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陽光/月と太陽 編
15.思わぬ再会
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再びフランボワーズ邸までやってきた私達は、少女に言われた通り門番に私の名前を告げた。
「ベリィ・アン・バロル。レオン公爵に会わせてほしい」
「かしこまりました。中へどうぞ」
バロルという姓を聞いても、門番は特に驚く様子が無い。
そのまま建物の中へと入った私達が連れてこられたのは、レオン公爵の部屋だった。
レオン公爵は私を見てニッコリと笑い、深々とお辞儀をしてくれた。
私もそれに返し、深くお辞儀をする。
「初めまして、ベリィ王女。レオン・ベル・フランボワーズと申します。遠路遥々、お越し頂きありがとうございます」
この人がカンパニュラの代表、レオン公爵。
話に聞いていた通り穏やかな印象で、この美しい国を象徴するかのような、気品の溢れる男性だ。
「え、えっと……ベリィ、ベリィ・アン・バロルです。初めまして……お父様……父が生前に、この国を訪れて……なんか、えっと……」
完全に話したい内容が頭から飛んでしまった。
身内以外の偉い人と話すのはルシュフさん以来な上、初対面だから緊張して上手く言葉が出てこない。
そんな私を見て察してくれたのか、レオン公爵は優しく微笑んで「畏まらなくても大丈夫ですよ」と言ってくれた。
「ベリィ王女、それにシャーロットさんにシルビアさん、どうぞこちらにお掛けください」
そう言ってソファに案内された私達は、レオン公爵と向かい合うように三人並んで腰を掛ける。
「レオン公爵、どうして私達の名前を?」
シルビアの問いに、レオン公爵は一瞬何かに気付いたかのような表情を見せ、こう答えた。
「これは失礼致しました。先程、娘から御三方のお名前を伝えられていたもので。私の娘は、少女不思議な力を持っております。実は、本日皆様をここに呼んだのは、その娘の方なのです」
レオン公爵にそんな娘がいたとは。
と言う事は、あの時に聞こえてきた声はその娘のものなのだろうか?
「ベリィ王女のことは、ローグ様からお聞きしておりました。こうしてお会いすることが出来て光栄です」
「あ、えっと……こちらこそ、あの……私のことは王女じゃなくて大丈夫です。今はアルブ王国も無いようなものだし、あと何か王女って呼ばれ慣れてないので……」
「そうですか。では、ベリィ様とお呼びさせて頂きますね」
レオン公爵は、そう言ってまた微笑んだ。
そうだ、私はこの人に会って訊きたい事があったのだ。
「レオン公爵! あの……お父様が暗殺されたの、この国から帰る途中だったんです。お父様がここを訪問した際、何か変わった事というか、変な事みたいなの、言ってませんでしたか?」
私の問いに、レオン公爵は「そうですねぇ……」と暫く考えていた。
「あの時は、特に何も仰られていなかったのですが……実は、ベリィ様にお会いして頂きたいお方が、いらっしゃいます」
「私に……?」
座り心地の最高なソファからゆっくりと腰を上げ、私達はレオン公爵の後をついて行く。
そこは、建物内の普通の一室だった。
中に入ると、整理された部屋の中で一人、ベッドで横になっている人が目に入る。
私は確かに、その人物を知っていた。
知っているどころではない。
ずっと、小さい頃からずっと、私は彼のお世話になってきたのだ。
「ウール……どうして……」
ウール・フレイ、父の側近だった人物だ。
「カンパニュラの兵士が、この国の外で倒れているのを発見しまして、直ぐにローグ様の側近の方だと分かり、保護させて頂いたのです」
「お父様が死んじゃったとき、みんな殺されちゃったって、そう聞いて……ウール、生きてたんだ……! よかった……!」
ウールの無事が分かり、私は涙が止まらなくなった。
「恐らく、こちらまで逃げて来られたのでしょう。あれからまだ目を覚ましたことはありませんが、一命は取り留めております」
それでも良い。
いつか目を覚ましてくれると信じるだけだ。
もしウールの意識が戻ったら、あの事件の真相だって……。
「レオン公爵、ウールを助けてくれてありがとうございます」
「ローグ様にはお世話になりましたので。あのお方は偉大な魔王様でした。ですからベリィ様、カンパニュラ公国はベリィ様を支援し、時が来ればアルブ王国の再建にも協力致します。何かございましたら、いつでも我が国を頼ってくださいね。小さな国なので、出来ることは限られてしまいますが」
レオン公爵の表情は、相変わらず優しかった。
なぜお父様が暗殺されたのか、詳しい理由はまだ分からないけれど、カンパニュラに来て良かったと思っている。
