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2章
25話 刺客
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地下水道での詳しい話を聞きたいということで、4人はギルドマスターに呼び出されていた。
エレナがマスターの執務室に皆を案内する。
「こちらがギルマスの部屋です」
部屋の前に着くとエレナが扉をノックする。
「4人をお連れしました」
「空いてるぞ。入ってくれ」
中に入ると大柄な獣人が目についた。
熊のような屈強な体格に片眼には眼帯。いかにも歴戦の冒険者という風貌をしていた。
「俺はこの冒険者ギルドのマスターを務めさせてもらってるガランってもんだ。早速だが詳しい話を頼むぜ」
聞かれるがままにスライムの件と闇ギルドの件を説明した。(銀牙が魔法で拘束したことだけは伏せた)
「刺突武器と転移魔法か…なるほど、そいつはファランって奴かも知れねぇ」
「やつのこと知ってるのか!?」
エルロンが食いついた。
「待て待て、まだ可能性の話だ。先日ニルンハイム王城内部に不審者が侵入したらしいんだがどうもそいつが闇ギルドにメンバー、ファランって奴らしくてな。先日から緊急依頼が届いていたんだよ。王城の衛兵は刺突武器で刺された跡があったらしいからもしかしたら…と思ってな」
「依頼が来てるならなぜもっと早くギルド内で公表しない!?」
「はぁ…うちもいろいろあるんだよ」
「…まさか闇ギルドと繋がってるってんじゃねぇだろうな…?」
エルロンはガランを睨みつける。
「んな分けねぇだろう!張り出せない理由はこいつさ、これは?依頼書?」
「ファランの討伐依頼書じゃねぇか!?だったら!」
「ただの討伐依頼じゃねぇ。…ふー。よーく見て見ろ?」
ガランは煙草に火をつけ一息ふかしながら言った。
「ん?…手配が回ると犯人が逃亡する恐れがある為、王城から命がくだるまでは極秘扱いとして口外禁止とする?」
「なんだこの回りくどい依頼書は!?」
「しるかよ!こっちが聞きてぇよ!王宮では何が何でもこいつを捉えなきゃならねぇ理由があるんだろう?大事ななにかが盗まれたってとこじゃねぇのか?」
「俺が必ずそいつを捉えてくる。理由は知らねぇが俺を狙ってきてる。必ずまた来るはずだ」
「理由ねぇ。お前どもでも恨み飼ってるしな。どうせいつもみたいに悪態付いて恨まれたんじゃねぇのか?」
「俺が何時悪態をついたというんだ?」
(こいつ自覚無だったのかー)
「スー…スー…」
マティアは興味がない様で眠ってしまっていた。
(この状況でよくねれるな…)
こうして口外禁止の緊急依頼の話も聞き、今後はファランを警戒しつつ行動することとなった。
当初の予定とは変わることになるが、エルロンと、先日の戦闘で銀牙も恐らく狙われることとなるので、4人は今後も行動を共にすることにした。
ひとまず報告ついでに村に戻ることにした。
街中でゲートの魔法を使うとまずいので人目につかないように人気のない路地裏でゲートを出すことにした。
路地裏を進んで行き止まりにたどり着いた。
「この辺りなら人も居ないしゲートを使っていいだろう。んじゃ一旦村に戻るぞ。ゲート!
4人はイザが出した転送門を通り始まりの村に帰還する。
だがその状況を途中まで見ていたものが居た。
ファランは街に戻ってエルロンたちを付けていた。
(こんな路地裏になぜ?あの先は行き止まりのはず、袋小路に自ら赴いてくれるとか好都合♪今度こそ殺してやる!!)
