上 下
4 / 66
1章

3話 はじめての戦闘

しおりを挟む
「やっと砂漠をぬけたー!」
(無事砂漠を抜けれたけど、さすがにこの世界でも砂漠に暮らす生物はほとんどいないってことかな?)

「わーい!ご主人様。マティアお腹すいた」
「そうだな、んじゃもう少しだけ頑張ってゆるになる前にあの森の入り口まで行って野営とするか」
「はーい」
(そろそろ持ってきた食料も減ってきたし補給したいな。魔物とかに出会うのは勘弁だけど…森なら動物や果実やキノコなんかも手に入るかな?)


見晴らしのいい草原をそのまま進んで二人は日が落ちる前に森の入り口にたどり着いた。
(ここまで魔物はおろか生物らしき存在にも一切出会わなかったな?…まぁ出会いたくわないけど…)

「とりあえず夜の森を進むのは危険だし今日はここらで休憩することにしようか」
「わかった」

森の入り口で火を起こして暖を取る準備や野宿の支度をしていると何やら視線を感じた。

視線の感じる先に目をやると角が生えた兎が居た。

(あれは魔物?魔獣?それともただの動物?角が生えてるけど兎だしなぁ…)
そんなことを考えているといきなり兎がイザに向かって突撃してきた。
イザはすんでのところで兎の攻撃を回避した。

「うわっ!こいつ兎の癖に偉く好戦的だな!火が怖くないのかよ!?」
(素早いけど直線的、攻撃を避けるのは分けないな。でも避けるだけじゃ…。でも刃物とかの武器は持ち合わせていないし…。刃物…?そうか試してみるか…!)
兎が大勢を立て直して再度突進してくるのを見越して、イザは右手に魔力を集中させた。
次の瞬間、予想通り兎は一直線にイザに向かって突進してきた。
兎の突進を回避しつつ側面から兎に向けて風の刃を放った。
イザの放った風の刃は一瞬で兎の首を一太刀。兎は地に伏せた。
(風魔法…思ったよりも切れ味がえぐい…大きさは包丁程度だけど切れ味は日本刀って感じだな…)

「ふぅ。兎はおいしいって聞くからな、もってきた保存食も少なくなってきたし、食ってみるか」
「おいしいの?」
「ああ、鶏肉みたいな感じらしい」
「とりにく?」
「マティアはわからないか。とりあえずいつものモソモソよりうまいってことだ。」
「もそもそよりうまいっ!マティア楽しみっ!」
マティアは保存食よりもおいしいと聞いて目を輝かせている。エーテロイドは食事不要という話はどこへやら。

イザは手際よく兎をさばいていった。
(まさか異世界のこんなところでキャンプ飯動画を見ていたのが役に立つなんてな)

風魔法は便利なもので指に小さく纏いながらナイフの代わりにも出来た。
おかげでスムーズに処理が進められた。
一通り処理を済ませたが手元には鍋もなければ、調味料もない。
仕方がないのでとりあえず木の枝にさして焼いてみた。
「ほんとはせめて塩とか欲しかったんだけど、さすがに持ってないからな。まぁいつもの保存食よりはうまいだろう。ほら焼けたぞ」
「わーい、これが…お肉!」
二人は焼いた兎肉にかぶりついた。

「こ、これはっ!?」
「…なんと!?」
(意外とおいしい。調味料がないので味付けもせずに焼いただけだが、濃厚な肉汁のおかげで味付け無しでも案外いけるっ!)
「ご主人様!これモソモソより全然おいしい!」
「そうかっ。よかったなっ」
マティアはすごい勢いで完食した。

(まぁ保存食はうまさを求めてないだろうしな。しかし兎がいるってなると他の肉食動物も居る可能性はあるか…ってかあの兎自体も襲って来たってことは肉食なのか?ある程度用心しておくか…)

(それにしても火を焚いているのに襲ってきたってことはこの世界の動物は火を怖がらないのか)
「マティア。さっきの兎みたいなのがいつ来るかわからないから今日は交代で休んでみはろうか」
「また食べたいからすぐ来てほしい!」
マティアは涎を垂らしていた。
「おまえなぁ…w」

こうしてマティアと交代で夜は見張りをした。
心配とは裏腹に夜の間に襲ってくる動物は現れなかった。

そして翌朝。
「ご主人様」
イザの袖を引いてマティアが何か言いたそうにしている。
「ん?どうした?」
「昨日のお肉また食べたい!探しに行こう!」
森の方を指さし、マティアの目が輝いている。

(完全に肉の味に心を奪われているな…。初めて食べた保存食以外のまともな食い物だからかぁ…。ってか何も食わなくてもいいって言ってなかったか…?まぁ俺もまともな飯は食べたいし、魔法が使えればそんなに困ることもなさそうだから森の奥まで進んでみるとするか。)

「よし、わかった。今日は森の奥に進んでみようか。昨日の兎もまだいるかもしれないしな」
「マティアいっぱい狩る!」
(うん。なんか少女が嬉々として兎を食べるために狩るとか言うの見るとなんかこう複雑な思いがこみ上げてくるな…)
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

サフォネリアの咲く頃

水星直己
ファンタジー
物語の舞台は、大陸ができたばかりの古の時代。 人と人ではないものたちが存在する世界。 若い旅の剣士が出逢ったのは、赤い髪と瞳を持つ『天使』。 それは天使にあるまじき災いの色だった…。 ※ 一般的なファンタジーの世界に独自要素を追加した世界観です。PG-12推奨。若干R-15も? ※pixivにも同時掲載中。作品に関するイラストもそちらで投稿しています。  https://www.pixiv.net/users/50469933

王家から追放された貴族の次男、レアスキルを授かったので成り上がることにした【クラス“陰キャ”】

時沢秋水
ファンタジー
「恥さらしめ、王家の血筋でありながら、クラスを授からないとは」 俺は断崖絶壁の崖っぷちで国王である祖父から暴言を吐かれていた。 「爺様、たとえ後継者になれずとも私には生きる権利がございます」 「黙れ!お前のような無能が我が血筋から出たと世間に知られれば、儂の名誉に傷がつくのだ」 俺は爺さんにより谷底へと突き落とされてしまうが、奇跡の生還を遂げた。すると、谷底で幸運にも討伐できた魔獣からレアクラスである“陰キャ”を受け継いだ。 俺は【クラス“陰キャ”】の力で冒険者として成り上がることを決意した。 主人公:レオ・グリフォン 14歳 金髪イケメン

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

異世界で魔物と産業革命

どーん
ファンタジー
事業主とブラック企業に勤めるOLが異世界に転生! 魔物と会話するスキルを授かった主人公が魔物たちと社会を築き、集落を、街を、果てはお城まで作り上げる物語 魔物とホンワカ村づくりする内容を目指したつもりがどういうわけかシリアス気味になったり、先の方まで書き進めているうちに1話の内容が恥ずかしくなったりしている駆け出しです 続きが気になって頂けたらお気に入りして頂けると励みになります ※16万文字ほどの物語です

闇ガチャ、異世界を席巻する

白井木蓮
ファンタジー
異世界に転移してしまった……どうせなら今までとは違う人生を送ってみようと思う。 寿司が好きだから寿司職人にでもなってみようか。 いや、せっかく剣と魔法の世界に来たんだ。 リアルガチャ屋でもやってみるか。 ガチャの商品は武器、防具、そして…………。  ※小説家になろうでも投稿しております。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...