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5 運命の出逢い (ガロン視点)
しおりを挟むアイツと初めて会ったのは俺が死を覚悟した時だった。
あの日はとても運が悪くて、そして……すごく幸運な日だった。
今にも俺を食おうとした魔物の前にアイツは現れた。
あまりの素早さに何が起こったかも分からなかった。
突然現れたアイツの姿に、俺は柄もなく呆けてしまった。
今にも死にそうな場面であったにも関わらず、俺はアイツという存在に意識を持っていかれた。
アイツはそれぐらいオーラがあって、そして何より美しかった。
光加減でキラキラ光る金髪に見えるが淡い緑色の艶やかな髪、身長は俺より高いくらいか?
くっきりとした二重瞼だが、切れ長でタレ目、薄めの服装からしっかりとした筋肉が浮かび上がっている。
何故だか端々が思い切り破れているがそれが余計に色っぽくみえる。
俺は男色の気もあったが元々女性を好んでいた。
腰の細っこい巨乳だけど清楚系な女性が好きだった。
男性であっても可愛らしい中性的な子が好みだった。
だけどそんな自分の性思考がひっくり返ってしまう程アイツの表情や存在は俺の身体をゾクゾクさせた。
まさに一瞬の出来事だった。
一瞬の出来事なのにあまりの神々しさで俺はポカンと口を開けたまま、目の前の光景に見惚れてしまった。
魔物がフワーと浮き上がり、目の前から消えたかの様に思えた。
凄まじい風力なのに、周りの木々達を守っているかの様に光の玉がフワフワと輝いている。
今のはどういう現象だ?
とにかくこんな優しい魔術は初めてだ。
いや、コレは魔術じゃない。
魔法だ。
魔術でこんな現象が起きる、起こせるなんて聞いた事がない。
魔法と言うのを使う事が出来る人物自体、伝説の様な存在だと言われていて、俺も今まで見た事はない。
だけど俺はその現象を見て、魔術じゃなく魔法だと漠然とそう思った。
誰の命も奪わず。
守るだけの魔法。
だけど……こんなの、普通の奴では使いこなせない。
俺はA級冒険者だが、こんなの魔法ではなく魔術だったとしてもS級ですら使いこなせるだろうか?
そんな事を考えていたがアイツは遠慮も無しに俺を胸の中に抱え上げた。
所謂お姫様抱っこというやつだ。
丁度俺は元々足が悪いのに、今回ヘマをして更に深手を負ってしまっていたから、恥ずかしいがこんな風に運ばれるのは助かった。
だが、こんな扱いをされた事は初めてだ。
街に戻りその人から薬を貰って俺は足の傷を回復できた。
と言うか、元々の古傷まで治してしまった。
この傷は回復薬や治癒師でも治せなかった傷だ。
どういう事なんだ?
それにこの薬、味も良いし、回復量が半端ない。
俺が知っている回復薬とは全然違う。
多分、結構な値がするだろうが借りはあまり作りたくない性分なんだが、金を渡してもすぐには受け取ってくれないかもしれないな。
しかし、動きが鈍くなる原因になっていた足の古傷を治してもらったのは冒険者として、寿命を伸ばしてもらった事にも等しい。
昔の様にまた思い切り動く事も可能かもしれない。
俺は戦いの後と言うのもあったし、かなり興奮していた。
そいつとこれきりの関係にしたくなかった俺は、奴を連れ込み宿に連れ込んだ。
アイツも満更でも無い様な顔をしていたし、このチャンスを逃す手はないと思った。
コイツを見た時から俺は何だか身体が熱くて落ち着かなかった。
獣人族はそういう運命の番みたいなのがあるみたいだが生憎俺は普通の人族だ。
だけど……こんな気持ち、今までなった事がない。
命が危なかった事と助けられた事とか吊り橋効果みたいな感じか、何かなのか?
とにかく俺はアイツが欲しいと思った。
あの周りにいる奴ら全てを支配するかの様な雰囲気、どう見てもアイツはタチだと思うが、俺自身もバリタチだ。
いや、コイツに触れられるなら抱かれても良いとも思ったが、それよりもコイツの中に入りたい、そう思ってしまった。
部屋に入り、目を合わせるとアイツから目線を離せなくなった。
吸い寄せられるように、奴の唇を奪った。
アイツはキスに慣れていない様だった。
俺は奴の口の中をクチュクチュと舐め回す。
コイツの息づかいが伝わってきて身体中が興奮する。
苦しそうな様子のコイツが息継ぎしやすい様に時折り舌を開放しながらもコイツの口内を味わった。
慣れていない様子が最高に可愛かった。
目元が潤み、少し力が抜けた様で俺はアイツの腰を持ち支えた。
先程まで全てを支配しているかの様に自信満々に見えていたコイツが俺の胸の中にクタリと身を任せている。
圧倒的強者の様な雰囲気を出していたのにこの可愛さ、ギャップに俺の心は全部持ってかれた。
やっべー、可愛すぎる。
絶対コイツを手に入れてやる。
「思ったより慣れていないみたいだな。俺が教えてやるよ」
そう言って俺はベッドに押し倒した。
経験はなかっただろうにコイツは超絶色っぽく、アナルの硬さからいって、中も初めてだっただろうに締まり具合が最高だった。
怪我しないようにクニクニと解すと美味しそうな綺麗な色のアナルが俺を誘う。
快感に弱いのか初めてだろうにアイツは俺との行為に夢中になっている様だった。
もう他の男や女が抱けないと思ってしまうほど、俺はヤツとの行為に夢中になり、絞り取られた。
ちゃんと後始末して、コイツの寝息を聞きながら俺はコイツに出逢えた事に感謝した。
明日起きたら連絡先と名前を聞こう、そう思った。
だけど、目を覚ました時にコイツは消えていた。
俺は慌てて追いかけようとしたが、何処にも見当たらない。
メモすら残していない。
俺はアイツにこれからも逢いたいと思っていたのに……アイツは違ったのか……?
次の日、俺は何度も冒険者ギルドに顔を出した。
クエストなんかやってられるか、どうせ金なら腐る程ある。
欲を出したり運が悪くなきゃ、俺は昨日みたいなミスはしねー。
それよりもだ。
夜、もう一度ギルドに顔を出した時、空気がいつもと違った。
皆の目がある箇所に集中している。
綺麗すぎる、男、金髪にも見える淡い緑色の髪が綺麗すぎる、超絶色っぽいアイツが、そこに居た。
他の奴らに取られない様にまた連れ込み宿へとアイツを連れてった。
独占欲はない方だと思っていた。
それ以前に俺はあまり他人に興味がなかった。
だけど、コイツだけは手放したくないと思って俺は慎重に言葉を選んだ。
独占欲丸出しにしてしまうとコイツは簡単に逃げちまうかもしれねー。
俺は余裕あるふりをしながらなんとか次に逢う約束を取り付けた。
それから2年。
順調にではないけれどなんとかセフレ関係は続いていた。
だけど俺は最近、不満を抱えていた。
アイツは何度言っても昼間に逢ってくれねー。
俺に他にも女がいる様なそぶりをしてもヤキモチすら妬いてくれねー。
住んでる場所すら教えてくれねー。
何を言っても、声を俺が荒げたとしても言い返してもくれねー。
俺は焦っていた。
最近は逢える頻度も減った。
俺がギルドに顔を出す日とズレてしまっているかもしれない。
それとも、俺じゃ物足りなくなってしまったのか?
昨日は言い過ぎてしまった。
だけど……この日からアイツに逢えなくなるなんて思ってなかった。
もっとアイツの特別になりたくて、焦りすぎてしまった。
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