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魔王城に拉致られる
村人、拉致られる。2
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私の前方に立ちふさがる人間。……顔は魔物系。これは駄目。食べられない。
右見て、左見て、囲まれていることに気がついた。
私はホールドアップ――両手を上げた。
「降参!言うこと聞くから、お願い。乱暴なことはしないで」
「ほう?利口だな。頭のいい女は好きだぞ」
唯一顔のいい彼が歩み寄ってくる。
向き直ると、顎をクイと持ち上げられた。
あぁ~……顔がいい。行動がエロい。近づいたらスパイスの効いた香水のいい匂いがする。頬に触れる手袋の質感がフェチズムを貫いてくる。抱いて。
「私もあなたの顔がものすごく好きです!」
さすがに『何言ってんだこいつ?』という顔をされた。事実、
「は?」
って真顔で聞き返された。
ヤバイものに触ったかのように手が離れる。
「ねえ、名前はなんていうの?魔物さん」
「……この場で俺に名を問う勇気があることを讃えて教えてやろう。フェンリルだ」
まあ確かに……普通は聞かないな。でも、相手の名前を知っているということは有利なのである。
「どうされるのかわからないけど、どうぞお手柔らかにお願いね。フェンリルさん」
こうやってプレッシャーを与えることができる。相手が自分の名前に名誉を感じているならなおのこと。そして、真面目な性格ならなおさら。
「ふん……小賢しい人間め」
フェンリルの視線がそれた。可愛い。
ふふん。勝った。気持ちいい。
「魔王様の命により、お前は傷付けずに捕獲しろと言われている。一緒に来てもらう」
と言って。
「わっ」
フェンリルは私を厚い肩へひょいと担ぎ上げた。
やーん!ワイルド~!もう好き~!
「落とさないでね?」
「なら動くな」
「お姫様抱っこがいいなぁ?」
「うるさい」
「階級は?」
「魔王軍四天王第一側近、兼、執事長」
「執事なの?へぇ~!お給料はいいの?」
「答える必要はない」
「お休みどれくらいある?」
「知るか」
「今、彼女いる?」
「それがどうした」
「いないんだぁ?」
「黙れ!」
移動用の馬車に乗せられるまで、相当律儀に付き合ってくれた。無視しない真面目さ、好感。
ただ、馬車の後部座席に乗せるとき、ちょっと扱いが乱暴だった。仕方ない、ここは目をつぶろう。
右見て、左見て、囲まれていることに気がついた。
私はホールドアップ――両手を上げた。
「降参!言うこと聞くから、お願い。乱暴なことはしないで」
「ほう?利口だな。頭のいい女は好きだぞ」
唯一顔のいい彼が歩み寄ってくる。
向き直ると、顎をクイと持ち上げられた。
あぁ~……顔がいい。行動がエロい。近づいたらスパイスの効いた香水のいい匂いがする。頬に触れる手袋の質感がフェチズムを貫いてくる。抱いて。
「私もあなたの顔がものすごく好きです!」
さすがに『何言ってんだこいつ?』という顔をされた。事実、
「は?」
って真顔で聞き返された。
ヤバイものに触ったかのように手が離れる。
「ねえ、名前はなんていうの?魔物さん」
「……この場で俺に名を問う勇気があることを讃えて教えてやろう。フェンリルだ」
まあ確かに……普通は聞かないな。でも、相手の名前を知っているということは有利なのである。
「どうされるのかわからないけど、どうぞお手柔らかにお願いね。フェンリルさん」
こうやってプレッシャーを与えることができる。相手が自分の名前に名誉を感じているならなおのこと。そして、真面目な性格ならなおさら。
「ふん……小賢しい人間め」
フェンリルの視線がそれた。可愛い。
ふふん。勝った。気持ちいい。
「魔王様の命により、お前は傷付けずに捕獲しろと言われている。一緒に来てもらう」
と言って。
「わっ」
フェンリルは私を厚い肩へひょいと担ぎ上げた。
やーん!ワイルド~!もう好き~!
「落とさないでね?」
「なら動くな」
「お姫様抱っこがいいなぁ?」
「うるさい」
「階級は?」
「魔王軍四天王第一側近、兼、執事長」
「執事なの?へぇ~!お給料はいいの?」
「答える必要はない」
「お休みどれくらいある?」
「知るか」
「今、彼女いる?」
「それがどうした」
「いないんだぁ?」
「黙れ!」
移動用の馬車に乗せられるまで、相当律儀に付き合ってくれた。無視しない真面目さ、好感。
ただ、馬車の後部座席に乗せるとき、ちょっと扱いが乱暴だった。仕方ない、ここは目をつぶろう。
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