セフレに内緒で秘密の調査(この世界ってBLゲーム? 俺はモブだったりするのかな???)

やまくる実

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8 ローランド、様? (ライム視点)

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 俺は昼休みに屋上で一人弁当を食べていた。

 仕事として学院に通っているが、今日の昼ぐらいは一人、周りの事を気にせずに過ごしたかった。


 もちろん、調査するのに休み時間はフルに使う必要があるだろうが今、何も考えたくなかった。

 なのに……。

「こんにちは、えーとライム君、だっけ?」


 昼間気配を消してまで見に行った相手が空いた扉から笑顔で顔を出してそんな事を言っている。

 なんだか俺の中の第六感が、この人と関わると碌な事がなさそうだと告げていて、頭をリセットしようと思ってココに来たって言うのに……。


 屋上は元々、立ち入り禁止の筈だ。

 それに夜間に俺以外は入れない様に普通の人には見えない結界魔法をココにはかけていたのに……。

 この人はそんなモノ関係ないみたいだ。


 それに俺は自己紹介してないぞ、なんで俺の事を知ってるんだ?

 やはり転生者と言うだけあってコイツも特殊能力でもあるのか?

「はい……、何でしょうか? ローランド様」

 顔はあげられないまま、俺は気弱い後輩の振りをした。
「俺の事、なんか調べてる? てーか君も普通の平民じゃないよね……(不気味なんだよな……ゲームにはこんな奴いなかったし、ステイタスはそんなに高くないけど、なんか見るたびステイタスの値が違うし、何だろう? 何者なんだ?)」


 俺の居る位置とローランド様には結構な距離がある。
 小声で呟いた所は俺には聞こえないと思っている様だが、生憎俺の聴覚は並じゃないんだよな。

 というか、コイツが言うにはこの世界はやはりBLゲームの世界って奴なのか?

 あの乙女ゲームみたいなヤツか?


 そんで俺はどうも登場人物には居なかったって事かな?


 まあ多分、俺はモブだろうしな。
 ローランド様がそのBLゲームに詳しくて転生者だとしたなら、仲間にしとかないとやり難く、なるだろうな……。


 だけど、コイツがやな奴だったなら関わってしまうと更に良くない事が起こりそうだ……。


「あー、思い出した。君、トーマスの一人息子だよね? 家に何回か来た事あるよね?」

 ローランド様が驚いた様に自分の口元を押さえながらそう叫んだ。


 うわー、しかも、トトさんの事がバレている。

 そりゃそうだ。

 トトさんはダグラス伯爵家の使用人だ。
 しかもかなりの親バカで俺が幼い時から俺の姿絵を持ち歩いている。

 それは前世の写真ほどは精度は良くないが、俺は数回ダグラス伯爵家にお邪魔した事があるし、俺が会った事はなくても、見られていた事はある可能性もあるよな……?

「あれ? でも確か君って俺より年上じゃなかった? っけ? その制服は一年生だよね?」

「あっはい、まあ」

 どうやって誤魔化そうか……?
「ああ、デニスの使用人候補か何かで入学したのか? 親父からは何も聞いてねーな」

 なんか、急に言葉を崩してきたな……身内だし、自分の方が立場が上だと分かったからか……?

「ていうか、君、平民なのに魔術師科なんだなー、魔力あるんだ? それもトーマスから聞いてねーな、それならもっと早くから家で教育すべきだったかな……」


 そこまで知られてしまったのなら俺は別にしてはいけない事をしている訳ではないし、ローランド様は、手っ取り早く味方につけといた方が良いかもしれない。

 それにローランド様はゲーム内容を知っている様だった。

 ローガン様やマリン様はそのBLゲームの登場人物だった様だし、変にガムシャラに調べるより良いかもしれない。

 もちろん、ゲーム内容と事実は違う事もある。
 俺やローランド様の様な転生者がいる事でゲーム内容と全然違う状況が作られてしまう事もあるだろう。


 それにこの方を怒らせてしまうと、トトさんが大変な目にあうかもしれない。

「ローランド様って前世の記憶がありますよね?」

 そう俺が言うと一瞬驚いた様に眉を上げたと思ったら不気味な程にニヤリと笑った。

「なるほどなるほど、ライム君も転生者か……。俺、そう言うBL小説好きだわ。この世界のBLゲーム、好きだったけど、俺は元々、アニメでも漫画でも脇役が好きなんだよね。いいね、モブ受け。でもライム君は平民だし、ある意味ポジション的にはヒロインだよね? 隠してるみたいだけど、可愛い顔隠せてないし」

 いつの間に近くまで来ていたのか、俺の前髪を掻き上げてローランド様が目を合わせてきた。

 久しぶりに顔に触れられてビックリした俺は慌てて後ろに下がったが直ぐにフェンスにぶち当たった。

 そりゃ屋上の端で食べてた訳だし当たり前なんだが……。
 てーか手は振り払えたが、状況は変わってない、俺を上から囲い込む様に俺の頭上にはローランド様の両腕がある。
 まんま壁ドンな感じだ。

 なんかローランド様が強者で俺が弱者な感じだ。

 とりあえず、公爵様の依頼は話してしまおう。
 話して協力してもらった方が良いだろう。

 どうしてもダメな状況になっちまったとしたら、トトさんつれて、他国に逃げるまでだ。








「そうか……コレはゲームの裏設定なのか? てーか、ライム君の前世も日本なんだな。面白いな向こうでも知り合いだったらすげーよな」


 公爵様の依頼の話をして、前世俺が日本人で、ローランド様も日本人だった話を聞いた所で、次の授業の五分前の鐘がなった。

 運よく、ローランド様は俺の調査に協力して下さるみたいだ。
 思っていたより嫌な人じゃなくて良かった。

「ローランド様、ありがとうございます。また後で……」

 っと言っても22時以降は約束出来ない。
 流石に俺の身体の変化については話せない。

 あの姿の俺は身体的にも人恋しくなっていないとも言えない。

 もちろん、ガロン以外とそんな事する気はねーし、あんなデカイ俺にローランド様が妙な気を起こす事もないだろう。


 だけど……。
 念の為だ。

 寮で話すとしても、20時ぐらいまでにしとかねーとな。

「ああ、俺、自分は範囲外で壁で良かったんだけど……まあ、参加もありかもしんないね。寮部屋で待ってろよ」

 そう言って俺の頭を撫でてからローランド様は先に屋上を出て行った。


 ローランド様の言っていた意味は分からないが、俺を見る最後の目つきが獰猛な肉食獣の様な顔で、……ちょっと怖かった。

 
 

 


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