ファランは武器を構えて曲がり角で待機。
そして一気に襲い掛かろうとする。
「…なっ!いない…ですって!?」
ほんの数秒目を離したすきに4人が消えたのでファランは戸惑った。
だがファラン自身も空属性魔法の使い手なのですぐに冷静になり周囲を確認した。
(何処にも隠し通路などは見当たらないわね…ということは向こうにもあたしと同じ空属性の使い手が…。もし逃げられると厄介ね…何としても次で仕留めなくては…)
始まり村に戻った4人は夕飯にありついていた。
「ごはーん♪」
マティアは楽しそうだ。
「またすぐに襲ってくると思うか?」
「ああ、間違いなく今夜襲ってくるだろうな」
「それにしてもなぜエルロンを?何か心当たりはないか?」
「…心当たりか……なぜか俺は人に嫌われやすいからありすぎてわからん」
全員が思った(でしょうね)
「それにしても空間属性の魔法まで使えるなんてな」
「人が移動するレベルの魔法は珍しいはずなのですけどね」
「そうなのか?ラナも俺も使えるから普通かと思ってたけど」
「確かにこの村には多いが人が丸ごと転移出来るくらいの空魔法の使い手なんぞ、滅多にいるもんじゃない。500年近く生きてきたが見聞きする限りお主らと出会うまでは両手の指で足りるほどしか知らんな」
(エルドはそういうってことは余程希少なのか。ってかエルドもう500歳なのか…想像よりめっちゃ年上だった!)
「そういえばゲートの魔法はレアだって言ってたね」
「そうですね、しかもかなりの魔力を消費するのでぽんぽん使ってるイザ様が異常です」
ラナは苦笑いを浮かべている。
「ラナさんもゲートの魔法は使えると聞いているが?」
「ええ、一応使えはしますが…私程度の魔力量では日に4~5回がいいとこです」
「ラナさんの魔力で4~5回か…(では奴の魔力では日に2~3回といったところか)
「?」
考え込むエルロンにラナは首を傾げた。
「いや、いい情報が聞けたと思ってな」
夕食を済ませ状況報告も済んだので4人は再び街に戻ることにした。
あえて街に宿に泊まっておけば今夜にでもあちらから奇襲をかけてくるだろうというエルロンの言葉を信じて、待ち伏せる作戦だ。
「皆さん向こうでは魔力感知を切らさないようにしてくださいね。それと入念な隠蔽をしてください。隠蔽をしたうえで…イザさんとマティアさんは戦闘禁止です。」
「なんで?」
二人は首を傾げた。
「わかりませんか?闇ギルドにエルロンさんが襲われているとこに居合わせて、顔も割れているのでしょう??お二人はどう見ても人間、人間で膨大な魔力を持っていることがばれたら間違いなく目を付けられるでしょう。わかりましたか?わかりましたね?」
ラナは徐々に顔を近づけながらイザに念をおしてきた。
「き、気を付けます」
「お二人もわかりましたね?決してイザさんとマティアさんに人前で魔法を使わせるような事が無いようにお願いしますよ?」
「は、はい」
ラナの圧力には普段高慢なエルロンも委縮していた。
「んじゃ行ってくるよ」
「くれぐれも気を付けてくださいね」
「銀牙さん!イザさんとマティアさんを頼みましたよ~!」
「任せてください!」
「よし、皆行くぞ。ゲート!」
イザは先ほどの路地裏にゲートを出した。
「よし、誰もいなそうだな?」
「ざーんねん♪皆さんおかえりなさい♪遅かったわね♪」
「その声は!?ファラン!?」
エルロンが声のする方を警戒して弓を構えた。
「なんであなたが私の名を!?」
名前を呼ばれたことでファランは一瞬驚いていたがすぐに冷静になり狩るものの目をした。
「さぁなんでだろうな?」
「まぁいいわどうせ殺すんだから名前を知られたところで関係ないもの。今度は油断なんてしないわ。全力で狩る!」(まぁほんとはエルロンは殺すなって言われてるから殺しはしないけど…死んでなければ痛めつけてもいいってことよねっ)
「俺もお前を確実に狩ることにするぜ。お互い出し惜しみは無しだ。今回は銀牙さんも手を出さないでくれ」
二人はにらみ合って辺りは静まり返った。
そして次の瞬間。二人は同時に動き出した。
エルロンは無数のホーリーアローをファランに向けて放つ。
「確かに発射速度と数はすごいけど結局はただの矢ね。動きが直線的過ぎる。スライムを召喚するまでもないわ。このまま近づいて貴方の息の根を止めてあげるわ!」
「これでもか?」
エルロンが空中で指を振ると先ほどファランが避けたはずの矢が指の動きに応じてファランを追尾する。
「なっ!矢が戻って!くっ!」
ヒュージスライムを召喚してファランは何とか攻撃を防いだ。
そしてスライムを召喚していた魔石は音もなく崩れ去った。
どうやら魔石が限界を迎えたらしい。
「頼みの魔石が壊れちまったな?これでもうお前を守る盾はなくなったぜ?」
こんなものなくたって私の剣にかかれば!
