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明星/カラスの北斗七星 編
或る司祭の独白① 不調和
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幼い頃から、ワタシは優秀だった。
物心ついた時には、空間魔法という上位の魔法が扱えていた為、周囲の大人達を困らせていたのは言うまでもない。
そんなワタシが、初めて他者の才能に感激したのは、学園に入った頃だった。
人よりも魔力量が多く、秀でた魔法が扱えるワタシよりも、優秀な魔法使いは存在しない。
少なくとも、同年代では……そう、思っていた。
「リタは上級騎士の家系なのに魔力少ないんだぜ! かわいそー!」
「魔法も使えないのに騎士とか笑える~!」
リタ・シープハード、同じクラスにいた、騎士の家の内気な少女だ。
彼女は他人よりも魔力量が極端に少なく、消極的な性格も相まって他の生徒からはよく虐められていた。
馬鹿だと思った。
リタを虐める連中も、やり返さないリタも、全てが馬鹿だ。
お前達にリタを虐める資格なんて無い。
リタは、お前達の誰よりも優秀で、最強なのだから。
「行こう、リタ」
ワタシが手を引いてやらなければ、リタは逃げようとしない。
ワタシがいなければ、何も出来ない。
それでも、彼女は……
「ホロクラウス?」
「うん……私が選ばれたんだって。でも、元々はシープハード家に伝わるものだし、私なんかで良いのかなって……本当なら、ルークが持つべきだと……」
「そんなことないよ! リタは頭が良くて魔力の扱いは上手いし、それにルークだってそんな事言う子じゃないでしょ?」
彼女の家は、少し複雑な家庭環境だった。
リタの父親は彼女が幼い時から酒癖が悪く、騎士のくせに遊んでばかりで、遂には家族を捨てて何処かに行ってしまったらしい。
そうして母親が再婚した相手の騎士には、ルークという連れ子がいた。
彼らは優しい人だが、リタは少なからず気を遣っている。
「そうだけど……私、自信無いよ……」
「全く、リタは自分の凄さを分かってない! リタ以上に術式の扱いが上手い人なんてこの世に存在しないんだから、そこは誇るべきだよ! 聖剣だって、リタのそういうところを選んだんじゃない?」
「え、ええ……あ、ありがと……私は、そんなに大したものじゃないんだけどね」
ワタシは、リタのことが羨ましかった。
あの頃は嫉妬をする余地も無いほど、彼女に憧れを抱いたのだ。
リタは天才故に、周りと馴染めない。
それでも、ワタシだけはリタの凄さを知っていた。
彼女は最強の剣士であり、ワタシにとって唯一無二の一番星だった……
そんな、昔の事を考えていた。
「ブライト、少し良いか?」
「やあ、ザガン。この間はご苦労だったね」
やって来たのは、創星教の同志であるザガンという魔族の男だ。
彼は先日のシリウス事件で、大いに活躍をしてくれた。
「いや、俺のミスで国王には届かなかった。申し訳ない」
「何も本気で国王の首を討ち取ろうだなんて考えていなかったよ。キミのおかげで良い記録が取れた。本当に感謝している」
ワタシが欲しかったものは手に入った。
気掛かりなのは、あの盾使いの娘が持っていた大型の盾だ。
正体不明で能力も未知数な以上、神器と同等の脅威になり得る可能性がある。
「そうか。ところで、例の件はどうする? 俺も出るか?」
「いいや、ザガンには頑張って貰ったし、アレはフルーレだけに任せるよ。今回は連中とまともにやり合う必要は無いからね」
「わかった。また何かあれば言ってくれ」
「うん、ありがと」
ザガンは魔法の腕が良いけれど、真面目過ぎるがためにワタシから休みを与えなければ休もうとしない。
働いてくれるのは嬉しいが、大切な仲間に無理をして欲しくは無いのだ。
「さてと……」
既に次の準備は出来ている。
