転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる

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2章

23話 冒険者登録

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ギルドに到着して一行はガルに連れられ中に入る。

何故ベルンの冒険者ギルドへ冒険者登録をしに来たのかといういくつかの理由がある。
まずは当然ながら一番近い町だから。
だが、近いから。と理由だけでこの街に来たのではない。
当然、王都の宮廷魔術師アルマに会うためならば王都のギルドに登録し。王都を拠点に活動した方がいいという案も出た。ではなぜ隣の小国の冒険者ギルドなのかというと。
まず、現在ガルはベルンのギルド所属の冒険者だから顔が利くということ。
そしていきなり王城に向かおうにも、小国と違い王都は検問が厳しいので入れないだろうということ。
イャーリスに入るならまだしも、王都には身分証もないのではいくらガル達の知り合いというだけでは入れてもらえないだろうし、入れるとしても身分証の代わりに多額の金銭が必要になると言うこと。
なのでまず王都に入るために身分証として近場の街で冒険者ギルドか商業ギルドでギルドカードを発行して、ある程度実績を積む。という話に落ち着いたのである。

しかもガルは先日の討伐の功績でSランク冒険者に昇格したので、なりたての冒険者3人がガルに付いて王城に入るのは当然許可されないだろうという話になり、全員ランクC~B程度まで上げる必要があるという話でまとまったのである。

「イザさん達なら1か月もあればそれくらいのランクになれると思いますよ」
「冒険者って依頼をこなしてランクを上げるんですよね?高難易度の仕事うけてパパっとやっちゃダメなんすかねぇ」
「バカ銀牙。そんなの絶対怪しまれるに決まってるだろう。登録仕立ての冒険者がいきなりガンガン功績をあげてみろ。絶対トラブルに発展するぞ」
(俺は向こうでラノベを呼んでいたので知っている。出る杭は打たれる理論を。新人潰しや、お貴族様から目を付けられるなんて、異世界ものでは良くある話だ。)

「人の社会は色々難しいんですねぇ」
「マティアおなかすいたー」
(はは…やっぱさっきの食事じゃ満足できなかったか…)
「ギルド登録がすんだら一旦村へ帰るからそれまで少し我慢な」


そしてガルに案内されギルドの受付カウンター向かった。
「あっ!?ガルさんこんにちは~!あれ?今日はいつものメンバーじゃないんですねっ」
元気な兎人の女性がギルドの受付担当のようだ。

「ああ、今日は冒険者ギルド登録登録したいっていう知り合いを連れてきたんだ」

「なるほどっ!見慣れない方々だと思いましたが。新規登録の方でしたか!私はこのギルドで受付兼案内役のエレナと申します♪まずはこちらの用紙にご記入ください。ペンはあちらの机に用意してありますのであちらで記入が終わりましたらまた私のところに来てくださいねっ♪」

手渡された紙を見て今さらだが焦るイザたち。
ガルに聞きながら書き込んでいくことに。というか書いてもらうことに。
そう、会話は成立していたので見落としていたが、イザはこの世界の文字が読めなかった。当然マティアも読めるはずがない。元銀狼の銀牙も人の社会の文字など読めるわけがなかった。

(しまった…いまはガルが居るからいいが…この3人じゃ文字を読めるものがいない…!リーンも連れてくるべきだった…)

ガルに聞きながら一通り記入を済ませた。
まずはマティアから記入した用紙を提出した。
「マティアさんですね~。ふむふむ。属性適正は…5種類!?」

「冒険者は見栄を張ってこそといいますが、流石にちょっとやりすぎですよ~w。とりあえずこちらの水晶に魔力を軽く流してください」
(えーっとマティアさんは人間族だし見たところ12~3歳?まぁ見栄を張りたいお年頃だよね~。わかるわかる私もそんな時期があったわぁ…)
マティアは言われた通り水晶に手を当て魔力を流した。
「…って、え?ええええ!?」
エレナは驚いて叫んだ。

