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2章
38話 情報共有とガルの覚悟
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イザたちは宿の部屋に部屋を取ってくつろいでいた。
「はぁ~。ただ待つってのは暇で退屈なもんだなぁ」
そろそろ日も暮れようとしていた頃。
イザの部屋に王宮から戻ったガルが息を切らしながら尋ねてきた。
「良くここがわかったなー?というかどうしたんだ?そんなに慌てて?」
ベッドに寝ころんだままイザはガルに声をかけた。
「はぁっ!はぁっ!街の人に聞き込みながら必死に探しました…」
「そんなことをしなくても念話してくれたらよかったのに」
「いえ、念話では盗聴される可能性があると以前聞いたので直接報告を、と思って。重要な話があります」
イザは3人を部屋に呼び皆でガルの話を聞いた。
ガルはガラテアに会って聞いた情報を全てイザたちに伝えた。
「なるほど。侍女に会うことができたのか。アルマが動けないのにはそんな背景があったとは…。それでその侍女のガラテア?だっけ?そんなに腕が立ちそうなのか?」
「ええ、俺よりも確実に強いと思います」
(人間で今のガル以上の強者か…ガラテアって人も普通じゃなさそうだな。全てが解決したらアルマには聞きたいことが沢山だな)
「そしてこれが預かってきた破邪石です」
ガルは破邪石をテーブルに置いた。
「確かに不思議な力を感じるな。強力な魔力がなければ使えない魔法を打ち消す魔道具…か。この中では俺かマティアしか使えなそうだな」
(しかしこんなものを一体どうしろと?アルマは何を警戒してこれを作って俺達に託したんだ?)
「今の話にでた自我がない兵士というのは恐らくラナたちの潜入先にとらわれている者たちと同じだろうな」
「そうだな。その兵士たちも魔法を込めた首飾りで操られていたんだろう」
「ラナさん達も操られているんですか!?」
「はは、ないない!操られたふりをして潜入してるだけだよ。あいつら普通の人よりかなり魔力高いみたいだし、そこらの魔道具で支配されることはないみたいだよ」
イザは笑いながら手を横に振って否定した。
その後真面目な顔になってガルに話しかける。
「お前には話しておく必要があるし、向こうの状況も説明しておく」
こうしてガルにもラナたちの状況を説明した。
「やはりナック達も…」
ガルは仲間がとらえられているかもしれないということで、怒りと悔しさに歯をかみしめている。
「おそらくな。まだ確証はないぞ?ラナたちは内部に入ってからは念話を断ってるからな」
イザはテーブルに肘をついて頬杖をつきながらため息をついた。
「しかし困ったな。ガルもここに戻ってくることを考えてもう一部屋取っておくんだったな。もう部屋は空いてないみたいだし、誰かの部屋に一緒に止まってもらうしか…」
イザがそう言うと皆嫌そうな顔をした。
「いえ、俺はもう少し別で行動しようと思っています」
「そうか?まぁ何か考えがあるなら別に止めはしないけど」
ガルの意外な提案にイザは少し虚を突かれたが、ガルが今の状況を見て出した提案だと理解した。
「それで…一つお願いがあるのですが…」
「ん?何だ?」
何か覚悟を決めた目をしたガルはイザたちに一つ願い出た。
「銀牙さんに俺と同行してもらえないでしょうか」
「へ?俺?」
不意を突かれたという表情で間の抜けた顔で銀牙は自分の顔を指さして聞き返した。
「はい、付いてきてもらいたい所があります」
「だってさ、銀牙ついていってやってくれ」
「俺は別に構いませんが?」
なんで自分が選ばれたのかよくわかっていない銀牙だった。
真剣な表情のガルをみて、何か考えがあって銀牙の同行を願い出たのだと確信したイザは深くは聞かなかった。
「それで、これからどうするんだ?昼間だいぶ街を出歩いたから俺らのことを監視していた奴らには銀牙さんが別行動を取るのはすぐに気取られると思うぞ。銀牙さんとガルの方が狙われる可能性が出てくるんじゃないのか?」
エルロンがイザに問う。
「たしかに俺らからはぐれた銀牙を敵が狙う可能性は0じゃないと思う。けど俺が敵なら狙わないかな」
