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第106話 女子高生からしたら所詮、俺はおじさんだ(幸太郎視点)
しおりを挟む比奈ちゃんと雪さんにスリッパを勧めて家の中に通した。
まあ、俺は裸足だ。
靴下は足が暑くなるからあんまり好きじゃない。
流石に外出する時は履くけど......。
今朝、掃除をしたから廊下の足触りが良いな。
部屋もそんなに嫌な匂いもしないだろう。
掃除をしといて良かった。
俺の少し後ろから雪さんと比奈ちゃんがついてくる。
今日は空が青くて良い天気ですね? なんて雪さんと世間話をしながらリビングを目指す。
会話に比奈ちゃんの反応は少ない気がする。
おかしい。
いつもはすごい勢いで話を始める比奈ちゃんが今日はなんだかぎこちない。
どういう事だ?
まだ、プディをみれないって言った事、怒っているんだろうか?
いや、怒っているって感じでもないかな?
何だか正面から比奈ちゃんが見れない俺は少しだけ比奈ちゃんの様子を気にしながら雪さんと話す。
俺自身もなんか変なんだよな。
比奈ちゃんに、前みたいに話しかけたいのに、上手く言葉が出てこないし......。
ああ、だけど、女の子っているだけで良い香りがするよな......。
空気が変わるっていうかさ......。
まあ俺は普段、仕事以外はほとんど人と関わっていないから、あんまり分かんないんだけどさ......。
女性と長い時間、一緒にいる事も比奈ちゃんが久しぶりだったと言うか、始めてだったかもしれない(母親は別として)。
長く比奈ちゃんと、一緒に居て、急に会えなくなったから、なんていうか、俺、ちょっとおかしくなっているのかな?
調子を戻さないと......。
お、俺はそもそも、人にあんまり興味がなかった筈だろう?
なんで、比奈ちゃんの事をこんなに気にしているんだ?
いつも通りの関係に戻りたくて、比奈ちゃんに話しかけ様と俺も努力するけど、上手くはぐらかされるというか、会話が微妙にずれる。
間に雪さんが入って、なんとか会話が成り立つと言った感じだ。
そんな雪さんが比奈ちゃんに声をかけると、自然に柔らかく笑う比奈ちゃん。
この二人、この前会ってまだ二度目だよな?
なんでこんなに仲が良いんだ?
女同士だからか?
なんだか、面白くないな。
なんとなく俺は胸がそわそわして、自分の眉間がちょっとだけ寄った気がした。
比奈ちゃん、さっきから俺の方を見ないで雪さんとばかり笑っている。
なんで俺、こんなに気分が悪いんだ?
妹を取られた様な気分になっているんだろうか?
俺......。
って、比奈ちゃんは高志の妹だぞ。
いくら懐いてくれたみたいだったからって、おこがましいにも程があるぞ俺。
そんな風に思っていたら、元気よく比奈ちゃんが自分のカゴバッグからプディを取り出して、胸に抱えてホロのケージまで走っていた。
ケージの側にはデンがいる。
デンやホロちゃんと話す様子はいつも通りの比奈ちゃんだった。
なんだかそのやり取りを見ていたら、この前までの日常が戻って来たみたいで、嬉しくて少しだけ胸が熱くなった。
俺は自然な感じて背後から近づき、比奈ちゃんの上から少し屈みながらホロのケージを開ける。
ホロちゃんが、ケージからゆっくり出てくる。
比奈ちゃんから床に下ろされたプディがトテトテとホロちゃんに近く。
すごく可愛いらしい二匹のじゃれあい。
だけど俺はそれどころじゃなかった。
すぐ側にいる、比奈ちゃんの髪から、またシャンプーか何かの良い香りがして、一瞬、ゴクンと唾を飲み込みそうになったが耐えた。
危ない、危ない。
ただケージを開けただけなのに、ちょっと近かったからって過剰に反応したら、変態かセクハラ親父だと思われる。
そうだよ。
俺と比奈ちゃんはそれぐらいの歳の差なんだ。
いくら可愛くても、彼女の顔が頭から離れなくても、目を覚ますんだ俺!
でも、比奈ちゃん、まつ毛長いなー。
横顔、色っぽい。
髪から透けて見える頬とか、プディやホロ、デンを愛おしく見る目。
柔らかそうな唇。
「あの......」
遠慮がちな雪さんの声に俺は現実に引き戻された。
我に返った俺は、慌てて表情を取り繕いながら、俺の真後ろにいた雪さんの方を見た。
「どうしましたか?」
「早速なのですが、ご飯を作らせて貰って良いですか?」
えっ?
雪さん?
唐突な雪さんの提案に、正直俺は驚きを隠せなかった。
ご、ご飯?
そ、そういえばメールにそんな事、書いてあった様な......。
へっ? あれ本気だったの?
普通の男なら喜ぶであろうその提案、実際俺は全然嬉しくなかった。
それよりも、そんな事を言われて比奈ちゃんに変な誤解をされないかとハラハラしていた。
だ、だけど......。
ひ、比奈ちゃんは雪さんがそんな風に言い出したのを見て、どんな風に思っただろう?
も、もしかして、比奈ちゃんが俺の事、ほんのちょっとでも気にしてくれているんだったらヤキモチ妬いてくれちゃったりしないだろうか?
ドキドキしながら比奈ちゃんの方を見てみたら、こっちの話には見向きもしないで、デンを撫でながらモフモフと楽しんでいた。
そんな比奈ちゃんを見て、やっぱりな、と思いながらも立ち直れない程ショックを受けている俺がいた。
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