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17 バレてしまった (ライム視点)
しおりを挟むそれはタイミングが良かったのか悪かったのか分からない。よく知った気配と香りがして振り返るとそこにはガロンが居た。
俺達を探しに来てくれたんだな。
ガロンだけの様だから他のメンバーはもう村に戻っているんだろうか?
だけど良かった。これでローガン様も助かった。
そう気が抜けた時だった。
ビクっと身体中に静電気の様な痺れが走った。しまったまたいつもの時間になってしまったんだ。
俺の身体が変化してしまう時間帯に……。
しかもガロンとローガン様の目の前で……。
焦った所で俺の身体の変化は止められない。
身体はいつもの様に変化した。
身長は伸び身体は筋肉質に逞しく……ガロンにカムイと名乗っていた、ガロンのセフレだった俺の姿に。
気性も昼間の俺よりも攻撃的になってしまうが仕方がない。
二人とも俺を見て面白い顔をしている。ローガン様も驚いているが、何よりもガロンが驚き目を見開いている。
思わずスリープをかけようかとも思ったが生憎、バッチリ見られてしまった。
「カムイだよな。ライム君はカムイだったって事か? ええと、てーか逃げるなよ? 頼む。消えるのだけは勘弁してくれ」
そう、必死の形相で話すガロンに俺は身体の力を抜いて覚悟を決めた。
すぐ側まで駆け寄ってきたガロンに俺はガッツリとホールドされてしまった。
「ええと、よく分からないけど見た目が急に変わったけどライム君だよね。先生、一応先生なのですから第一声は俺達の心配が先でしょう? それに生徒とその距離感はまずいと思うんですが……」
ローガン様に指摘され流石に生徒に手を出している自覚があるのか気まずそうな顔をしたガロンが俺を離してくれた。
お貴族様なアシュレイ先生ではすっかりなくなり冒険者な態度に戻ってしまったガロンは俺に説明を求める様に俺を見つめている。
「ああ、ガロン久しぶり。勝手に居なくなって悪かった」
ガロンがそんなに俺が居なくなった事にショックを受けているなんて思わなかった。
そんなに俺の事を気にかけているなんて、思わなかった。
確かに昼間も一緒に行動したいとは言われていたが、俺の他にも女がいる様だったし、俺一人いなくなっても気にもしてないと思っていたのに……。
なんだか気恥ずかしくて嬉しかった。
「とにかく詳しい話は後にして、どちらが本当のお前なんだ? 皆と合流した方が良いと思うんだが……」
ガロンは身体は離してくれたが、俺の腕を握って離す様子はない。
よほど逃げられるのが嫌だと態度で示されている様で恥ずかしい。
ああ、そうだよな。ローガン様はもう大丈夫だろうけどココはまだ魔物の巣窟。早く村に帰った方が良い。だけど今の時間帯は俺は元の姿に戻れない。
「実は俺自身がどちらが本当の俺か分からない。時間でこの身体は変化するんだ。今から朝四時まではこの姿なんだ。出来ればこの事は誰にも知られたくない」
ガロンは黙っててくれるだろうがローガン様はどうだろうか。
「もちろん。何か事情があるんだろう? 君は俺の命の恩人なんだ。誰にも言わない」
そう言ってローガン様は俺に笑顔を見せた。
本来のローガン様はこんなにも温和なんだな。
本当に別人みたいだ。
可愛らしい笑顔を向けられ照れてしまった俺は頬が熱くなった。
そんな風に話す俺達を見てガロンが俺の腕を握ったまま引き目の前にはガロンの大きな背中があってローガン様の姿が見えなくなった。
「おい、ガロン、何やってんだ。お前らしくない」
「そんなん知るか。俺は今度お前を見つけたらもう誤魔化したりしないで言いたいこともやりたい事も我慢しないって決めてたんだ」
そう言うガロンは拗ねている様だ。
その様子は執着されている様で嬉しくて……鼓動がうるさいくらい早くなってきた。
「ローガン様すいません、ええと」俺はガロンの肩ごしになんとかローガン様と目線を合わせた。
「俺はとりあえず一人で村の宿屋にでも泊まります。こんな身体じゃ皆の前には行けないですし」
「そうだな。カムイ、じゃなくてライム君は軽症を負って近くの治癒院で休んでもらっていると皆には話す事にするか」
そう言いながらガロンは俺をローガン様から隠す様な仕草をする。
隙間からみえるローガン様もガロンの様子に呆れている様だ。
「そうしといてくれると助かる。俺はこの姿なら走って学院まで戻れるから」
そう言うとガロンが振り返って俺を覗き込んできた。
「そう言ってまた逃げる気じゃねーだろうな」
ガロンの俺を握る手に力が入る。
俺が居なくなる事を恐れているのが伝わってきた。
「逃げねーよ。もうバレちまったし、ちゃんと話すよ」
「とにかく村に着いたら泊まる予定だった家の裏手で待っていろローガン君を送り届けたらライム君の様子を見てくるとでも皆には言うから、朝には元に戻れんだろう? 宿には俺も一緒に泊まる。詳しい話を聞かせて貰わないといけないしな」
そう言いながらもガロンはまだ必死の形相だ。
「何処から突っ込んで良いんだか……先生、教師が未成年に手を出したら警備隊に捕まりますよ?」
そうか俺は未成年と思われているんだったガロンが捕まるのはまずい。そうじゃなくても今は俺は生徒でガロンは教師という微妙な立ち位置なんだ。
「ローガン様、コレも秘密にして欲しいんですけど俺、実は成人していて、実年齢は20歳なんです。それにガロンとの関係は合意で無理矢理なんかではありません」
俺の言葉にローガン様は言葉を失っている様だった。
あれ、そう言えば俺、今、余計な事言った?
関係があるなんて自分からバラしてしまった。
額から汗がでる。
「ふー、合意ならば野暮な事は言いません。先生、そうであったとしても今は教師と生徒なのは代わりありません。立場を弁えて下さいね」
そう言うローガン様はお兄さんの様に優しい目をしていた。
俺の今の見た目は25歳ぐらいに見えるし、あんな風に庇われるのも恥ずかしいな……。
そう思い俺は熱くなる頬を隠す様に俯いた。
「わっ分かって……いる」
本当だろうか……。
ガロンの俺の腕を握る掌の熱に動悸は更に激しくなった。
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