「どういうことだ?」
エルロンは理由が分からず納得できない様子。
「考えてみてくれ。ガルに同行していたラナ達は攫おうとしていた。ガルにはラナ達は先に帰ったと伝えて見逃している。こんな雑なやり方をしてでも人を集めている連中が何故ガルには手を出さない?ガルも今はSランク冒険者で先日のタイラントボア討伐の件でも実力は知れ渡っているはず。それなのにガルを泳がせている理由は?」
エルロンは少し考えて口を開いた。
「初代王の血族であり、且つ現王女の幼馴染で城内に度々出入りしてる。そんなやつが急に消息を絶ったら周囲や王女が騒ぎ立てる可能性も高く、組織としては動きづらくなって厄介…。ということか」
「そういうこと♪ まぁラナ達はガルの同行者として城にいったのにリスクを承知で3人をとらえようとしたのは強力な竜人種と勘違いされたからだろうな。ガルが不審に思って騒いだとしても王家の者が騒ぐほどの混乱は起きないと踏んでの行動だろう。とりあえずどっちにしてもガルと同行するなら銀牙を狙う可能性はかなり薄いと思う。今エルロンが言った理由でもガルは狙い辛い対象のはずだし、今日4人で常に行動していたのを見ていた刺客からすると一人減って三人になったことでエルロンを狙う好機と捉えると思わないか?」
「確かに…ファランの一件からイスカリオテは単独であいつを討った俺を狙っているはず。俺を狙っている奴らからすると周りの仲間が減った方が狙いやすくなる…か」
イザの意見を聞いてエルロンは納得したようだ。
「つまり銀牙がガルと行動を共にするなら、今夜にでも賊が打って出てくる可能性が高いし一石二鳥って訳さ♪」
イザはピースをしてご機嫌に説明をした。
「…イザさんはいつもここまで考えながら行動しているのか…?」
「ん?俺は結構行き当たりばったりだよ?」
全員イザの思慮深さを知って若干驚いた。
「俺とエルロンとマティアは当初の予定通り、今夜来るであろう賊を返り討ちにして情報を吐かせる計画。ガルの希望通り銀牙は俺らとは別行動。ガルをサポートしてあげてくれ」
「わかりました」
「ありがとうございます。うまくいけばまた報告します」
(あの操られていた兵士…恐らく…)
話が済むとガルと銀牙は宿を後にした。
イザはその様子を窓から眺めながら見送った。
(あっちはガルに何か考えがあるみたいだし任せるとするか…監視されている視線の数が増えた気がする…こっちもそろそろ動きがありそうだな。)
宿を出てガルについていく銀牙。
ガルは王都の北側、王城とは反対の方向へ歩き出していた。
「俺らは何処に向かってるんだ?」
「…俺の実家…ラグナ家です」
「なんでこんな時に家なんかに?」
「ちょっと思うところがありまして」
ガルはなにか覚悟を決めたような目をしていた。
「はぁ~。ただ待つってのは暇で退屈なもんだなぁ」
そろそろ日も暮れようとしていた頃。
イザの部屋に王宮から戻ったガルが息を切らしながら尋ねてきた。
「良くここがわかったなー?というかどうしたんだ?そんなに慌てて?」
ベッドに寝ころんだままイザはガルに声をかけた。
「はぁっ!はぁっ!街の人に聞き込みながら必死に探しました…」
「そんなことをしなくても念話してくれたらよかったのに」
「いえ、念話では盗聴される可能性があると以前聞いたので直接報告を、と思って。重要な話があります」
イザは3人を部屋に呼び皆でガルの話を聞いた。
ガルはガラテアに会って聞いた情報を全てイザたちに伝えた。
「なるほど。侍女に会うことができたのか。アルマが動けないのにはそんな背景があったとは…。それでその侍女のガラテア?だっけ?そんなに腕が立ちそうなのか?」
「ええ、俺よりも確実に強いと思います」
(人間で今のガル以上の強者か…ガラテアって人も普通じゃなさそうだな。全てが解決したらアルマには聞きたいことが沢山だな)
「そしてこれが預かってきた破邪石です」
ガルは破邪石をテーブルに置いた。
「確かに不思議な力を感じるな。強力な魔力がなければ使えない魔法を打ち消す魔道具…か。この中では俺かマティアしか使えなそうだな」
(しかしこんなものを一体どうしろと?アルマは何を警戒してこれを作って俺達に託したんだ?)
