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第115話 大き過ぎる彼の能力(プディ視点)
しおりを挟むケージの中のちょっと高い位置で比奈ちゃんの部屋の窓のカーテンの隙間から見える月を眺めながら私はまどろんでいた。
もう比奈ちゃんは眠っているみたい。
温かそうなふんわりとしたお布団に眠っている比奈ちゃんの胸の辺りが小さくゆっくりと上下に動き、規則的な寝息も聞こえる。
うなされても居ないし、良い夢でも見ているのかも。
今日は本当にびっくりしたわ。
朝峰雪さんがホロロさんだと分かっていたし、何かしら仕掛けてくるだろうとは思っていたけど……。
まあ、ホロロさんもホロも私達の敵ではないことが分かったし、比奈ちゃんも……。
「もう幸太君、意地悪なんだから……ムニャムニャ」
幸せいっぱいの寝言が比奈ちゃんのベッドから聞こえてきて思わず私もにやけてしまった。
幸せそうね……。
私はもう一度カーテンの隙間から見えるおぼろげに光り輝く月を眺めた。
周りの星達が月を更に美しく見せている様に見える。
私の星の、私の部屋からも星は見えた。
地球にとっての月みたいなものも私の星には有った。
見た目は少し違って柔らかく青く光っていた。
こんな風に月が綺麗に見える夜はほんの少しホームシックになる。
思い出してしまうのだ。
大好きなあの方を……。
あの方との初対面。
彼は何か怪しげな管のようなモノを身体中に巻き付けていた。
初対面と言ったが彼はいつも、いつ会いに行ってもその姿をしていた。
彼の目の前には大きなモニターがあった。
綺麗な黒い長毛のこの星で言う猫のような見た目の男の子 。
名前はルック。
彼とは衝撃的な出会いだった。
私は元々その部屋には近づいてはいけないと言われていて、どんな化け物が出て来るかと思ったのだ。
自分と同じ年くらいの男の子との接触がこの時、初めてだった。
『君は?』
彼が私にそう聞いた。
私はプディ―......。と、そう言おうとした。
だけど......。
その言葉がすぐには出なかった。
この子からも王女様扱いをされるのが嫌だと思ったのだ。
私はなんだか不思議なオーラを放つ彼と友達になりたい。
そう思ったのだ。
だから適当な名前を言って、嘘をつこうと思ったのだけどいい名前が思いつかない。
中々答えない私を見てクスリと彼が笑った。
『プディちゃん。プディちゃんだよね? 嘘つかなくても良いよ。
嘘をついても僕には分かるんだ。
王女様扱いをされるのが嫌なんだね?
分かったよ。
特別扱いは嫌だモノね。
プディちゃんって呼んだら良いかい?』
そう言いながらルックはクスクスと笑った。
この星では誰もが笑う事すらしない。
大きくではないけれど、感情を表に出す彼の事が珍しかった。
彼はどうしてこんな所に閉じ込められているんだろう?
彼はいつも忙しそうだった。
モニターを見ながら何かコンピュータみたいな物にデーターを打ち込んでいる様だった。
私は城の外には出ることは許されていなかったけど城の中は自由に行き来することが出来た。
けれど彼はあの不気味な階段を登った先の部屋に閉じ込められている様だった。
彼が自分の事を教えてくれるまで少し時間がかかった。
少しづつ、少しづつ仲良くなってそして彼は彼の事を教えてくれた。
ルックは実はすごい能力者だったのだ。
彼は私の星の方達、一匹一匹全ての感情の変化、パワーの変化を読み取ることが出きるらしいのだ。
私の星が私の父であるこの星の王の言うように感情を出さないで過ごす生活をする。
そういう風に皆を管理する為には彼が必要不可欠だった。
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