「本当に基本全属性の適正が…つ、次はそちらの獣人の方!」
次は銀牙が用紙をエレナに手渡す。

「!?水と闇と光!?基本と特異属性に2種も適正が…!?いやいやまさか…」
エレナは少し驚き疲れている。

(やばい…!村じゃ普通だったから気にしてなかったけど適正が3属性でもレアなんだっけ。どうにかしてごまかせないかな~…全属性って知れたら大問題に…ガル!なんかいい案ない!?)
(無茶ですよ!自分で何とかしてくださいよ!!)
とりあえずガルに言って用紙の適正を2属性だけ書いてもらい、ごまかすことにした。
二人がこそこそしている間に銀牙の検査がおわった。

「ははは..,ほんとに3属性の適正が…で、では次そちらのお兄さん…えと、イザさんですね。水晶へ手をどうぞ…」
最初の元気はどこへやら、驚きを通り越してエレナは疲れている様子だ。
(こうなったら見えそうになったところで魔力を一気に注いで水晶を壊しちゃえば…!)

「えーっと、属性は…?あれ?」
エレナの反応が思った反応ではなかった。意外と驚いていない。

「?、どうしました?俺の適正なにか変でした…?」

「いや、こんな反応ははじめてで、魔力は確かにかなりの量あるようなのですが、属性が見えないんです。水晶がただ真っ白に発光していて…。…とりあえず魔力は測定されているようなので紙に記載してあるように火と風ということで登録しておきますね」
(基本属性2種も多少は珍しいけど前の二人よりは全然普通の人だ。よかったー!)
エレナは2種しか適正が無いと偽っているイザを信じて安堵していた。
(よかったー!何かよくわからないけどいい感じにごまかせたー!)
イザはバレずに済んだので安堵していた。

二人は何故か顔を見合わせて強い握手を交わした。
「これからよろしくおねがいします!」
「こちらこそっ!」


登録がすんだところでエレナから冒険者ギルドについての説明があった。
「ではギルドのシステムについて簡単に説明させていただきますね。クエストを受け達成後にギルドに完了報告をすることで報酬を受け取ることができます。受けた依頼には責任を持って臨んでください。クエストと冒険者ランクにはそれぞれGからSSSまでのランクがあり。現在の自身のランクより1つ上のランクまでの依頼を受けることが可能となっています。た だ し…!無理に背伸びをして受注することはお勧めできません」
エレナは人差し指をたてて、強調して十分に注意を促した。

「ランクを上げようと無理に上のランクの依頼を受注する方が居ますが依頼失敗の場合は場合によっては降格、さらに失敗が続くようならギルドカードのはく奪される場合があります。命があるならそれでもまだましです。悲しいことですが、自分の実力に見合わない依頼に挑んで命を落とす冒険者の方もいます…!」
エレナは先ほどまでピンと立っていた耳が折れて少し悲しそうな顔をしながら説明した。

「そして一般のクエストとは別にギルドや国から発注される緊急特別依頼というものがあります。この依頼にもランクは在りますが、緊急性の高い内容になっているため受注できるランクに制限はありません。極端な例を挙げるとランクSSの緊急特別依頼であってもGランクの冒険者も受けることは可能です。ただし緊急依頼はギルドからの支援も一切ないので決して無理はなさらないでください。その代わり緊急依頼はランク昇格条件を一気に達成することも可能です」

「何か質問はございますか?」
「いや、大丈夫です」
「ではこちらがみなさんのギルドカードがこちらになります。あちらにクエストボードがありますのでG~Fの依頼の中から好きな依頼を選んで見てください」
エレナが手で指す方を見ると奥のホールの壁に沢山羊皮紙が張り付けてある掲示板が見える。
「それと…ガルさんは奥でギルマスから話があるそうなのでこちらへ」
ガルはエレナに2階の奥へと連れていかれてしまった。

そしてギルド内がざわついていることにイザは気が付いた。
「3人とも複数属性持ちってマジかよ」
「なんかインチキしたんじゃね?」
「有名な魔術師の弟子とかかしら」
イザたちの登録時の話が聞こえていた冒険者たちがこそこそと会話している。
エレナがあれだけ騒いでいたので聞こえて当然ではある…。

(なんかやばい。この空気をどうにかしないと。とりあえずさっさとクエストを受けてこの場から離れないと…でもクエストボードの依頼の文字なんて書いてあるわわからねぇ!!ガルは連れていかれちゃったし…どうしよう)

