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明星/カラスの北斗七星 編

或る司祭の独白④ 王と魔導士

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 あの日、リタは自分の口から人々を救いたいと言った。
 だからワタシは、それ以上リタには何も望まなかったのだ。

 リタが刻星剣ホロクラウスの資格者に選ばれた時、どうやって聞きつけたのか、プレアデスが異常な程にリタを欲した。
 つい先日まで、女だからと言う理由で聖騎士団への入団を認めなかったくせに、手のひら返しもいいところだ。

 しかし、リタには聖騎士団に入る気がなかった。
 プレアデスから呼び出されたリタの父親が、そう伝えたのだ。

「なにぃ? お前自分の立場分かって言ってるんだろうな? ふざけたこと抜かしてたら、適当な罪で処刑するぞ」

 何を言っているのか。
 聖騎士団は王国が誇る最大の戦力であり、リタの父親はその副団長だ。
 あの人ほどの騎士を簡単に切れるわけがない。
 つまり、この男は口だけだ。

「おいブライト、お前リタ・シープハードと仲良いんだろう? お前から説得しとけ」

 この時から、ワタシは既にアストラ王国の腐敗を実感していた。
 プレアデスという男が、絶対に許せなかった。

 それからと言うものの、ワタシはリタに何度か説得を試みようとしたが、葛藤しているワタシのせいで逆にリタを不安にさせてしまった。

 だからワタシは、プレアデスからの命令に背いた。

 あの日、帰り道でリタと分かれた後に、ワタシは王城にてプレアデスに直談判したのだ。

「リタは聖騎士団に入らなくても、国を救う強い剣士になります! プラネテス家長女であるこのワタシが保証いたします! ですから……」

「お前に何の価値があるんだよ! いいか、あのガキがこれ以上強くなったらどうする? 僕の支配下に置いておかないと、いずれ脅威に成りかねないだろ! 特別な地位は用意は用意してある。もう手遅れなんだよ」

 この時は、プレアデスが言っていることの意味が分からなかった。

「あのガキ、今頃拷問にかけられてるんじゃないか? 今の女神教は荒っぽいからなぁ」

「……は?」

 背後に複数人の気配を感じた。
 ワタシを逃さないつもりか。
 だが、流石に甘く見過ぎだ。

「スペイリデュース」

 背後の気配達は、ワタシの魔法で空間ごと削り取った。
 女神教……女神教の聖堂は……急がなければ、リタが危ない!

「ワームホール!」

 魔力消費の激しい空間移動魔法を使い、ワタシは女神教の聖堂を探した。

 許さない……
 絶対に許さない!

 
「……見つけた」

 空間移動から抜け、聖堂の真上から直接侵入する。

 大勢の信者達がリタに剣を向け、祭壇には代表者らしき司祭とリタの刻星剣ホロクラウスがある。

「リスペイスメント」

 リタの手前とホロクラウスのある空間を置き換え、彼女の元に聖剣を戻した。

「ごめんリタ、遅くなった」

 リタの隣まで移動したワタシは、祭壇の司祭を強く睨みつける。

「ブライト……!」

 この時の泣きじゃくるリタの顔は、10年経った今でも忘れられない。
 そうしてワタシは、プレアデス・アーク・アストラという男を絶対に許さない。
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