現れ始めている。
4日目の夕方、青木たちは水澤を前に叫んだ。
「すいませんでしたぁーー!」
、とこれまで開くことのなかった水澤の口が開いた。
「1周30秒×5のインターバルだ。出来たら戻してやる。」
1年のほとんどはその水澤の気迫に圧倒されていてもなお、片隅に希望が生まれたが、青木だけは違った。30mで走るコースは1周200mのトラックである。青木の100mのタイム、小学校の時ではあるが、17,5である。到底走り切れるものではない。ただ、そんなこと考えている暇はなかった。
「行くぞ、よーい、」
水澤が呟いた。青木はもはや走るしか残されていない。
「ドン!」
水澤の合図とともに一斉に1年生が走り出した。青木は全力で走るほかなかった。ただ、17,5の青木にはほかの1年生について行くことすら難しかった。それでも青木は全力で走り続けた。
「10...9...8...」
水澤はカウントダウンを始めた。1年生たちはさらにペースを上げる。青木は1番後ろ、ただ前の1年生との差は1mないくらいであった。
「7...6.. 5...」
1年生のペースはさらに上がり、青木と前の生徒との差も開いてきた。その差は徐々に開いていく。「あと、40m...いや、30m!」青木は自分にそう言い聞かせた。
「4...3...2...」
先頭の方を走っていた1年生らがストップウォッチを持った水澤の前を通過する。しかし依然として青木は走っている。ゴールしている姿を青木がみる余裕はなかった。ただ、自分に精一杯で。
「1..........」
そういった瞬間青木の前の生徒がゴールを通過したのを青木はみた。コンマ数秒後青木はゴールした。青木は倒れ込んだ。倒れてしまっては足が動かなくなる。それを知って他の1年生は立ったままだった。青木ももちろんそれを知っていたが、もはや立っていることが出来なかったのである。
「次いくぞ」
ゴールしてから数秒しか経っていないように思えた。しかしそんなことを考えるより立たねばならぬ。青木は何とか自分の力で立ち上がるとスタートラインに立った。
「よーい、ドン!」
足が動かない。既に飛び出した1年生はぐんぐん差を広げていく。しかし青木は走りきることが精一杯だった。
「3..2...1...0」
青木以外はゴールしたが青木はまだ半分ほどしか進んでいなかった。
やっと青木がゴールした時、水澤のストップウォッチは64秒を示していた。
青木は崩れるように地面に倒れた。呼吸をするのが精一杯だった。
「お前は今日はもう走るな。ここで見ていろ。」
そう水澤は青木に言った。

青木は頷くことすらできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...