そんなとき、後ろから聞き覚えのある声がした。
「おい、お前ら新人か?」
エルロンだ。
イザは文字が読めないこの状況で救世主が現れたので内心歓喜していた。

だが、エルロンに習ってここは他人のふりをする
「はい、たったいま冒険者登録をしたばかりです」

「そうか。なら俺の依頼に付き合え新人。俺はエルロン。この街では最強の冒険者だ」


「でたよエルロンの新人潰し!」
「あれで何人も辞めていったよな」
「でも今回の新人複数属性持ちばかりなんだろ?もしかして?どこかの衛兵や魔術師上がりとかなんじゃ?」
野次馬冒険者達の声が聞こえてくる。

「えっと、エルロンさん。俺らは今登録したばかりで高ランクの依頼は受けられませんよ?」
「チームを組んでチームリーダーが高ランクなら問題なく受けれるんだぜ。報酬もうまいしランク昇格条件も満たしやすい。理がある話だと思うがどうする?」
(なるほど!そういう裏システムが…!パワーレベリングみたいなもんか!ってこれ続けると面倒なことになりそうだし、甘えるのは今回だけにしよう。)

「わかりましたよろしくお願いします」

ガルがギルドマスターから呼び出されていたのは、ランクSに昇格したことで、国から発行される依頼を優先的に受けて欲しいという話をするためだったそうだ。そして王城に先日不審者が侵入したようなのでその調査依頼を頼まれたらしい。

Sランク越えのエルロンとガルがなりたて新人の3人と行動していても不審なので
丁度いいのでガルは任務ついでに一度王城へ向かうことになった。


4人はその後ギルドを出て、商業街を歩いていた。
「んでエルロン芝居はもういいだろ?その依頼はどんな依頼なんだ?」
「ああ、これはヒュージスライムの討伐依頼だ。地下水道で目撃されたそうだ。Aランクの依頼だがあそこは臭いし汚いから報酬がうまいんだ。んじゃ説明はしたぜ、俺はそこの酒場で飲んでるからあとはよろしく」
そういうとエルロンは酒場に向かって歩き出す。

「そういうことね。なんか都合よく協力してくれてると思ったら…」
「協力してるだろう?俺は文字も読めずに困っていたあんたらの代わりに依頼をうける。しかも高ランクの依頼だからランク昇格査定に大きく影響する。あんたらは俺の代わりに依頼をこなすことで俺は楽をできる。お互い理がある話だろう?まっとうに依頼を選んでたらG~Fランクなんて薬草集めやゴブリン討伐。何度もこなさないとランクアップは望めないぜ?」

「はぁ~わかったよ。でもAってことはタイラントボア以下ってことか…なら一人で十分か。銀牙よろしく~」
そういうとイザも酒場に歩き出す。
「え?」

「よろしく~」
「え?マティアさんまで!?」

「俺らはそこの酒場に居るから頑張ってね!」
「そ、そんな~!!」

そして暫くして。
酒場に銀牙が戻ってきた。

「終わりましたよ~…」
銀牙は下水の匂いを漂わせながら戻ってきた。

「うわっ!?銀牙くさっ!」
「イザさん酷い!一人で頑張ってきたのに!」

「ごめんごめん!すぐ清浄化してあげるから!」
イザはすぐに正常化の魔法で銀牙を綺麗にした。

「エルロンが言った通り倒したヒュージスライムの核は持ってきたけどこれでいいのか?」
「ああ、十分だ。討伐依頼の場合、討伐した証拠として一部を持ち帰る必要があるんだ」
「なるほど」


「それにしてもあれでAランクなのか?キラーラビットの方が強いくらいだけど?」
「なんだと?Bランクの魔物より弱かっただと?大きさと数は?」
「俺と同じくらいだったかな?魔力感知も使ってくまなく見て回ったけど1体しかいなかったぞ」

「ヒュージスライムにしては結構小ぶりだな。その程度ならCランク依頼のはずだ。依頼書にも複数のスライムの討伐と書かれている…妙だな。もう一度地下水道を確認してみるか。今度は俺も行く」

こうして今度は4人で地下水道へ向かった。



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