73 / 131
第73話 どうしてココにいるの?(雪視点)
しおりを挟む
無事山岡さんのケアが終わり、ホロちゃん(辰君)を連れて社用車に乗り込む。
私の胸の中でホロちゃん(辰君)はとてもよく眠っている。
辰君、不思議。
前、私がクウロだった頃、子供だった辰君にこうして抱っこしてもらってたなー。
辰君に包まれて、全部守ってもらっている様で、幸せだった。
悪戯っ子だった辰君、怪我して帰ってくる事が多くて、ちょびっとだけ、内緒でパワーを使ったりして。
と言っても使った量はほんの僅かだったから、傷の回復を早める程度だったけど、懐かしいな......。
辰君ちっちゃな、柔らかいなー、子猫(辰君の場合は厳密には子猫じゃないけど)って体温高いよね。
ミルクの香りがする。
毛艶もすごく綺麗。
井川さん、辰君の事、大事にしてくれているんだな。
私が優しく撫でると、辰君(ホロちゃん)が私の腕の中で少しだけ動く。
辰君(ホロちゃん)の顔がちょこっと私の肘の内側に当たる。
辰君(ホロちゃん)は無意識に私の肘の内側をペロペロと舐めた。
舐めてはいるけど、まだ眠っているみたい。
くすぐったい。
辰君(ホロちゃん)綺麗な顔をしてる。
きっと私の星じゃモテモテだ。
その時、私の鞄にぶら下げている腕時計が目に入った。
やばい、和んでいる場合じゃないとりあえず職場にもどらないと。
私は辰君(ホロちゃん)をカゴバッグに入れてエンジンをかけた。
今日は職場まで戻ったら早退するしかないな。
うーん。
り、理由。
今まで、有給、ほとんど使ってないから使わせて貰うぞ!
辰君(ホロちゃん)を軽く撫でる。
眠っている辰君(ホロちゃん)心地良いのか尻尾がゆっくり左右に揺れている。
可愛い。
私はハンドルを握り職場に向かって走り始めた。
******
自転車を押して、職場を出た。
カゴに入った辰君(ホロちゃん)はよほど疲れたのかまだ眠っている。
私が早退する為の申し送りをしている間は自分の車の中で休憩を取っていた同僚に辰君(ホロちゃん)を預けて、何とか今に至る。
私が仕事をしている間に井川さんからメールや電話の着信が入っていた。
先程メールを返信して、今は井川さんの家に辰君(ホロちゃん)を届けに行っている。
本当はこのまま家に連れて帰りたい。
だけど......。
私は非力だ。
私の星の王は何を考えているのか分からない。
今回、辰君の事も巻き込んでしまった。
カゴの中で幸せそうに気持ち良さそうに眠る辰君。
「にゃき......(雪......)」
辰君、寝言?
私の夢を見ているの?
こんな優しい顔して、私の夢を?
うーん、このまま連れ帰って、どこか遠くへ逃げてしまいたい。
異次元でもどこでも。
二人ならどんな姿でも構わない。
だけど、辰君がどう思っているか分からない。
私の本当の姿の事、星の事も言えてない。
捕まっている家族、弟の事も、忘れた訳じゃない。
薄情な私。
恋をしてしまったら、こうも周りが見えなくなるものなのか。
私は井川さんのマンションの自転車置き場に自分の自転車を止めて鍵をかける。
この三階建てのマンションの二階に井川さんの部屋がある。
実は私、窓から少しでも辰君(ホロちゃん)の姿が見えないか何回もココに来ていた。
どうしても近くで、その元気な姿を確認したくて、井川さんにメールしたのが、ついこの前だ。
辰君、ホロちゃんの姿になって、記憶がなくなってしまっていたらどうしようと心配していたけど......。
ちゃんと覚えているみたい。
辰君の言葉の意味が分かるのに、知らないふりをするのは辛いし、鈍臭い私だから思わずホロちゃんじゃなくて辰君って言いそうになってしまう。
マンションの階段をホロちゃん(辰君)を胸に抱えて一歩づつ登る。
離れたくない。
でも辰君はもう、井川さんにとってかけがえのない存在になっている可能性もある。
眠っている辰君を抱え上げ頬擦りする。
うんん。
今は我慢だ。
私のパワーは星に対抗するにはまだ足りない。
荒っぽい事をしたい訳じゃない。
私はまた辰君とあの幸せな時間を取り戻したい。
それだけ。
辰君には私のパワーが貯まるまで、井川さんの家で、安全な場所で、過ごしてもらおう。
でも、ちょびっと食べさせすぎじゃないかな?