「試して見ろよ!ホーリーアロー!」
エルロンは無数の矢をファランに向けて放った。
(くっ!確かに凄い連射速度…全弾を打ち払うのは難しい。いくら放った矢を操作できるといってもすべての矢を操作する程の魔力はあなたにはないはず!いくらか被弾する覚悟で致命傷さえ避ければ近づくことは出来るわっ!)
ファランは致命傷を回避し矢を被弾つつ少しずつ距離を詰めてきた。
「この距離なら貰ったわ!!私のかちね!死になさい!!」
「甘いな?俺が正面にお前を誘導したのがわからなかったのか?この距離なら矢の方が先に届く、俺の勝ちだ。ジャッジメントアロー!」
そう言うとエルロンは巨大な矢を放った。
「くっ!…なんてね♪…ゲート!」
そういうとファランは自分の正面と背面に転移門を発現させた。
エルロンの矢がゲートに入りファランの背面へ流されていく。
「くそっだがまだこの距離なら俺の矢の方が早く届く!!!」
エルロンはすぐさま次の矢を構えた。
(たしかに普通ならあたしは間に合わない。でも…ここまで近づけば次の矢を射る前に私の剣が届く…!)
ファランが剣に魔力を込めると、レイピアの刃が高速で伸び始めエルロンのど元に届こうとしていた。
「あはははは!奥の手ってのは最後まで隠しておくものなのよ!!」
依然エルロンは巨大な光の矢でファランを見定めている。だがどう見ても今から矢を放っても間に合わない。
「エルロン!!」
イザが叫んだ直後。ファランの背中に巨大な矢が刺さり、先にファランは倒れ込んだ。
「後ろから…矢…!?バカ…な……!?矢の誘導をする余裕なんてなかったはず…なぜ…」
ファランはその場に崩れ落ちる。
地面に倒れながら背面を見るとそこにはゲートが出ていた。
「…まさかあなたもゲートが使えたなんてね。しかも魔法名詠唱も無しに…負けたわ。殺し…なさい」
「元から使えたんじゃない、今使えるようになったんだ」
「そんな…転移門を正確に出すなんて一朝一夕で出来るわけが…」
「実は俺の知り合いにもゲートが得意な人が居てな。間近で何度も見させてもらったんで魔法を発現できるようになったのさ」
「くそ…あなたにそれほどの魔力が扱えたなんて…」
「いや、大きなゲートを使えるほどの魔力は俺にはない。しかしその問題はお前が解決してくれた。お前が目の前で小さなゲートを作ってくれたからあんな小さく出せることも知ることができたよ」
「…完敗だわ。惚れちゃいそう」
「勘弁してくれ。何故俺を狙って来たのかとか…色々聞きたいことがあるが。ひとまずお前をギルドに引き渡す。罪を償え」
「ふふ、そういうわけにも行かない…のよね。でも気を付けなさい私を倒したことでもっと強力な刺客が貴方を狙うことになるわよ。じゃあね」
「!?」
ファランは奥歯に仕込んでいた毒を噛んで服毒死した。
「…死んでる…」
(闇ギルドか…一体どんな理由があってエルロンを狙っているんだろうな)
次にくる刺客を倒して聞き出すまでのことだ。とにかく一旦ギルドに報告だ。
…。
ランスと呼ばれていた者が4人を影から覗いていた。
イザが気配に気づきランクが潜んでいた方へ意識をやると、既にそこにはひとかけはなかった。
「どうしたんですかイザさん?早くいきましょ~」
「ああ、何でもない」
銀牙に急かされそう返事をしたがイザは何者かに見られていたと感じていた。
(いま気配を感じたが一瞬で消えた。エルロンや銀牙でさえ気が付かないなんて何者だ?)
