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王子様の救出? いや魔王に囚われた......?

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 その部屋は狭いけどお洒落だった。
 大きなベッドが印象的で、まあ、そういう目的なんだろう事は分かる。

 俺はもちろん、童貞処女だ。
 本番無しと書かれていたけど、それも本当か分からない。

 稼ぐ為には抜け穴はあるだろうし……。


 勢いで来てしまったが俺、大丈夫なんだろうか?

 なんだか俺は身体が震え出してしまった。 
 性欲を持て余していると言っても誰かに抱かれたい訳じゃない。



 俺の様子を見て美形のお兄さん、俺の教育係さんは小さく溜息をついた。

「もしかして経験ないのかな? まだ店出しまでかかるかな? そんなんじゃ何も教えられないよね、ええとカナト君」
「は、はははい」


 どもりまくってしまった。
 俺、みっともなさすぎる。

「まあ、リラックスして、そのベッドに座ろうか、まだ面接も途中だしね」

 震えながらもなんとかベッドまで歩き言われた通り腰掛けた。

「うーん、そんなんでお客、取れるかな? 素材は良いからこのまま逃すのも勿体ないね」

 ボソボソとその男がなんて言っているのか分からなかったが、笑顔がなんだか気持ち悪くて余計に身体が震え出した。

「大丈夫。本番はないんだし、君もお客さんも気持ちよくなってお金ももらえるんだよ」

 そう言って男は俺の背中を撫でた。
 優しい手つきだったのだと思う。
 しかも美形であるこの男から撫でられているのに俺は鳥肌しか立たなかった。
 途端に沸き起こったのは恐怖と嫌悪。


 実際触られるまで気づかないなんて。
 俺はロイ以外は触られるのも無理なんだ……。


 その事実に気づき、絶望していたその時、男のイヤリングから音がした。
 金持ちしか持たないそれは連絡を取る為の魔道具だったようだ。
 何か問題があったのか男がイヤリングに向かって声を荒げていた。

 
 その時、カチャンと部屋の鍵が空く音がした。扉が開いた向こうにはニコニコ笑ってはいるが、黒い湯気が頭の上の方からいっぱい出ていそうなロイが居た。

 なんか、すごく怒ってる……。


***


 なんだかんだでウチに帰ってきた。
 結局、ロイに助けられた。

 二人で家まで歩いて帰る間は無言だったが、空気がピリピリしていた。
 俺が一声かけたら殺されてしまうんじゃないかと言うくらいロイの怒りが伝わってきた。

 あの店での店員達と話している様子から察するに、ロイはあの店では上客だったみたいだ。
 ロイが店員達と話していた時、俺は少し離れた場所で待たされていて、話していた言葉は所々しか分からなかったが……。

 という事はだ。ロイはあの店で誰かとそういう事を頻繁にしていた訳だ。

 無言で歩きながら俺の心はモヤモヤと悔しい気持ちが心を支配していた。


 家に着き、俺が中に入った途端、鍵をかけたロイ。

 まあそれはいつもの事だが、そのまま俺はベッドに押し倒された。


 ロイは怒っていた。

 だけど怒っていると言うよりなんだか苦しそうに顔を歪めた。

「もう、我慢すんの、やめるわ」

 そう言った途端、目の前にロイの端正な顔があり唇を塞がれた。そのまま口内を舐められる。
「うっ……ん……あっ」
 
 な、何がどうなっているんだ?
 もちろん俺はキスも初めてだ。

 ロイは今回俺がしでかそうとした事をその恐怖を身をもって教えようとしているのか?
 そんな事を考えている間にも俺の口内はロイによって犯される。
 ロイのザラついた舌が俺の歯茎の上や下を舐める。俺の舌に絡ませる。
 キスに慣れていない俺はどうやって息をするのか分からない。ロイの動きについていくのがやっとだ。
 なんだか俺は身体全体が徐々に熱を持ち始めてしまっていた。

 ロイは俺の口内を舐めながら俺の背中や腰を撫でる。

 その手つきは先程の店でされた触り方とそんなに変わらない様にも思えた。
 ロイは押し倒したと言っても体重は俺にはかかっていない。
 だけど、あの時よりも怖いと思ってもいい様な状態ではあった。

 だが、ロイに触られている、それだけなのに、嫌悪はまったくなく、むしろトロける様に気持ちが良い。


 俺は脳内までとろけてしまったのかもしれない。

「考え事か? 余裕だな」

 そう言うロイも息づかいがあらい。
「余裕なんてっ、ねーよっ……」

 初めてのキス、息継ぎも上手く出来なかった。
 俺とロイの息づかいが狭い部屋の中に響き、さらに卑猥な空気が漂っている。

「何であんな所にいた? 俺は家にいろって言ったよな?」

「ロイだって、なんで俺があそこに居るって分かったんだよ、まあだから助かったんだけど……」

 そうだよ。何俺はこんな事を叫んでんだ?
 まずはありがとうだろう……。

「まだ服を脱いでなかったって事は何かされた訳じゃねーよな? まあいい、脱げ。見てやる」


 当たり前の様にそう言うロイ。
 まさか、裸になれと言うのか?