少しだけふくれた、辰君(ホロちゃん)のお腹を見て心配になった私。
井川さんに辰君の食事指導をしないと。
そう決意して井川さんのマンションの部屋のインターフォンを鳴らした。
慌てている様子が分かる程の勢いで扉が開き、ちょっとびっくりした。
「雪さん! ああ、ホロ、ホロちゃん!心配したよ。何処も怪我してない? 大丈夫か?」
井川さんのうろたえた様子は見ていてあきらかで、どれ程、辰君(ホロちゃん)が大事にされているか伝わってきた。
私はソーッと辰君を井川さんに渡そうとした
辰君の爪が私の服を掴んで中々離さないから『離れたくない』そう、辰君が言っている様で胸がチクンと痛んだ。
「本当にありがとう。助かったよ。どこかに行ってしまっていたらと考えるだけで怖いよ。......。上がる?」
井川さんはなんとか私から辰君を受け取りそう言った。
なんとなく井川さんは困っている様子だった。
ご迷惑かもしれない。
だけど、まだ、もうちょっとだけ辰君と居たい。
私はお茶だけもらうと言う事で、部屋に上げてもらった。
井川さんの部屋は男性にしては綺麗に片付いていた。
ソファーの上に見たことがある大きな犬が眠っていた。
確かゴールデンレトリバーのデンちゃんよね。
あれ?
もう一匹子猫が隣で眠ってる。
綺麗な毛並みキジトラの子猫。
その子猫を見た時、私の胸がドクンッとなった。
その可愛らしいニャンコがこちらの、私の気配に気がつき顔を上げた。
あれ?
あれ?
ど、どうしてココに?
あの気品。
あのオーラ。
プディ王女が、どうしてココにいるの?
私の胸の中でホロちゃん(辰君)はとてもよく眠っている。
辰君、不思議。
前、私がクウロだった頃、子供だった辰君にこうして抱っこしてもらってたなー。
辰君に包まれて、全部守ってもらっている様で、幸せだった。
悪戯っ子だった辰君、怪我して帰ってくる事が多くて、ちょびっとだけ、内緒でパワーを使ったりして。
と言っても使った量はほんの僅かだったから、傷の回復を早める程度だったけど、懐かしいな......。
辰君ちっちゃな、柔らかいなー、子猫(辰君の場合は厳密には子猫じゃないけど)って体温高いよね。
ミルクの香りがする。
毛艶もすごく綺麗。
井川さん、辰君の事、大事にしてくれているんだな。
私が優しく撫でると、辰君(ホロちゃん)が私の腕の中で少しだけ動く。
辰君(ホロちゃん)の顔がちょこっと私の肘の内側に当たる。
辰君(ホロちゃん)は無意識に私の肘の内側をペロペロと舐めた。
舐めてはいるけど、まだ眠っているみたい。
くすぐったい。
辰君(ホロちゃん)綺麗な顔をしてる。
きっと私の星じゃモテモテだ。
その時、私の鞄にぶら下げている腕時計が目に入った。
やばい、和んでいる場合じゃないとりあえず職場にもどらないと。
私は辰君(ホロちゃん)をカゴバッグに入れてエンジンをかけた。
今日は職場まで戻ったら早退するしかないな。
うーん。
り、理由。
今まで、有給、ほとんど使ってないから使わせて貰うぞ!
辰君(ホロちゃん)を軽く撫でる。
眠っている辰君(ホロちゃん)心地良いのか尻尾がゆっくり左右に揺れている。
可愛い。
私はハンドルを握り職場に向かって走り始めた。
******
自転車を押して、職場を出た。
カゴに入った辰君(ホロちゃん)はよほど疲れたのかまだ眠っている。
私が早退する為の申し送りをしている間は自分の車の中で休憩を取っていた同僚に辰君(ホロちゃん)を預けて、何とか今に至る。
私が仕事をしている間に井川さんからメールや電話の着信が入っていた。
先程メールを返信して、今は井川さんの家に辰君(ホロちゃん)を届けに行っている。
本当はこのまま家に連れて帰りたい。
だけど......。
私は非力だ。
私の星の王は何を考えているのか分からない。
今回、辰君の事も巻き込んでしまった。
カゴの中で幸せそうに気持ち良さそうに眠る辰君。
「にゃき......(雪......)」
辰君、寝言?
私の夢を見ているの?
こんな優しい顔して、私の夢を?