その頃ランスは少し離れた建物の屋根の上に居た。
「あぶないあぶない…。あの人間は確かに私の気配に気が付いていた…。何者でしょうかね」
エレナがマスターの執務室に皆を案内する。
「こちらがギルマスの部屋です」
部屋の前に着くとエレナが扉をノックする。
「4人をお連れしました」
「空いてるぞ。入ってくれ」
中に入ると大柄な獣人が目についた。
熊のような屈強な体格に片眼には眼帯。いかにも歴戦の冒険者という風貌をしていた。
「俺はこの冒険者ギルドのマスターを務めさせてもらってるガランってもんだ。早速だが詳しい話を頼むぜ」
聞かれるがままにスライムの件と闇ギルドの件を説明した。(銀牙が魔法で拘束したことだけは伏せた)
「刺突武器と転移魔法か…なるほど、そいつはファランって奴かも知れねぇ」
「やつのこと知ってるのか!?」
エルロンが食いついた。
「待て待て、まだ可能性の話だ。先日ニルンハイム王城内部に不審者が侵入したらしいんだがどうもそいつが闇ギルドにメンバー、ファランって奴らしくてな。先日から緊急依頼が届いていたんだよ。王城の衛兵は刺突武器で刺された跡があったらしいからもしかしたら…と思ってな」
「依頼が来てるならなぜもっと早くギルド内で公表しない!?」
「はぁ…うちもいろいろあるんだよ」
「…まさか闇ギルドと繋がってるってんじゃねぇだろうな…?」
エルロンはガランを睨みつける。
「んな分けねぇだろう!張り出せない理由はこいつさ、これは?依頼書?」
「ファランの討伐依頼書じゃねぇか!?だったら!」
「ただの討伐依頼じゃねぇ。…ふー。よーく見て見ろ?」
ガランは煙草に火をつけ一息ふかしながら言った。
「ん?…手配が回ると犯人が逃亡する恐れがある為、王城から命がくだるまでは極秘扱いとして口外禁止とする?」
「なんだこの回りくどい依頼書は!?」
「しるかよ!こっちが聞きてぇよ!王宮では何が何でもこいつを捉えなきゃならねぇ理由があるんだろう?大事ななにかが盗まれたってとこじゃねぇのか?」
「俺が必ずそいつを捉えてくる。理由は知らねぇが俺を狙ってきてる。必ずまた来るはずだ」
「理由ねぇ。お前どもでも恨み飼ってるしな。どうせいつもみたいに悪態付いて恨まれたんじゃねぇのか?」
「俺が何時悪態をついたというんだ?」
(こいつ自覚無だったのかー)
「スー…スー…」
マティアは興味がない様で眠ってしまっていた。
(この状況でよくねれるな…)
こうして口外禁止の緊急依頼の話も聞き、今後はファランを警戒しつつ行動することとなった。
当初の予定とは変わることになるが、エルロンと、先日の戦闘で銀牙も恐らく狙われることとなるので、4人は今後も行動を共にすることにした。
ひとまず報告ついでに村に戻ることにした。
街中でゲートの魔法を使うとまずいので人目につかないように人気のない路地裏でゲートを出すことにした。
路地裏を進んで行き止まりにたどり着いた。
「この辺りなら人も居ないしゲートを使っていいだろう。んじゃ一旦村に戻るぞ。ゲート!
4人はイザが出した転送門を通り始まりの村に帰還する。
だがその状況を途中まで見ていたものが居た。
ファランは街に戻ってエルロンたちを付けていた。
(こんな路地裏になぜ?あの先は行き止まりのはず、袋小路に自ら赴いてくれるとか好都合♪今度こそ殺してやる!!)