 ロイの前で裸になるなんて子供の時以来だぞ。

 もし今、裸になってそんな姿を見られたら肌に触れられたら俺自身の欲望が抑えられる気がしない。

 だけど……。

 ロイの目は逆らい様がないくらい怖い。
 やはりロイ怒っているよな。

 ロイの冷たい空気、無表情に怒っているその顔はまるで魔王の様だ。
 そう錯覚してしまいそうな……それほどロイの気迫は凄かった。



 俺はベッドの上で、ロイから少し離れ、まず長袖の上衣に手をかけた。
 ロイがすぐ近くで、じっと俺を見ている。
 ロイは口調がキツいのもあったが、最近はこんなにちゃんと見られる事がなかった。
 
 目を合わそうとしても逸らされる事が多かった。

ゴクッ

 静かな空間に俺が唾を飲み込む音が響く。

 上衣、下衣、下着と脱いでいく。
 その様子を先程まで無表情で見ていたロイがなんだか熱のこもっている様な表情に変わっていく気がした。

ドキドキドキドキドキドキ

 心拍数が上がりすぎた。俺の心臓が壊れてしまったんじゃないか?
 そう思ってしまうぐらい俺の心音は鳴り響いた。


 ロイは俺を心配して言っているんだ。
 だけどロイも男だ。

 あの店に通っていると言う事はロイは男性も、そういう目で見ることが出来るという事だ。


 さっきされたキスの熱の所為ですでに身体中が熱くなり、俺の後ろの穴が少し期待するかの様にひくついた。


 最近の自慰で、アナルも使ってしまっていた俺、もちろん指を突っ込む程度しかしていないし、ロイに知られるのも怖いからやっている回数も少ない。


 だけど、オカズはもちろんロイだし、もしかしたら今は夢の中の出来事かもしれない。そんな風に思い始めていた。


 俺がベッドの上で、生まれたままの姿になった時、ロイがそっと俺の脇下に触れた。そこには昔の古傷があった。

 それは例の俺達の両親が亡くなったあの出来事の時にできた傷だった。

 ロイがゆっくりとその俺の傷跡に口付ける。

「っ……!」
 俺は思わず声にならない声を上げた。
「ロイッ、俺、風呂、入ってねーし、きっきたねーよ」
「どこも、汚れていない。間に合ってよかった。カナトは……綺麗だ」


 その時のロイの声は昔の優しかった時の声のトーンで、なんだかあの時のロイが、戻ってきた様に錯覚しそうになった。

「でもっ、カナトは悪い子だな」

 ピリッとしたキツい口調に戻ったロイが俺の胸に手をそわせ中心部分の突起で止まりキュッとつねった。
「いっっ……!」

 ロイは俺の胸を揉んだり突起部分をグネグネと揉んだりつねったり、そうしたと思ったらその突起に口付け啄むように吸い始めた。

「んっあっあーっあーんっ、ロイ、そんな所吸ったら汚い、汚いったらっ」

 俺から女みたいな甲高い声が漏れる。
 言いながらイヤらしく聞こえる息づかいも漏れる。

 どうしよう……。
 俺なんかがこんな声を出したら気持ち悪いんじゃないだろうか?
 そうじゃなくても俺はロイに嫌われているのに……。
 不安な気持ちを抑えロイを見た。

 ロイの表情はさっき以上に熱のこもったモノになっておりそんなロイの表情を見て嬉しくなり、俺の身体の奥の方がズクリと欲を持ち、身体が燃えてしまうんじゃないかと錯覚するほど熱くなった。

 ロイが俺に欲情している。
 その事実が俺はたまらなく嬉しかった。

 俺はロイがどうしてここまでするか分からない。
 痛い目を見せようと思っていたとしても、ここまでする必要はない。

 実際ここまでする気はなかったのかもしれない。

 俺に仕置きをしようと思った所でたまたま溜まっていたロイが俺に欲情しただけかもしれない。

 だけど、これはチャンスだ。

 俺はロイに抱いてもらえるかもしれない。そう思った。
 胸を吸われながら俺はロイの肩に置いていた手を、ゆっくりとロイの背に下ろし、抱きつくように手を回した。

 ロイの腕や背中の筋肉を自分の腕に感じる。
 ロイの汗とロイ自身の香りが入り混じりその香りに体中が熱くなる。

 そのままロイの大きな掌が俺の背に周りゆっくりと下におり俺の臀部で止まった。

 ロイの指は俺の尻を揉みながら指先は穴をかする。 
「ロっロイっ」

 俺は声を出さない方が良いかもしれない。
 声を出したらロイは我にかえり俺を触るのを止めてしまうかもしれない。
 そう思ったりもしたが、俺の下腹部付近、ロイの下衣辺りが硬くなっているのが伝わってきた。