そして、あと確認したいことは……
「レオン公爵、お嬢様はどちらに?」
あの人形と、私をここへ呼んだというレオン公爵の娘についてだ。
「ベリィ・アン・バロル。レオン公爵に会わせてほしい」
「かしこまりました。中へどうぞ」
バロルという姓を聞いても、門番は特に驚く様子が無い。
そのまま建物の中へと入った私達が連れてこられたのは、レオン公爵の部屋だった。
レオン公爵は私を見てニッコリと笑い、深々とお辞儀をしてくれた。
私もそれに返し、深くお辞儀をする。
「初めまして、ベリィ王女。レオン・ベル・フランボワーズと申します。遠路遥々、お越し頂きありがとうございます」
この人がカンパニュラの代表、レオン公爵。
話に聞いていた通り穏やかな印象で、この美しい国を象徴するかのような、気品の溢れる男性だ。
「え、えっと……ベリィ、ベリィ・アン・バロルです。初めまして……お父様……父が生前に、この国を訪れて……なんか、えっと……」
完全に話したい内容が頭から飛んでしまった。
身内以外の偉い人と話すのはルシュフさん以来な上、初対面だから緊張して上手く言葉が出てこない。
そんな私を見て察してくれたのか、レオン公爵は優しく微笑んで「畏まらなくても大丈夫ですよ」と言ってくれた。
「ベリィ王女、それにシャーロットさんにシルビアさん、どうぞこちらにお掛けください」
そう言ってソファに案内された私達は、レオン公爵と向かい合うように三人並んで腰を掛ける。
「レオン公爵、どうして私達の名前を?」
シルビアの問いに、レオン公爵は一瞬何かに気付いたかのような表情を見せ、こう答えた。
「これは失礼致しました。先程、娘から御三方のお名前を伝えられていたもので。私の娘は、少女不思議な力を持っております。実は、本日皆様をここに呼んだのは、その娘の方なのです」
レオン公爵にそんな娘がいたとは。
と言う事は、あの時に聞こえてきた声はその娘のものなのだろうか?
「ベリィ王女のことは、ローグ様からお聞きしておりました。こうしてお会いすることが出来て光栄です」
「あ、えっと……こちらこそ、あの……私のことは王女じゃなくて大丈夫です。今はアルブ王国も無いようなものだし、あと何か王女って呼ばれ慣れてないので……」
「そうですか。では、ベリィ様とお呼びさせて頂きますね」
レオン公爵は、そう言ってまた微笑んだ。
そうだ、私はこの人に会って訊きたい事があったのだ。
「レオン公爵! あの……お父様が暗殺されたの、この国から帰る途中だったんです。お父様がここを訪問した際、何か変わった事というか、変な事みたいなの、言ってませんでしたか?」
私の問いに、レオン公爵は「そうですねぇ……」と暫く考えていた。
「あの時は、特に何も仰られていなかったのですが……実は、ベリィ様にお会いして頂きたいお方が、いらっしゃいます」
「私に……?」
座り心地の最高なソファからゆっくりと腰を上げ、私達はレオン公爵の後をついて行く。
そこは、建物内の普通の一室だった。
中に入ると、整理された部屋の中で一人、ベッドで横になっている人が目に入る。
私は確かに、その人物を知っていた。
知っているどころではない。
ずっと、小さい頃からずっと、私は彼のお世話になってきたのだ。
「ウール……どうして……」
ウール・フレイ、父の側近だった人物だ。
「カンパニュラの兵士が、この国の外で倒れているのを発見しまして、直ぐにローグ様の側近の方だと分かり、保護させて頂いたのです」
「お父様が死んじゃったとき、みんな殺されちゃったって、そう聞いて……ウール、生きてたんだ……! よかった……!」
ウールの無事が分かり、私は涙が止まらなくなった。
「恐らく、こちらまで逃げて来られたのでしょう。あれからまだ目を覚ましたことはありませんが、一命は取り留めております」
それでも良い。
いつか目を覚ましてくれると信じるだけだ。
もしウールの意識が戻ったら、あの事件の真相だって……。
「レオン公爵、ウールを助けてくれてありがとうございます」
「ローグ様にはお世話になりましたので。あのお方は偉大な魔王様でした。ですからベリィ様、カンパニュラ公国はベリィ様を支援し、時が来ればアルブ王国の再建にも協力致します。何かございましたら、いつでも我が国を頼ってくださいね。小さな国なので、出来ることは限られてしまいますが」
レオン公爵の表情は、相変わらず優しかった。
なぜお父様が暗殺されたのか、詳しい理由はまだ分からないけれど、カンパニュラに来て良かったと思っている。
そして、あと確認したいことは……
「レオン公爵、お嬢様はどちらに?」
あの人形と、私をここへ呼んだというレオン公爵の娘についてだ。
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