ファランは武器を構えて曲がり角で待機。
そして一気に襲い掛かろうとする。
「…なっ!いない…ですって!?」
ほんの数秒目を離したすきに4人が消えたのでファランは戸惑った。
だがファラン自身も空属性魔法の使い手なのですぐに冷静になり周囲を確認した。
(何処にも隠し通路などは見当たらないわね…ということは向こうにもあたしと同じ空属性の使い手が…。もし逃げられると厄介ね…何としても次で仕留めなくては…)
始まり村に戻った4人は夕飯にありついていた。
「ごはーん♪」
マティアは楽しそうだ。
「またすぐに襲ってくると思うか?」
「ああ、間違いなく今夜襲ってくるだろうな」
「それにしてもなぜエルロンを?何か心当たりはないか?」
「…心当たりか……なぜか俺は人に嫌われやすいからありすぎてわからん」
全員が思った(でしょうね)
「それにしても空間属性の魔法まで使えるなんてな」
「人が移動するレベルの魔法は珍しいはずなのですけどね」
「そうなのか?ラナも俺も使えるから普通かと思ってたけど」
「確かにこの村には多いが人が丸ごと転移出来るくらいの空魔法の使い手なんぞ、滅多にいるもんじゃない。500年近く生きてきたが見聞きする限りお主らと出会うまでは両手の指で足りるほどしか知らんな」
(エルドはそういうってことは余程希少なのか。ってかエルドもう500歳なのか…想像よりめっちゃ年上だった!)
「そういえばゲートの魔法はレアだって言ってたね」
「そうですね、しかもかなりの魔力を消費するのでぽんぽん使ってるイザ様が異常です」
ラナは苦笑いを浮かべている。
「ラナさんもゲートの魔法は使えると聞いているが?」
「ええ、一応使えはしますが…私程度の魔力量では日に4~5回がいいとこです」
「ラナさんの魔力で4~5回か…(では奴の魔力では日に2~3回といったところか)
「?」
考え込むエルロンにラナは首を傾げた。
「いや、いい情報が聞けたと思ってな」
夕食を済ませ状況報告も済んだので4人は再び街に戻ることにした。
あえて街に宿に泊まっておけば今夜にでもあちらから奇襲をかけてくるだろうというエルロンの言葉を信じて、待ち伏せる作戦だ。
「皆さん向こうでは魔力感知を切らさないようにしてくださいね。それと入念な隠蔽をしてください。隠蔽をしたうえで…イザさんとマティアさんは戦闘禁止です。」
「なんで?」
二人は首を傾げた。
「わかりませんか?闇ギルドにエルロンさんが襲われているとこに居合わせて、顔も割れているのでしょう??お二人はどう見ても人間、人間で膨大な魔力を持っていることがばれたら間違いなく目を付けられるでしょう。わかりましたか?わかりましたね?」
ラナは徐々に顔を近づけながらイザに念をおしてきた。
「き、気を付けます」
「お二人もわかりましたね?決してイザさんとマティアさんに人前で魔法を使わせるような事が無いようにお願いしますよ?」
「は、はい」
ラナの圧力には普段高慢なエルロンも委縮していた。
「んじゃ行ってくるよ」
「くれぐれも気を付けてくださいね」
「銀牙さん!イザさんとマティアさんを頼みましたよ~!」
「任せてください!」
「よし、皆行くぞ。ゲート!」
イザは先ほどの路地裏にゲートを出した。
「よし、誰もいなそうだな?」
「ざーんねん♪皆さんおかえりなさい♪遅かったわね♪」
「その声は!?ファラン!?」
エルロンが声のする方を警戒して弓を構えた。
「なんであなたが私の名を!?」
名前を呼ばれたことでファランは一瞬驚いていたがすぐに冷静になり狩るものの目をした。
「さぁなんでだろうな?」
「まぁいいわどうせ殺すんだから名前を知られたところで関係ないもの。今度は油断なんてしないわ。全力で狩る!」(まぁほんとはエルロンは殺すなって言われてるから殺しはしないけど…死んでなければ痛めつけてもいいってことよねっ)
「俺もお前を確実に狩ることにするぜ。お互い出し惜しみは無しだ。今回は銀牙さんも手を出さないでくれ」
二人はにらみ合って辺りは静まり返った。
そして次の瞬間。二人は同時に動き出した。
エルロンは無数のホーリーアローをファランに向けて放つ。
「確かに発射速度と数はすごいけど結局はただの矢ね。動きが直線的過ぎる。スライムを召喚するまでもないわ。このまま近づいて貴方の息の根を止めてあげるわ!」
「これでもか?」
エルロンが空中で指を振ると先ほどファランが避けたはずの矢が指の動きに応じてファランを追尾する。
「なっ!矢が戻って!くっ!」
ヒュージスライムを召喚してファランは何とか攻撃を防いだ。
そしてスライムを召喚していた魔石は音もなく崩れ去った。
どうやら魔石が限界を迎えたらしい。
「頼みの魔石が壊れちまったな?これでもうお前を守る盾はなくなったぜ?」
こんなものなくたって私の剣にかかれば!