 俺はもちろん勃起していたが、ロイも勃起している事が分かって、その事実が嬉しすぎて名前を呼ばずにはいられなかった。

 俺が翻弄されている間、ロイは片手で器用に自分の衣服を脱いでいた。
 ロイの逞しい身体に俺の身体が欲しいと疼く。
 ロイは俺の穴を掠めては中々中に指を入れようとしない。

 もどかしくなった俺はロイの逞しい胸にしがみついた。

 ロイは俺の頭を軽く撫でたあと、俺の穴付近をいじっていた指を中に挿入させた。

「んっっ、あーっっ」

 求めていたモノがやっときたと思わず俺から歓喜の声がもれる。
 俺がたまにだが自慰をしていたからか、案外すんなりとロイの長い指を受け入れた。


 その事にロイが眉をひそめた事に俺は気づけなかった。

 ロイの指が俺の一番良いところに届く。

「あっ、あっッ」
 俺の声が漏れ唾液がだらしなく垂れる。
 そんな俺の口をまたロイが塞ぎ、俺の理性は完璧になくなっていた。

 ロイが欲しい。
 ロイので、俺自身を貫いて欲しい。
「ロイっ、奥、奥が疼いて辛いッ、つれーよ……。これ、これが欲しいっっ」

 俺の言葉を聞き、不機嫌そうにロイが顔を歪め気がつくと一気に貫かれていた。
「んっっあーーーっ」

 いくら自慰をそこでしていたとしても、もちろん挿入されるのは初めての事だ。

 狭すぎて、痛い。俺の身体が悲鳴を上げた。
「くっ、狭いな……」

 そう言いながらロイの身体が止まりゆっくりと動き始めた。

「悪い。息をゆっくりすえ、大丈夫だ。ゴメン。触ったら思ったより柔らかかったから、初めてじゃねーのかもと思ったんだ。お前の知り合い、全部潰してきたのに、知らねーウチに変な虫がついちまってたかと焦っちまったんだ」

 俺は息絶え絶えで、ロイの言っている事が良く分からなかった。
 だけど、これだけは言っておかないと……。
「俺はロイ以外、っっあっ、こんな事はしたくない」

 言ってしまった後、取り返しのつかない事を言ったと思い俺は身体を硬くした。

 だけど、その言葉と同時にロイに抱きしめられた。

 その抱きしめられた反動でロイのペニスが俺の中にさらに沈み込み、俺の奥の方をまた貫いた。

 だけど今度は痛くない。
 ロイが話している間もゆっくり俺の中で馴染むように動かしていたからだろうか……俺は気持ち良すぎてはしたなく大声をあげた。


 そのまま、ロイは俺の中で精を吐き出し、俺もロイが吐き出したと同時にイッた。

 


 気がつくと朝だった。
 いつも一人だったのに俺の隣にはロイの背中があった。
 俺が起きたと同時にロイが振り返り俺の頭を撫でて優しく笑った。

「起きたのか? 体調はどうだ?」

 ロイの声が甘い。
 ロイから俺に対してこんな声を聞いたのはどれぐらいぶりだろう。
「うん、大丈夫」

 昨日の事は夢じゃないんだと実感してきた。
 それと同時に恥ずかしさでいっぱいになる。

 ロイの表情を見て、今は嫌われていないと実感できるけど、そうなると今までの態度はどういう事なのか分からない。

「何であんな所に行ったんだ?」
 ロイはまだ少しだけ怒っている様だけど怒りながらも表情が甘いから怖くない。

「俺、これからもロイの側に居たいから、本当は独り立ちしないとなんだけど、離れたくないから、もっと役に立てる様にせめて一人で立てるようになりたかったんだ」

 辿々しく話す俺にロイが困った様に笑い小さく溜息をついた。

「何も話さないで、閉じ込めとくのはもう難しい年齢になっちまったか」


 そう呟いたロイ。

 その数日後、ロイに抱き潰された事で悲鳴を上げていた俺の体がようやく落ちついた頃、ロイの紹介で、ある薬師さんの所に連れていかれた。

 俺の師匠になってくれた薬師さんは70歳を超えている。
 そこでその師匠を助けながら薬剤の作り方を教わる仕事に就く事になった。

 師匠の所に通い出して、ギルドに行く必要も無くなり俺はようやく独り立ち出来始めたのかもしれない。


 ロイが俺の事をどう思っているのかはまだ良く分からない。
 だけど抱かれる事も最近は度々増えた。

 抱かれている最中は好きだと言われる事もある。
 俺も便乗して好きだと言いまくっている。
 
 だけど、いつかロイに俺以上に特別な人が現れるかもしれない。それまでにはちゃんと自分の足で立てる様にならなければ……。

 



 そうしてロイの精(魔力)を身体の中に受け続けた事で後天的に開花した俺の能力が俺の独り立ちに繋がり、ロイの過保護が増しさらに執着が激しくなるのは、またべつのお話。







 
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