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第52話 前回の夢のおさらいとお嫁さんの後悔(ホロ視点)
しおりを挟むそして俺は再び二つの画面の前に居た。
ここで前回のおさらいだ。
今回俺はかなり手こずっている。
俺の物語を見てくれている人もきっと夢の内容が分からなくなっているんじゃないかと心配なくらいだ。
今回は、前回まで見ていた夢と違い、画面が二つ現れていたんだ。
左の画面は俺自身入ってはいないが、お嫁さんである麻沙子さんが主人公の夢。
画面上で見た所では、かなりお嫁さんが疲れていた。
そしておばあさんが食事中で目はうつろ、床に食べ物を零しまくってて、お嫁さんが拭いている所だった。
そして右画面はそのおばあさんが主人公の夢だった。
おばあさんがかなり興奮していてお嫁さんを怒り散らしている。だけど心の中は脅えているそんな夢だった。
おれはまず、右側のおばあさんの主人公の夢から入った。
画面の中はすぐ、おばあさんの夢、だった訳ではなく、広い空間の中で、色々な映像がゆっくり流れてきていた。
そしてその夢の映像がある一定の所でせき止められる様に詰まっていたんだ。
おばあさんの記憶がそこで止まってしまっているみたいだったんだ。
そして俺はまず笑顔のおばあさんの夢に入ったんだ。
そしてそこで、ミーと出会った。
おばあさんとミーと時間を忘れるくらい遊んだんだ。
俺は入る夢を間違ったと思い、次はおばあさんが興奮していた夢に飛び込んだ。
そしてそこで、前の姿が想像できない程、痛々しい姿のミーとの再会をしたんだ。
おさらいだけで随分長く語ってしまった。
そして目の前の画面を見た。
今回も左の画面だけ映像が流れていて右の画面はまだ始まっていない。
左の画面の内容は前回のものと似てはいたが少し場面が違っていた。
お嫁さんがおばあさんの食事を介助して食べさせている所が流れていた。
前回お嫁さん、ええと麻沙子さんと言ったかな?
麻沙子さんの夢には入っていなかった。
おばあさんはまだ眠っていないから右のおばあさんが主人公の夢は始まっていないみたいだし、おばあさんが眠るのを待つのも時間がもったいないような気がした。
それにお嫁さんの方から見たら見えてくるものがあるかもしれない。
俺は迷っている暇はないと、お嫁さんの夢に飛び込んだ。
俺はおばあさんの夢に入ってすぐの時みたいに、広い空間の中にいた。
やはりおばあさんと同じでふんわりと映像が流れていた。
おばあさんと違ってせき止められてはいなかった。
だけど一定の場所で何個かの映像が止まり、消えゆく様にストンと落ちている様だった。
俺はその場所まで行き、その映像を見た。
これも過去の記憶だろうか?
見えるのは開いている玄関のドア、それを見て慌てて出ていくお嫁さんの麻沙子さん。
お嫁さんの後ろからミーちゃんが飛び出した。
映像で風景が流れるように映っている。
風の映像の様だ。
多分、お嫁さんが走っているんだ。
そしてお嫁さんの前をミーが走る。
そのミーの前を少しフラつた足取りで歩くおばあさんの姿が見える。
『ああ、私はまた止めることが出来なかった。お義母さんの物忘れが出てきて、色々な所に自分の持ち物を置いて、無くなったという。実際は無くなっていないのだけど目を離すと探しに外に出て行ってしまう事が多くなった。一人で出ていったら危ないと言っているのに……。この夢の続きは分かっているの、もう見たくないのに……』
お嫁さんの心の声が頭に響く。
どういうことだ?
これから良くないことが起きてしまうのか。
だけど、これはお嫁さんである麻沙子さんの記憶の様に思う。
この出来事を止めたとしても現実は変わらないよな……。
俺は嫌な予感がして、目を背けたい映像だったがそのまま見続けた。
『ああ、まただ。この夢でも私は……』
目の前でおばあさんが軽自動車に轢かれそうになり、ミーがおばあさんを突き飛ばす。
おばあさんは歩道の側の腰ぐらいの背の低い木の上に倒れ上手くクッションになり助かったようだが、すごい音が響き、ミーが車に轢かれてしまった。
それを呆然と眺めるおばあさん。
お嫁さんが慌てて駆け寄りそこで画面は変わる。
お嫁さんともう一人は男性?
場所は動物病院?