「試して見ろよ!ホーリーアロー!」
エルロンは無数の矢をファランに向けて放った。
(くっ!確かに凄い連射速度…全弾を打ち払うのは難しい。いくら放った矢を操作できるといってもすべての矢を操作する程の魔力はあなたにはないはず!いくらか被弾する覚悟で致命傷さえ避ければ近づくことは出来るわっ!)
ファランは致命傷を回避し矢を被弾つつ少しずつ距離を詰めてきた。
「この距離なら貰ったわ!!私のかちね!死になさい!!」
「甘いな?俺が正面にお前を誘導したのがわからなかったのか?この距離なら矢の方が先に届く、俺の勝ちだ。ジャッジメントアロー!」
そう言うとエルロンは巨大な矢を放った。
「くっ!…なんてね♪…ゲート!」
そういうとファランは自分の正面と背面に転移門を発現させた。
エルロンの矢がゲートに入りファランの背面へ流されていく。
「くそっだがまだこの距離なら俺の矢の方が早く届く!!!」
エルロンはすぐさま次の矢を構えた。
(たしかに普通ならあたしは間に合わない。でも…ここまで近づけば次の矢を射る前に私の剣が届く…!)
ファランが剣に魔力を込めると、レイピアの刃が高速で伸び始めエルロンのど元に届こうとしていた。
「あはははは!奥の手ってのは最後まで隠しておくものなのよ!!」
依然エルロンは巨大な光の矢でファランを見定めている。だがどう見ても今から矢を放っても間に合わない。
「エルロン!!」
イザが叫んだ直後。ファランの背中に巨大な矢が刺さり、先にファランは倒れ込んだ。
「後ろから…矢…!?バカ…な……!?矢の誘導をする余裕なんてなかったはず…なぜ…」
ファランはその場に崩れ落ちる。
地面に倒れながら背面を見るとそこにはゲートが出ていた。
「…まさかあなたもゲートが使えたなんてね。しかも魔法名詠唱も無しに…負けたわ。殺し…なさい」
「元から使えたんじゃない、今使えるようになったんだ」
「そんな…転移門を正確に出すなんて一朝一夕で出来るわけが…」
「実は俺の知り合いにもゲートが得意な人が居てな。間近で何度も見させてもらったんで魔法を発現できるようになったのさ」
「くそ…あなたにそれほどの魔力が扱えたなんて…」
「いや、大きなゲートを使えるほどの魔力は俺にはない。しかしその問題はお前が解決してくれた。お前が目の前で小さなゲートを作ってくれたからあんな小さく出せることも知ることができたよ」
「…完敗だわ。惚れちゃいそう」
「勘弁してくれ。何故俺を狙って来たのかとか…色々聞きたいことがあるが。ひとまずお前をギルドに引き渡す。罪を償え」
「ふふ、そういうわけにも行かない…のよね。でも気を付けなさい私を倒したことでもっと強力な刺客が貴方を狙うことになるわよ。じゃあね」
「!?」
ファランは奥歯に仕込んでいた毒を噛んで服毒死した。
「…死んでる…」
(闇ギルドか…一体どんな理由があってエルロンを狙っているんだろうな)
次にくる刺客を倒して聞き出すまでのことだ。とにかく一旦ギルドに報告だ。
…。
ランスと呼ばれていた者が4人を影から覗いていた。
イザが気配に気づきランクが潜んでいた方へ意識をやると、既にそこにはひとかけはなかった。
「どうしたんですかイザさん?早くいきましょ~」
「ああ、何でもない」
銀牙に急かされそう返事をしたがイザは何者かに見られていたと感じていた。
(いま気配を感じたが一瞬で消えた。エルロンや銀牙でさえ気が付かないなんて何者だ?)
その頃ランスは少し離れた建物の屋根の上に居た。
「あぶないあぶない…。あの人間は確かに私の気配に気が付いていた…。何者でしょうかね」
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