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明星/カラスの北斗七星 編

或る司祭の独白③ 優等星

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 ワタシが蘇らせたケルベロスの事件は、アンタレスの獣事件なんて呼ばれているらしい。

 フルーレはケルベロスの本体が手に入らなかったからと嘆いていたが、ワタシとしては純度が限りなく高いケルベロスの血が手に入った為、今後の計画に支障はない。

 この力で、リタに勝てるだろうか?
 いや、敵はリタではない。

 アストラ国王、プレアデス・アーク・アストラ。
 あの男だけは、絶対にワタシの手で殺してみせる。

 そうだ、あれは10年前のことだった。
 アストラ国王直属の魔導士だったワタシは、彼の人間性に多少の疑念を抱きつつも、仕方のないものだと割り切っていた。

 ある時、ワタシは国王へと直々にリタをアストラ聖騎士団に推薦したのだ。
 リタの父親は聖騎士団の副団長であり、リタ自身も剣術と魔法の才能がある。
 魔力量が少ないとは言え、そこは剣技でカバー出来るほどの実力だ。
 そして、彼女は学舎での成績も非常に良い優等生である。
 それでも、国王の返事はノーだった。

「そのリタってのは女じゃないか。女なんか聖騎士団に入れたら見た目も弱くなるだろ。それになぁ、魔力が少ないんじゃ話にならん」

 この時、ワタシは初めて国王に対する殺意を覚えた。
 リタ自身の魔力量が少ないという点を不安視しているならば未だ分かるが、あの男はあろうことかリタが女であるという理由でワタシの推薦を蹴ったのだ。
 ふざけるな、当時のリタでも本気を出せば、父親と互角に戦えるほどの実力を持っていたはずだ。
 共に稽古をする上で、彼女の強さはワタシが一番理解していたのだ。

 その日はそれで引き下がったが、ワタシが国王を裏切るきっかけとなったのは、リタがあの聖剣を手にしてからの話である。
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