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2 俺は一応、20歳です。 (ライム視点)
しおりを挟むその依頼とはご子息様のローガン様について……。
男爵令息に夢中になっていて様子がおかしいらしい。
普通にただ惚れているだけという可能性もあるが、その男爵令息には今、良くない噂も流れているらしい。
実際の所、どうなのか調べて欲しいとの事だった。
ローガン様には婚約者もいるそうなのだが、このままでは余り外聞も良くないとの事。
その足がかりとして俺に今年、新入生として通って欲しいと言われてしまった。
公爵様は調べる事もしないで、むやみやたらに引き剥がしたりせず、ちゃんと調べようとなさるなんて、ご子息様の事をちゃんと考えられておられるんだなと、俺は感心した。
でも、俺なんかに頼まなくても公爵家の使用人を送り込むとか他にもやりようはありそうなのに……。
お貴族様というのは周りに敵が多く、信用出来そうな者がその年頃の者の中に居ないらしい。
警備の者達では入れない場所も多くあって調べようにも一筋なわではいかないのだとの事。
と言っても公爵様は俺の事は知りもしないだろうにどうしてそんなに信用してくださっているのか……。
それになんて言っても……おいおい……俺だって、今年20歳。
学園生はいくつぐらいか聞いてみた所、だいたい15から18歳までらしい……。
俺は学校には通ってはいないが、読み書き計算は一通りトトさんに習っているし(もちろん前世の記憶もあるから物覚えも悪くはないし、子供の頃は逆に知識を言いすぎないように注意しなければならなかった)トトさんが伯爵家へ仕事に向かっている時間帯は家事をしながら、空いた時間は図書館に行ったりしていた。
冒険者登録は15歳以上で登録することができたから、独り立ちをする為に15歳になってすぐ登録をした。
15歳になる前も積極的に森に行き薬草を仕入れたりして図書館で学んだ知識や自分の視覚、嗅覚、技術触覚などを使って独自で薬を作ったりしていた。
って俺、新入生として入るって事は15歳や16歳の奴らと一緒に授業を受けるという事か……?
それは無理があるだろう?
見た目は誤魔化せたとしたって……。
それに俺は今まで普通に学校に通った事がないんだ。
もちろん仲の良い友達もいない。
冒険者としても、薬屋として開業した今でもたまに活動することもあるが、基本ソロとしてだし、率先して魔物を狩ったりする訳じゃない。
つまり世間の常識に疎いということだ。
トトさんにそう言いたかったが、こうして公爵様からお願いされている以上、下手な事が言えなかった。
断れる事柄ならココにお連れする前にトトさんが断っているだろうし、というか今、話している内容はトトさんも予想外なのかもしれない。
その学園は騎士科、魔術師科、魔道具科、薬学科、総合科とあった。
文官を目指すものや将来領主になるものは総合科を受けるらしい。
俺が入るのは普通、薬学科だと思うのだが何故か魔術師科に入学して欲しいと言う。
俺は魔法が使えないのに……。
実技はどうすれば良いんだ……。
まあ使えないが能力がない訳ではない。
年齢に関しても、俺は本当は20歳だが、年齢は自分から言う必要はないらしい。
俺が本当は使う事が出来る魔法は魔術とはちがうらしい。
この国ではほとんどの者が魔法は使えず、魔法自体は見た事ない伝説的な種族が使うモノでこの国で使っていた俺が魔法と誤解していたモノは魔術だったらしい。
平民は知識が無く魔術を使うのも、魔道具を通して少しだけだった為、俺はその違いを知らなかった。
俺は魔法を使う能力はあるが、ここで普通に魔法を使う事は出来ない。正確には、ここで使うと危ないんだ。
まあ、俺は無傷だけど……。
つまり今の俺ではコントロールが少しばかり難しいんだ。
だけど、この国で皆が使っているのが魔術ならば俺は魔法のコントロールが上手く出来なくてもなんとかなるのか?
むしろ魔術を学べば、この国でももっと暮らしやすくする事もできるのか?
なんだか魔術が学べるなら美味しい話の様な気もしてきたが、俺は騙されているんだろうか?
美味しい話は危ないと言うしな……。
それに店も軌道に乗り始めたのに、休んでしまっては顧客も居なくなってしまう。
そんな事を思い言葉を失ってしまった俺だが、学園の卒業後の仕事は責任を持つし、学園に行く間も使用人程度の給料も頂けるし、学費も全て公爵様が払って下さるらしい。
ますます美味しい……。
しかし……。
公爵様言わく学園に入ってしまうと親はあまり介入できないらしい。
ローガン様は18歳、今年騎士科の三年生らしい。
そしてその例の男爵家の令息が魔術師科らしい。
男爵令息は二年生らしいが同じ科なら能力によって同じ授業を受けることもあるという。
そんな風に話はまとまってしまったが俺にとっては不安しかなかった。
まあ仕事と言っても普通に学校に通い、調査をして報告をするだけ……ある意味本当にとても美味しい仕事なのかもしれない。
どんな風に卒業した後の仕事への責任を持ってくれるのかは分からないし不安ではあるが……。
今はこうして店を開ける準備をしているがこれはある意味現実逃避だ。
何はともあれ一平民が公爵様のお願いを断る事なんて出来ない。
そんな風に思っていたら本日一人目のお客様が来た。
三軒隣の防具屋の元店主、今は息子さんが店を継いでいるらしく、隠居中の75歳。
腰痛が酷いらしく湿布薬をよく買いにくる。
安価の薬は緩和は出来るが完治は無理だ、俺が学園に通い出すとこうして買いに来て下さるお客様も困るかもしれない。
本日、特別セールとしてかなり多く更に安価で売りつけはしたが……。
もちろん完治できる薬が作れない訳ではない。
それはそうなのだが、この国の他の薬屋との価格のバランスを崩す訳にはいかないし、俺は細々と安定した生活を続けていく為には目立ちたくなかった。
今回、この仕事を受けるのはかなり危険なのかもしれない。
俺の秘密がバレでもしたら、それこそ今までの様には生活できなくなるかもしれない。
だけど……平民はやはりお貴族様には逆らえない……。
トトさんが仕えているのはダグラス伯爵家、俺にお願いして下さっているアボット公爵様は更に位が上だ。
命令されなかっただけ、良い方だ。
俺は平民だから命令されたも同然だけど……。
学園といえば、幼い頃一緒に遊んだダグラス伯爵家のご子息は丁度、今年16歳だったかもしれない。
もしかして同じ学園で会う可能性があるんだろうか?
と言ったって、もう、忘れられているかもしれない。
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