ワタシはワタシが信じる正義の為に、必ず成し遂げてみせるのだ。
例えリタであろうとも、ワタシの邪魔立てはさせない。
物心ついた時には、空間魔法という上位の魔法が扱えていた為、周囲の大人達を困らせていたのは言うまでもない。
そんなワタシが、初めて他者の才能に感激したのは、学園に入った頃だった。
人よりも魔力量が多く、秀でた魔法が扱えるワタシよりも、優秀な魔法使いは存在しない。
少なくとも、同年代では……そう、思っていた。
「リタは上級騎士の家系なのに魔力少ないんだぜ! かわいそー!」
「魔法も使えないのに騎士とか笑える~!」
リタ・シープハード、同じクラスにいた、騎士の家の内気な少女だ。
彼女は他人よりも魔力量が極端に少なく、消極的な性格も相まって他の生徒からはよく虐められていた。
馬鹿だと思った。
リタを虐める連中も、やり返さないリタも、全てが馬鹿だ。
お前達にリタを虐める資格なんて無い。
リタは、お前達の誰よりも優秀で、最強なのだから。
「行こう、リタ」
ワタシが手を引いてやらなければ、リタは逃げようとしない。
ワタシがいなければ、何も出来ない。
それでも、彼女は……
「ホロクラウス?」
「うん……私が選ばれたんだって。でも、元々はシープハード家に伝わるものだし、私なんかで良いのかなって……本当なら、ルークが持つべきだと……」
「そんなことないよ! リタは頭が良くて魔力の扱いは上手いし、それにルークだってそんな事言う子じゃないでしょ?」
彼女の家は、少し複雑な家庭環境だった。
リタの父親は彼女が幼い時から酒癖が悪く、騎士のくせに遊んでばかりで、遂には家族を捨てて何処かに行ってしまったらしい。
そうして母親が再婚した相手の騎士には、ルークという連れ子がいた。
彼らは優しい人だが、リタは少なからず気を遣っている。
「そうだけど……私、自信無いよ……」
「全く、リタは自分の凄さを分かってない! リタ以上に術式の扱いが上手い人なんてこの世に存在しないんだから、そこは誇るべきだよ! 聖剣だって、リタのそういうところを選んだんじゃない?」
「え、ええ……あ、ありがと……私は、そんなに大したものじゃないんだけどね」
ワタシは、リタのことが羨ましかった。
あの頃は嫉妬をする余地も無いほど、彼女に憧れを抱いたのだ。
リタは天才故に、周りと馴染めない。
それでも、ワタシだけはリタの凄さを知っていた。
彼女は最強の剣士であり、ワタシにとって唯一無二の一番星だった……
そんな、昔の事を考えていた。
「ブライト、少し良いか?」
「やあ、ザガン。この間はご苦労だったね」
やって来たのは、創星教の同志であるザガンという魔族の男だ。
彼は先日のシリウス事件で、大いに活躍をしてくれた。
「いや、俺のミスで国王には届かなかった。申し訳ない」
「何も本気で国王の首を討ち取ろうだなんて考えていなかったよ。キミのおかげで良い記録が取れた。本当に感謝している」
ワタシが欲しかったものは手に入った。
気掛かりなのは、あの盾使いの娘が持っていた大型の盾だ。
正体不明で能力も未知数な以上、神器と同等の脅威になり得る可能性がある。
「そうか。ところで、例の件はどうする? 俺も出るか?」
「いいや、ザガンには頑張って貰ったし、アレはフルーレだけに任せるよ。今回は連中とまともにやり合う必要は無いからね」
「わかった。また何かあれば言ってくれ」
「うん、ありがと」
ザガンは魔法の腕が良いけれど、真面目過ぎるがためにワタシから休みを与えなければ休もうとしない。
働いてくれるのは嬉しいが、大切な仲間に無理をして欲しくは無いのだ。
「さてと……」
既に次の準備は出来ている。
ワタシはワタシが信じる正義の為に、必ず成し遂げてみせるのだ。
例えリタであろうとも、ワタシの邪魔立てはさせない。
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