「今の話にでた自我がない兵士というのは恐らくラナたちの潜入先にとらわれている者たちと同じだろうな」
「そうだな。その兵士たちも魔法を込めた首飾りで操られていたんだろう」
「ラナさん達も操られているんですか!?」
「はは、ないない!操られたふりをして潜入してるだけだよ。あいつら普通の人よりかなり魔力高いみたいだし、そこらの魔道具で支配されることはないみたいだよ」
イザは笑いながら手を横に振って否定した。
その後真面目な顔になってガルに話しかける。
「お前には話しておく必要があるし、向こうの状況も説明しておく」
こうしてガルにもラナたちの状況を説明した。
「やはりナック達も…」
ガルは仲間がとらえられているかもしれないということで、怒りと悔しさに歯をかみしめている。
「おそらくな。まだ確証はないぞ?ラナたちは内部に入ってからは念話を断ってるからな」
イザはテーブルに肘をついて頬杖をつきながらため息をついた。
「しかし困ったな。ガルもここに戻ってくることを考えてもう一部屋取っておくんだったな。もう部屋は空いてないみたいだし、誰かの部屋に一緒に止まってもらうしか…」
イザがそう言うと皆嫌そうな顔をした。
「いえ、俺はもう少し別で行動しようと思っています」
「そうか?まぁ何か考えがあるなら別に止めはしないけど」
ガルの意外な提案にイザは少し虚を突かれたが、ガルが今の状況を見て出した提案だと理解した。
「それで…一つお願いがあるのですが…」
「ん?何だ?」
何か覚悟を決めた目をしたガルはイザたちに一つ願い出た。
「銀牙さんに俺と同行してもらえないでしょうか」
「へ?俺?」
不意を突かれたという表情で間の抜けた顔で銀牙は自分の顔を指さして聞き返した。
「はい、付いてきてもらいたい所があります」
「だってさ、銀牙ついていってやってくれ」
「俺は別に構いませんが?」
なんで自分が選ばれたのかよくわかっていない銀牙だった。
真剣な表情のガルをみて、何か考えがあって銀牙の同行を願い出たのだと確信したイザは深くは聞かなかった。
「それで、これからどうするんだ?昼間だいぶ街を出歩いたから俺らのことを監視していた奴らには銀牙さんが別行動を取るのはすぐに気取られると思うぞ。銀牙さんとガルの方が狙われる可能性が出てくるんじゃないのか?」
エルロンがイザに問う。
「たしかに俺らからはぐれた銀牙を敵が狙う可能性は0じゃないと思う。けど俺が敵なら狙わないかな」
「どういうことだ?」
エルロンは理由が分からず納得できない様子。
「考えてみてくれ。ガルに同行していたラナ達は攫おうとしていた。ガルにはラナ達は先に帰ったと伝えて見逃している。こんな雑なやり方をしてでも人を集めている連中が何故ガルには手を出さない?ガルも今はSランク冒険者で先日のタイラントボア討伐の件でも実力は知れ渡っているはず。それなのにガルを泳がせている理由は?」
エルロンは少し考えて口を開いた。
「初代王の血族であり、且つ現王女の幼馴染で城内に度々出入りしてる。そんなやつが急に消息を絶ったら周囲や王女が騒ぎ立てる可能性も高く、組織としては動きづらくなって厄介…。ということか」
「そういうこと♪ まぁラナ達はガルの同行者として城にいったのにリスクを承知で3人をとらえようとしたのは強力な竜人種と勘違いされたからだろうな。ガルが不審に思って騒いだとしても王家の者が騒ぐほどの混乱は起きないと踏んでの行動だろう。とりあえずどっちにしてもガルと同行するなら銀牙を狙う可能性はかなり薄いと思う。今エルロンが言った理由でもガルは狙い辛い対象のはずだし、今日4人で常に行動していたのを見ていた刺客からすると一人減って三人になったことでエルロンを狙う好機と捉えると思わないか?」
「確かに…ファランの一件からイスカリオテは単独であいつを討った俺を狙っているはず。俺を狙っている奴らからすると周りの仲間が減った方が狙いやすくなる…か」
イザの意見を聞いてエルロンは納得したようだ。
「つまり銀牙がガルと行動を共にするなら、今夜にでも賊が打って出てくる可能性が高いし一石二鳥って訳さ♪」
イザはピースをしてご機嫌に説明をした。
「…イザさんはいつもここまで考えながら行動しているのか…?」
「ん?俺は結構行き当たりばったりだよ?」
全員イザの思慮深さを知って若干驚いた。
「俺とエルロンとマティアは当初の予定通り、今夜来るであろう賊を返り討ちにして情報を吐かせる計画。ガルの希望通り銀牙は俺らとは別行動。ガルをサポートしてあげてくれ」
「わかりました」
「ありがとうございます。うまくいけばまた報告します」
(あの操られていた兵士…恐らく…)
話が済むとガルと銀牙は宿を後にした。
イザはその様子を窓から眺めながら見送った。
(あっちはガルに何か考えがあるみたいだし任せるとするか…監視されている視線の数が増えた気がする…こっちもそろそろ動きがありそうだな。)
宿を出てガルについていく銀牙。
ガルは王都の北側、王城とは反対の方向へ歩き出していた。
「俺らは何処に向かってるんだ?」
「…俺の実家…ラグナ家です」
「なんでこんな時に家なんかに?」
「ちょっと思うところがありまして」
ガルはなにか覚悟を決めたような目をしていた。
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