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第二章 新たな始まり
第17話 魅惑のマッサージ練習 (タイアン視点)
しおりを挟むいつ俺の背に触れてくるのかと、うつ伏せになったまま、今か今かと待ち構えていたが動き出す気配がしない。
不審に思った俺は少しだけ身体を起こし顔だけ軽く振り返った。
ショウは顔を赤くしたまま固まっていた。
ベッドに近寄ってきてもいない。
どうしたのだろう?
今日は風呂に入った訳でもないのにこんな寒い所でのぼせる訳でもないだろうし……。
また体調を悪くしてしまったのだろうか?
それとも、俺に触れたくなくて困っているのだろうか?
もしや俺が魔王の息子だと気づいたのだろうか?
いやいや、俺の顔はまだ地上の人々には知られてはいないはずだ……。
「なんだ? 俺が練習相手じゃ不満か?」
優しく問いかけたいのに俺はこんな風にしか聞けない。
こんな風に言ったら、怖がらせてしまうだけなのに……。
「い、いえ、そんな事ないです……う、嬉しいです」
優しいショウはそう言ってくれているが今のは無理ありそう言わせた様なものだ……。
だけどショウは俺相手にマッサージとやらの練習をしようという気になったようだ。
俺はもう一度うつ伏せになった。
「失礼します」
緊張したように言ったショウがベッド脇に近寄って来た事が分かった。
側にきたことでショウ独特の、側にいたら眠気を誘ってきそうな優しい温かく甘い香りが鼻をくすぐる。
今は獣の姿ではないし、魔物の姿でもない。
嗅覚は地上人よりも上ではあるが彼の香りだけは特に俺の鼻を刺激する。
安心して眠くなってしまいそうなそんな香りがする中に蓋を開けると奥深くに性的魅力を含むような甘い毒の様なそんな魅惑的な香り。
こんな香りをさせているだけでマッサージをされる男共に襲われてしまう危険性が無いだろうか?
そんな事を考えていたら遠慮がちにショウが俺の背に触れてきた。
ショウの掌の熱が俺の背に伝わりじんわりと暖かい。
素肌に直接触れる訳ではないから俺が獣の姿だった時ほどは彼の能力は発揮されないかもしれないが、俺の中に残っていた邪気を含んだ魔力が消え去り穏やかな気を含む魔力が俺の中に生まれていく。
なんだか身体の毒と心の毒を両方吸い取ってくれているような心地よい気持ちが胸いっぱいに広がってくる。
そして問題のマッサージの方なのだが初めはぎこちなかった手つきも時間をかけることで次第に慣れてきたのか、そう、気持ち良いのだ。
彼の指が……、掌が俺の身体を丁度良い力加減で解していく。
優しく撫でる様に、時折り力を入れて、毒素を流してくれる。
俺の身体の中の魔力がいい感じに緩和されていく。
なんだか気持ち良すぎて俺の息子がふくらんできてしまいそうだ。
なんて実際はもう勃起してしまいそうなほど興奮していた。
しかし俺は彼のおかげで自分の精神のコントロールも容易くできるようになってきている為、勃起しそうな自身を抑えることなんて容易い。
なんて嘘を言った。
彼は邪気を吸い取る事はできる様だがこういう性的なものは別らしい……。
俺は興奮してしまいそうな自分を、自身の主張したがっている息子を強靭な精神力で必死に抑えていた。
「随分、こっていますね。最近、お仕事忙しいんですか?」
「ああ、まあな」
ショウは俺の仕事は冒険者か何かだと思っているのだろうか?
こちらの国の事はまだ情報不足でどんな仕事があるとかは知らない。
現在俺は無理やり親父に地上へ武者修行に行かされているが、多分、魔王を引き継ぐと細かい書類仕事や会議なんかにもでなくてはならなくなるだろう。
魔王だからって、偉そうに座っているだけが仕事ではない。
むしろ魔王しかできない仕事の方が多い。
親父は俺が幼い頃から忙しく働いていた。
一緒に食事をした記憶もあまりない気がする。
どんな国も上に立つものは忙しい。
良い部下を持つとそうでもないのだろうが……。
いい国を作るためには良い部下を作ること良い仲間を作る事が必要不可欠だろうが、何しろ地上には親父以外は出向いていくと魔物になってしまう者の方が多いからそうも言ってられないのだろう……。
そういう事もあって親父は早く俺に仕事を覚えて欲しいと思っているのだろうし、早く俺に魔王を継がせたいのだろう……。
真面目な事を考えていたら随分冷静になってきた。
ショウの掌は気持ちが良いから気を抜くとすぐに色々なものが反応してしまいそうだ。
本当は俺がショウの体に触れたい。
がそんな事をしてしまっては俺の理性は止まらない気がする。
この前温水の中でショウが気を失っている時、あの時はショウの体が冷たくなってきていたからそれどころではなかったが、眠っているだけだったら、何をしてしまっていたか分からない。
服を脱がせる前なんて、濡れていたから色々なものが透けて見えて余計にエロかった。
おいおい、俺よ、思い出してはダメだ。
冷静さを保ちやっと息子を落ち着かせたのに……。
マッサージをしているだけなのになんだかショウが俺の身体を圧す時、少しショウの息が荒いように聞こえてしまう。
俺の声も圧されていると多少漏れる。
何もやましい事をしている訳ではないのにやましいことをしている気分になってしまう。
考えない、無だ無になろう。
よし親父の顔でも想像すれば気持ちも萎える事だろう。
そんな風にしながらよからぬことを想像してしまう自分を嗜めた。
ショウは足裏や掌、肩、色々な所をほぐしてくれた。
実際俺の身体は疲れていたらしい。
魔力は質の良いものに変わっていたとしても、やはりココ(地上)は初めてきた場所だ思っていたよりも身体に負担がかかっていたようだ。
「どうでしょうか? 習ったこと一通り試させて頂きました。痛かったりしなかったでしょうか?」
ショウが遠慮がちに聞いてきた。
「いや、身体が軽くなった気がするよ。ありがとう。先程言っていたお礼と言うのはコレで十分だ。貰いすぎている気さえする」
「とんでもないです。ありがとうございます。これでお客様に触れることも怖くなくなった気がします」
そう言ってショウが笑った。
笑っていない時も初めて会った時よりも少しずつだが表情が柔らかくなった気がする。
ショウのその可愛い笑顔に俺は……しばらく見惚れてしまっていた。
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