うーん、このまま連れ帰って、どこか遠くへ逃げてしまいたい。
異次元でもどこでも。
二人ならどんな姿でも構わない。
だけど、辰君がどう思っているか分からない。
私の本当の姿の事、星の事も言えてない。
捕まっている家族、弟の事も、忘れた訳じゃない。
薄情な私。
恋をしてしまったら、こうも周りが見えなくなるものなのか。
私は井川さんのマンションの自転車置き場に自分の自転車を止めて鍵をかける。
この三階建てのマンションの二階に井川さんの部屋がある。
実は私、窓から少しでも辰君(ホロちゃん)の姿が見えないか何回もココに来ていた。
どうしても近くで、その元気な姿を確認したくて、井川さんにメールしたのが、ついこの前だ。
辰君、ホロちゃんの姿になって、記憶がなくなってしまっていたらどうしようと心配していたけど......。
ちゃんと覚えているみたい。
辰君の言葉の意味が分かるのに、知らないふりをするのは辛いし、鈍臭い私だから思わずホロちゃんじゃなくて辰君って言いそうになってしまう。
マンションの階段をホロちゃん(辰君)を胸に抱えて一歩づつ登る。
離れたくない。
でも辰君はもう、井川さんにとってかけがえのない存在になっている可能性もある。
眠っている辰君を抱え上げ頬擦りする。
うんん。
今は我慢だ。
私のパワーは星に対抗するにはまだ足りない。
荒っぽい事をしたい訳じゃない。
私はまた辰君とあの幸せな時間を取り戻したい。
それだけ。
辰君には私のパワーが貯まるまで、井川さんの家で、安全な場所で、過ごしてもらおう。
でも、ちょびっと食べさせすぎじゃないかな?
少しだけふくれた、辰君(ホロちゃん)のお腹を見て心配になった私。
井川さんに辰君の食事指導をしないと。
そう決意して井川さんのマンションの部屋のインターフォンを鳴らした。
慌てている様子が分かる程の勢いで扉が開き、ちょっとびっくりした。
「雪さん! ああ、ホロ、ホロちゃん!心配したよ。何処も怪我してない? 大丈夫か?」
井川さんのうろたえた様子は見ていてあきらかで、どれ程、辰君(ホロちゃん)が大事にされているか伝わってきた。
私はソーッと辰君を井川さんに渡そうとした
辰君の爪が私の服を掴んで中々離さないから『離れたくない』そう、辰君が言っている様で胸がチクンと痛んだ。
「本当にありがとう。助かったよ。どこかに行ってしまっていたらと考えるだけで怖いよ。......。上がる?」
井川さんはなんとか私から辰君を受け取りそう言った。
なんとなく井川さんは困っている様子だった。
ご迷惑かもしれない。
だけど、まだ、もうちょっとだけ辰君と居たい。
私はお茶だけもらうと言う事で、部屋に上げてもらった。
井川さんの部屋は男性にしては綺麗に片付いていた。
ソファーの上に見たことがある大きな犬が眠っていた。
確かゴールデンレトリバーのデンちゃんよね。
あれ?
もう一匹子猫が隣で眠ってる。
綺麗な毛並みキジトラの子猫。
その子猫を見た時、私の胸がドクンッとなった。
その可愛らしいニャンコがこちらの、私の気配に気がつき顔を上げた。
あれ?
あれ?
ど、どうしてココに?
あの気品。
あのオーラ。
プディ王女が、どうしてココにいるの?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
異世界ハニィ
ももくり
ファンタジー
ある日突然、異世界へ召喚されてしまった女子高生のモモ。「えっ、魔王退治はしなくていいんですか?!」あうあう言っているうちになぜか国境まで追いやられ、隙あらば迫ってくるイケメンどもをバッサバッサとなぎ倒す日々。なんか思ってたのと違う異世界でのスローライフが、いま始まる。※表紙は花岡かおろさんのイラストをお借りしています。※申し訳ありません、今更ですがジャンルを恋愛からファンタジーに変更しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ギフトで復讐![完結]
れぷ
ファンタジー
皇帝陛下の末子として産まれたリリー、しかしこの世はステータス至上主義だった為、最弱ステータスのリリーは母(元メイド)と共に王都を追い出された。母の実家の男爵家でも追い返された母はリリーと共に隣国へ逃げ延び冒険者ギルドの受付嬢として就職、隣国の民は皆優しく親切で母とリリーは安心して暮らしていた。しかし前世の記憶持ちで有るリリーは母と自分捨てた皇帝と帝国を恨んでいて「いつか復讐してやるんだからね!」と心に誓うのであった。
そんなリリーの復讐は【ギフト】の力で、思いの外早く叶いそうですよ。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる