14 / 62
魔王の言い分
魔王と執事と人質と酒。2
しおりを挟む
普通に乾杯して軽く飲んでから。
「なんで魔王と飲んでんだかな!」
これ本当にわけわかんねぇな!
「本当に!僕もびっくりしてる~」
ヘラヘラ~と笑うサイファ。
その隣でフェンリルは不満げに呟く。
「お前が図々しいせいで段取りが狂った。今日やるはずの仕事が滞ってんだよ。まったく……人間のくせにどんな神経してんだ……」
「確かに予定は狂っちゃったけどさ、この方が楽しいって。こういう形じゃない出会い方したかったなぁ」
ねぇ?と首を傾げて見つめられた。
確かに。頷く。
「なんで人間と喧嘩すんの?そりゃ私は拉致られてるし、魔物に殺されたやつだっているけど、あんたら根っこは悪いやつじゃなさそうだよ」
政府から飛ばされてうちの村で役人やってるオッサンの方がよっぽど悪人っぽい。小物だけど。
「僕らとしても戦いたいわけじゃないのさ。でも長く続いた体制はすぐに変わらないね。それが戦いってこと」
「まだ魔王赴任三年目なのに、あんたはよくやってるよ」
フェンリルはぼそりと言う。声がいいせいなのか、言い方のせいか、妙に渋い。
「へぇ。三年目なんだ。責任重いでしょ。大変ねー」
「ありがとう。まだまだヒヨッコなんだよ」
「偉いよ。なんかビジョンがあって仕事してんでしょ?」
「そう。魔物は見た目のせいで差別もあるし、先代からの戦いもあるし……そういうの全部平たく取っ払いたいんだよね。だから今回、僕の代で人間側に勇者が出たことはありがたいんだ。『決着がつく』って啓示だからね」
真面目に、だけど楽しそうにサイファは言った。落ち着いた物言いのおかげで、内容がシンプルに頭へ入ってきた。
でかい目標を掲げているが、こいつならできそうな気がする。そういうカリスマがある。
もちろん、今すぐ完全に信頼しきるつもりではない。それは行動をもって示してもらうことである。
「そういう世の中を楽しみに待ってるよ」
おつまみがうめぇ。なんだろうこの卵。ふわっふわしてる。
そんな私をじぃっと見て、頬杖をつきながらニコニコしているサイファ。
「人間と魔物が偏見なく恋愛できる世の中っていいと思わない?」
「お前チャラいな……ほんっとにチャラいな」
「こうやって普通に話せる子がなかなか周囲にいないんだよ。男女問わずね。だから嬉しくってさ」
私はチラとフェンリルを見た。
頭は悪くないけど馬鹿を見そうな生真面目な正直者。神経質で気難しいからこそ裏切らないだろう。
うーん。魔王も苦労してんだろうな……。
「なんで魔王と飲んでんだかな!」
これ本当にわけわかんねぇな!
「本当に!僕もびっくりしてる~」
ヘラヘラ~と笑うサイファ。
その隣でフェンリルは不満げに呟く。
「お前が図々しいせいで段取りが狂った。今日やるはずの仕事が滞ってんだよ。まったく……人間のくせにどんな神経してんだ……」
「確かに予定は狂っちゃったけどさ、この方が楽しいって。こういう形じゃない出会い方したかったなぁ」
ねぇ?と首を傾げて見つめられた。
確かに。頷く。
「なんで人間と喧嘩すんの?そりゃ私は拉致られてるし、魔物に殺されたやつだっているけど、あんたら根っこは悪いやつじゃなさそうだよ」
政府から飛ばされてうちの村で役人やってるオッサンの方がよっぽど悪人っぽい。小物だけど。
「僕らとしても戦いたいわけじゃないのさ。でも長く続いた体制はすぐに変わらないね。それが戦いってこと」
「まだ魔王赴任三年目なのに、あんたはよくやってるよ」
フェンリルはぼそりと言う。声がいいせいなのか、言い方のせいか、妙に渋い。
「へぇ。三年目なんだ。責任重いでしょ。大変ねー」
「ありがとう。まだまだヒヨッコなんだよ」
「偉いよ。なんかビジョンがあって仕事してんでしょ?」
「そう。魔物は見た目のせいで差別もあるし、先代からの戦いもあるし……そういうの全部平たく取っ払いたいんだよね。だから今回、僕の代で人間側に勇者が出たことはありがたいんだ。『決着がつく』って啓示だからね」
真面目に、だけど楽しそうにサイファは言った。落ち着いた物言いのおかげで、内容がシンプルに頭へ入ってきた。
でかい目標を掲げているが、こいつならできそうな気がする。そういうカリスマがある。
もちろん、今すぐ完全に信頼しきるつもりではない。それは行動をもって示してもらうことである。
「そういう世の中を楽しみに待ってるよ」
おつまみがうめぇ。なんだろうこの卵。ふわっふわしてる。
そんな私をじぃっと見て、頬杖をつきながらニコニコしているサイファ。
「人間と魔物が偏見なく恋愛できる世の中っていいと思わない?」
「お前チャラいな……ほんっとにチャラいな」
「こうやって普通に話せる子がなかなか周囲にいないんだよ。男女問わずね。だから嬉しくってさ」
私はチラとフェンリルを見た。
頭は悪くないけど馬鹿を見そうな生真面目な正直者。神経質で気難しいからこそ裏切らないだろう。
うーん。魔王も苦労してんだろうな……。
0
お気に入りに追加
1,904
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる