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第四章 魔王VS勇者 (片想い相手に似た男VS推しキャラに似た男)
第34話 魔物の正体 (ショウ視点)
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「やはり、お前は俺から離れようとしていたのか? この髪色はなんだ? 逃げられると思うなよ?」
リュウの冷たい声とその雰囲気に少し胸の奥がゾクッとした。
俺は優しく包み込んでくれる様な人が好きだ。
だけど前世の頃から心の奥底に少しだけ支配されたいという欲があった。痛いことは大嫌いだが少しだけMっ気があったんだ。
これも俺が前世で親友達に秘密にしていた事だった。
今世でその気持ちは封印されていたのかそんな欲求はなかった。
今世は黒髪な事もあり魔力なしという事もあって、俺は周りの人達に、虐げられてきた。
虐げられてというと大袈裟かもしれない。殴られたりはしていないのだから。
人々は俺に触れることも嫌だったのだから……。
そんな事もあり俺は優しくされるとその相手をすぐに好きになってしまう傾向にある。
もちろんそれは恋愛的な意味ではない。
俺なんかを恋愛の対象に思ってもらえるなんて、そもそも思っていない。
タイアンさんからこのイヤーカフを頂くまでは、人に優しくしてもらうというシチュエーションさえもなくて、そういう意味でも幼い頃は唯一、俺に優しいリュウは特別だった。
リュウは俺以外にも優しかったけどあの頃は俺に特別優しい様に感じた。
そして一人で暮らす様になってから人との関わりも減り、そんな時に出逢ったのがタイアンさんだった。
あの時、どうして自分の理性が効かなくなったのか……。
色々と前世を思い出してしまった今の俺ならば分かる。
リュウにこうして押し倒されて、その事にゾクッとし、上手く抵抗できない俺が言っても説得力はないかもしれないが……。
俺はタイアンさんの事が好きだ。
前世の片想い相手に似ているから、だから惹かれていると思っていた。
久しぶりに優しくされたからすがっているんだとも思っていた。
だけど……また逢いたいと思っている。
逢えなくて辛いと思っている。
何処にいるか分からなくて辛い。
タイアンさんは、口調はそっけなく冷たい。
だけどその中に滲み込む様な優しさが有る様に思う。
あの時、自分の脱いだ衣服もちゃんと丁寧に畳んでベッドの隅に置いていた。
俺の話も嫌がらずに聞いてくれて、冷たそうに見えて根が真面目で優しいのだ。
って、俺はリュウに押し倒されている状況で、どうしてこんな事を悠長に考えているんだ?
やはりどんなに冷たくされても怖い顔で見つめられてもリュウに危機感なんか感じない。
冷たい綺麗な表情に、怒っている様な声に前世の性癖が刺激されるが……リュウは俺の中でもやはり家族という位置付けなんだろう。
そうだ。俺は今、リュウに押し倒されているんだ。
思わず前世の俺の性癖に思考が乗っ取られそうになりそうな俺だったのだが、リュウが質問に答えない俺に、焦れた様に顔を寄せてきた。
このままではリュウにキスをされてしまう。
リュウと幼い頃、キスもいっぱいした。
だけどそれはもちろん口ではない。
頬だったりオデコだったり。
それは家族への愛情表現に近い。
俺からもリュウにキスを仕返したりもしていたけどそれはもちろん口ではない。
リュウの方が俺の事を守ってくれてはいたけれど俺は何処かリュウの事を弟の様に思っていたから、あれは今考えると弟に向けるキスだった。
リュウの金髪がキラキラ揺れる。
前世の推しキャラに似た端正な顔がゆっくりと俺に近づいてくる。
その時だった。
カシャンという音と共に窓から大きな犬が飛び込んできた。
飛び込む事を阻んでいた窓は粉々に砕け散っていた。
飛び込んできた犬に俺は見覚えがあった。
その犬は、俺が悩んで立ち寄っていた花畑の丘にふらっと現れるあのワンコだ。
まだ長い付き合いではなかったけど、あの花畑でそのワンコを抱きしめたらタイアンさんを思い出して、しかも香りもタイアンさんに似ている気がして、俺にとって特別な存在だった。
最近、会えないから心配していた。
だからそのワンコが飛び込んできた時、俺はびっくりしたと同時にタイアンさんとのキスを思い出した。
何故だと思うが突然あの時のキスが頭の中を支配したんだ。
あの時、俺は完全に理性が飛んでいた。
キスした時、なんだかタイアンさんと何かが繋がった様な気がしたんだ。
気持ち良すぎて、何も考えられなくなってそんな風に思っていた俺は、やはり唇のキスはタイアンさんとじゃなきゃ嫌だと強く思いリュウの身体を押し退けようとした。
駄目だ。
リュウの身体はびくともしない。
ワンコを見ながらリュウは舌打ちをした。
ワンコが急に苦しそうにもがき始め、だけど俺がリュウから逃げようと抵抗していたのが見えたからか、俺が嫌な思いをしている様に見えたからか、ワンコは苦しみながらもリュウに飛びかかる。
リュウは飛びかかってきたワンコから逃れようと俺の上からどいた。
その時ワンコの身体が……苦しみながらもどんどん大きくなっていくのが見えた。
毛も長く、身体も大きくなっていく。
牙も鋭くなり、とても強そうな魔物の姿になってしまった。
そして、おかしな事にその異常な状況なのに俺は恐怖を感じなかった。
怖いはずなのに、その魔物が優しそうに見えた。
そして、あの俺の家(洞窟)の前に倒れていた魔物にとても良く似ていると気がついた。
脇腹にうっすらとキズがある。
あれはあの時のキズなんじゃないだろうか?
そして何故だかそのワンコが、その魔物の様な者が俺にはタイアンさんに見える。
タイアンさんとダブって見える。
俺の目にはタイアンさんの端正な顔、シルクの様に綺麗な紺色の髪がその魔物に少しズレた様に残像の様に見えたんだ。
その時、俺の頭の中で繋がった。
あの時の、キズを負った魔物はタイアンさんだったんだと……。
それは俺の中で確信に近かった。
リュウの冷たい声とその雰囲気に少し胸の奥がゾクッとした。
俺は優しく包み込んでくれる様な人が好きだ。
だけど前世の頃から心の奥底に少しだけ支配されたいという欲があった。痛いことは大嫌いだが少しだけMっ気があったんだ。
これも俺が前世で親友達に秘密にしていた事だった。
今世でその気持ちは封印されていたのかそんな欲求はなかった。
今世は黒髪な事もあり魔力なしという事もあって、俺は周りの人達に、虐げられてきた。
虐げられてというと大袈裟かもしれない。殴られたりはしていないのだから。
人々は俺に触れることも嫌だったのだから……。
そんな事もあり俺は優しくされるとその相手をすぐに好きになってしまう傾向にある。
もちろんそれは恋愛的な意味ではない。
俺なんかを恋愛の対象に思ってもらえるなんて、そもそも思っていない。
タイアンさんからこのイヤーカフを頂くまでは、人に優しくしてもらうというシチュエーションさえもなくて、そういう意味でも幼い頃は唯一、俺に優しいリュウは特別だった。
リュウは俺以外にも優しかったけどあの頃は俺に特別優しい様に感じた。
そして一人で暮らす様になってから人との関わりも減り、そんな時に出逢ったのがタイアンさんだった。
あの時、どうして自分の理性が効かなくなったのか……。
色々と前世を思い出してしまった今の俺ならば分かる。
リュウにこうして押し倒されて、その事にゾクッとし、上手く抵抗できない俺が言っても説得力はないかもしれないが……。
俺はタイアンさんの事が好きだ。
前世の片想い相手に似ているから、だから惹かれていると思っていた。
久しぶりに優しくされたからすがっているんだとも思っていた。
だけど……また逢いたいと思っている。
逢えなくて辛いと思っている。
何処にいるか分からなくて辛い。
タイアンさんは、口調はそっけなく冷たい。
だけどその中に滲み込む様な優しさが有る様に思う。
あの時、自分の脱いだ衣服もちゃんと丁寧に畳んでベッドの隅に置いていた。
俺の話も嫌がらずに聞いてくれて、冷たそうに見えて根が真面目で優しいのだ。
って、俺はリュウに押し倒されている状況で、どうしてこんな事を悠長に考えているんだ?
やはりどんなに冷たくされても怖い顔で見つめられてもリュウに危機感なんか感じない。
冷たい綺麗な表情に、怒っている様な声に前世の性癖が刺激されるが……リュウは俺の中でもやはり家族という位置付けなんだろう。
そうだ。俺は今、リュウに押し倒されているんだ。
思わず前世の俺の性癖に思考が乗っ取られそうになりそうな俺だったのだが、リュウが質問に答えない俺に、焦れた様に顔を寄せてきた。
このままではリュウにキスをされてしまう。
リュウと幼い頃、キスもいっぱいした。
だけどそれはもちろん口ではない。
頬だったりオデコだったり。
それは家族への愛情表現に近い。
俺からもリュウにキスを仕返したりもしていたけどそれはもちろん口ではない。
リュウの方が俺の事を守ってくれてはいたけれど俺は何処かリュウの事を弟の様に思っていたから、あれは今考えると弟に向けるキスだった。
リュウの金髪がキラキラ揺れる。
前世の推しキャラに似た端正な顔がゆっくりと俺に近づいてくる。
その時だった。
カシャンという音と共に窓から大きな犬が飛び込んできた。
飛び込む事を阻んでいた窓は粉々に砕け散っていた。
飛び込んできた犬に俺は見覚えがあった。
その犬は、俺が悩んで立ち寄っていた花畑の丘にふらっと現れるあのワンコだ。
まだ長い付き合いではなかったけど、あの花畑でそのワンコを抱きしめたらタイアンさんを思い出して、しかも香りもタイアンさんに似ている気がして、俺にとって特別な存在だった。
最近、会えないから心配していた。
だからそのワンコが飛び込んできた時、俺はびっくりしたと同時にタイアンさんとのキスを思い出した。
何故だと思うが突然あの時のキスが頭の中を支配したんだ。
あの時、俺は完全に理性が飛んでいた。
キスした時、なんだかタイアンさんと何かが繋がった様な気がしたんだ。
気持ち良すぎて、何も考えられなくなってそんな風に思っていた俺は、やはり唇のキスはタイアンさんとじゃなきゃ嫌だと強く思いリュウの身体を押し退けようとした。
駄目だ。
リュウの身体はびくともしない。
ワンコを見ながらリュウは舌打ちをした。
ワンコが急に苦しそうにもがき始め、だけど俺がリュウから逃げようと抵抗していたのが見えたからか、俺が嫌な思いをしている様に見えたからか、ワンコは苦しみながらもリュウに飛びかかる。
リュウは飛びかかってきたワンコから逃れようと俺の上からどいた。
その時ワンコの身体が……苦しみながらもどんどん大きくなっていくのが見えた。
毛も長く、身体も大きくなっていく。
牙も鋭くなり、とても強そうな魔物の姿になってしまった。
そして、おかしな事にその異常な状況なのに俺は恐怖を感じなかった。
怖いはずなのに、その魔物が優しそうに見えた。
そして、あの俺の家(洞窟)の前に倒れていた魔物にとても良く似ていると気がついた。
脇腹にうっすらとキズがある。
あれはあの時のキズなんじゃないだろうか?
そして何故だかそのワンコが、その魔物の様な者が俺にはタイアンさんに見える。
タイアンさんとダブって見える。
俺の目にはタイアンさんの端正な顔、シルクの様に綺麗な紺色の髪がその魔物に少しズレた様に残像の様に見えたんだ。
その時、俺の頭の中で繋がった。
あの時の、キズを負った魔物はタイアンさんだったんだと……。
それは俺の中で確信に近かった。
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