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1組第1レーン「入部」
自分だけ
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部活をさせてもらえなくなって3日が立った朝、昼、夕方、かかさず謝罪に言っているのに見事に無視される1年生達だった。「俺ら、この人について行って大丈夫なのか?」そういう1年生も現れ始めている。
4日目の夕方、青木たちは水澤を前に叫んだ。
「すいませんでしたぁーー!」
、とこれまで開くことのなかった水澤の口が開いた。
「1周30秒×5のインターバルだ。出来たら戻してやる。」
1年のほとんどはその水澤の気迫に圧倒されていてもなお、片隅に希望が生まれたが、青木だけは違った。30mで走るコースは1周200mのトラックである。青木の100mのタイム、小学校の時ではあるが、17,5である。到底走り切れるものではない。ただ、そんなこと考えている暇はなかった。
「行くぞ、よーい、」
水澤が呟いた。青木はもはや走るしか残されていない。
「ドン!」
水澤の合図とともに一斉に1年生が走り出した。青木は全力で走るほかなかった。ただ、17,5の青木にはほかの1年生について行くことすら難しかった。それでも青木は全力で走り続けた。
「10...9...8...」
水澤はカウントダウンを始めた。1年生たちはさらにペースを上げる。青木は1番後ろ、ただ前の1年生との差は1mないくらいであった。
「7...6.. 5...」
1年生のペースはさらに上がり、青木と前の生徒との差も開いてきた。その差は徐々に開いていく。「あと、40m...いや、30m!」青木は自分にそう言い聞かせた。
「4...3...2...」
先頭の方を走っていた1年生らがストップウォッチを持った水澤の前を通過する。しかし依然として青木は走っている。ゴールしている姿を青木がみる余裕はなかった。ただ、自分に精一杯で。
「1..........」
そういった瞬間青木の前の生徒がゴールを通過したのを青木はみた。コンマ数秒後青木はゴールした。青木は倒れ込んだ。倒れてしまっては足が動かなくなる。それを知って他の1年生は立ったままだった。青木ももちろんそれを知っていたが、もはや立っていることが出来なかったのである。
「次いくぞ」
ゴールしてから数秒しか経っていないように思えた。しかしそんなことを考えるより立たねばならぬ。青木は何とか自分の力で立ち上がるとスタートラインに立った。
「よーい、ドン!」
足が動かない。既に飛び出した1年生はぐんぐん差を広げていく。しかし青木は走りきることが精一杯だった。
「3..2...1...0」
青木以外はゴールしたが青木はまだ半分ほどしか進んでいなかった。
やっと青木がゴールした時、水澤のストップウォッチは64秒を示していた。
青木は崩れるように地面に倒れた。呼吸をするのが精一杯だった。
「お前は今日はもう走るな。ここで見ていろ。」
そう水澤は青木に言った。
青木は頷くことすらできなかった。
4日目の夕方、青木たちは水澤を前に叫んだ。
「すいませんでしたぁーー!」
、とこれまで開くことのなかった水澤の口が開いた。
「1周30秒×5のインターバルだ。出来たら戻してやる。」
1年のほとんどはその水澤の気迫に圧倒されていてもなお、片隅に希望が生まれたが、青木だけは違った。30mで走るコースは1周200mのトラックである。青木の100mのタイム、小学校の時ではあるが、17,5である。到底走り切れるものではない。ただ、そんなこと考えている暇はなかった。
「行くぞ、よーい、」
水澤が呟いた。青木はもはや走るしか残されていない。
「ドン!」
水澤の合図とともに一斉に1年生が走り出した。青木は全力で走るほかなかった。ただ、17,5の青木にはほかの1年生について行くことすら難しかった。それでも青木は全力で走り続けた。
「10...9...8...」
水澤はカウントダウンを始めた。1年生たちはさらにペースを上げる。青木は1番後ろ、ただ前の1年生との差は1mないくらいであった。
「7...6.. 5...」
1年生のペースはさらに上がり、青木と前の生徒との差も開いてきた。その差は徐々に開いていく。「あと、40m...いや、30m!」青木は自分にそう言い聞かせた。
「4...3...2...」
先頭の方を走っていた1年生らがストップウォッチを持った水澤の前を通過する。しかし依然として青木は走っている。ゴールしている姿を青木がみる余裕はなかった。ただ、自分に精一杯で。
「1..........」
そういった瞬間青木の前の生徒がゴールを通過したのを青木はみた。コンマ数秒後青木はゴールした。青木は倒れ込んだ。倒れてしまっては足が動かなくなる。それを知って他の1年生は立ったままだった。青木ももちろんそれを知っていたが、もはや立っていることが出来なかったのである。
「次いくぞ」
ゴールしてから数秒しか経っていないように思えた。しかしそんなことを考えるより立たねばならぬ。青木は何とか自分の力で立ち上がるとスタートラインに立った。
「よーい、ドン!」
足が動かない。既に飛び出した1年生はぐんぐん差を広げていく。しかし青木は走りきることが精一杯だった。
「3..2...1...0」
青木以外はゴールしたが青木はまだ半分ほどしか進んでいなかった。
やっと青木がゴールした時、水澤のストップウォッチは64秒を示していた。
青木は崩れるように地面に倒れた。呼吸をするのが精一杯だった。
「お前は今日はもう走るな。ここで見ていろ。」
そう水澤は青木に言った。
青木は頷くことすらできなかった。
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