診察台にはミーが居る。
ミーの顔は毛が剃られているせいでワイヤーの跡がむき出しだ。
顎が縫ってあるせいで皮膚が引っ張られ下の歯がむき出しになっている。
見えている下の歯は縫い目を境に上下に少しズレているあの痛々しい姿のミーだ。
そしてミーの横には白衣を着た女性が。
「手術は成功しました。身体は元気です。傷跡は残るかもしれないですが……」
「先生、この歪んだ顎は治らないんですか?」
少し困ったように男性が聞く。
「そうですね。骨のズレは手術ではここまでしか治せなかったので、このままの感じにはなると思うのですが、毛が伸びてくると見えにくくはなるとは思います。だけど身体は元気ですよ? 食事が上手くできないので介助が必要になりますが……。それにちょっと精神的に参っているみたいで……、その点もフォローが必要だと思います」
「だから毛の色もちょっと変わってしまったんですか?」
「ちょっとだけ、ストレスで色が白く抜けてしまった所があるみたいですね……。猫ちゃんの性格ではこういったケースは他にもたまにはみられる子もいますね。」
「困ったな、俺は忙しいんだ。母さんもあんな状態なのにミーもなんて無理だぞ? ……。これはアレをお願いしないといけないんじゃないか? ……安楽……」
「いや、いや! 絶対嫌! アナタは何もしなくていい! 私が面倒みるから!」
お嫁さん......。
あんな激しい部分もあるんだな……。
だけど、俺は家にいたミーを見た訳で、結局は安楽死されてないって事だよな?
……良かった。
それに痛々しい姿だけど身体は元気なんだな。
また高く飛べるんだな。
そこまで見たところで映像は消えてしまったので、次の流れてきた映像を見た。
お嫁さんが介護していて疲れている夢。
俺は夢の中に飛び込んだ。
********
お嫁さんは、床を拭いていた。
この前、おばあさんが主人公だった夢の部屋とは中が全然変わってしまっている。
家具とか物の配置はそのままなんだが、なんと言うか床が、掃除はしているんだろうけど少しベタついているというか、部屋も少し薄暗い。
おばあさんは……虚ろな目でテーブルの前に座っていた。
本当に俺が一緒に遊んだあの活発なおばあさんか?
『お義母さん。あの、ミーちゃんの事故から変わってしまった。目の前の事から目を背ける様に興奮する事が多くなった。物忘れが進んだのか私への当たりがきつくなった。そして、病院の先生と私の夫であるあの人の判断で興奮を抑えるために薬を強くしてから……どんどん変わっていってしまった。あの判断は間違っていたのだろうか……。私も強くは言えなかった……』
おばあさんの手から箸が落ちる。
おばあさんは食べながら眠ってしまったようだ。
雪が人によっては食事中に眠ってしまう人もいると言っていたな……。
だけどそれは誤嚥性肺炎になる可能性もあってすごく危ないと言っていた。
大丈夫か?
俺はおばあさんを起こそうとおばあさんの膝の上に乗った。
俺が膝に乗った時、おばあさんが少し反応した。
目は閉じているが、「ミー」と呟いた。
俺は、これはお嫁さんの夢だからおばあさんは俺が介入しても反応はないと思っていた。
お嫁さんが俺を見て、少しびっくりしている。
お嫁さん的にはこの子猫はどっから来たのだろうとびっくりしたのだろうけど……。
これはお嫁さんの夢だ。
お嫁さんは、俺みたいな存在はおばあさんに良い刺激になると思っているのかもしれない。
お嫁さんの思いに連動しておばあさんが反応を見せたという事だな……。
俺がおばあさんから下りると、おばあさんは俺を探す様に手を動かす。
椅子から動こうとはしていない。
俺はどこかにミーが居るはずだと部屋の中を観察した。
ミーは台所の隣のリビングの隅で小さくなり震えていた。
顎のワイヤーは抜糸してあって、少し顎はズレてはいるが毛も少し伸びて傷は分かりにくくなっているミーちゃんが居た。
このミーも俺が来ても反応は薄い。
脅えたようにこちらを見ている。
ミーちゃん。
あんなに活発だったミーちゃん。
一つ前の見た映像で分かっていた事がある。
ミーちゃんは、身体は元気だと……。
ミーちゃん、心を閉ざしてしまったのだろうか?
分からない。
だけど、やはり。
キーパーソンならぬキーキャットはミーだ。
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