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第13話 皺くちゃな手と手
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その後、車の止まった音、そして二人の足音が近づいてきた。
友那と由紀がようやく追いついたようだ。
状況と友那の話とロケットの写真をいつも見ていた由紀には分っていた。
「頼子さん、噂のしげちゃんさんですか?」
そっと頼子の肩を擦る由紀である。
頼子は声をかけられびっくりし涙も止まる。
「あら由紀さんどうしてこんな所にいるの?そうみたい。なんで私、分からなかったのかしら。こんなに写真のままなのに」
恥ずかしそうに答えながら頼子は笑った。
「初恋の人って、いつも話してましたもんね」
由紀の言葉に顔が赤くなった茂である。
四人で顔を見合わせて笑う。
友那が茂を抱え上げた。
「よし、頼子さんの帰り道も分かった事だし帰るか」
友那の言葉に不思議そうに茂は由紀の顔を見る。
「あの施設、私が祖母を全面的に介護する前に働いていた所なんだ。由紀は同僚」
友那の話を聞き少し名残惜しくなった茂である。
「おばあちゃん残念だったね、今はどこかで働いているの?」
由紀が頼子を手を引きながら友那に聞く。
「いや、ええとまだ」
「友那、帰っといで。施設長も待ってるよ」
その言葉を聞き友那は照れ臭そうに笑った。
一ヵ月後ワシはある施設でボランティアを始めた。
「むかーしむかしのそのむかし」
施設内には茂の低いしゃがれ声が響きわたる。
茂の紙芝居を読む声に耳を傾け、手を振っているのは頼子である。
紙芝居が終わり片づけていると頼子がゆっくりと駆け寄り茂の手を握る。
「しげちゃん、お庭行こ」
「おお、行こう頼ちゃん」
一緒に手を繋ぎ庭まで歩く。
わし向川 茂は九十歳になったら、そこまで生きれたらしようと思っていた事があった。
それを実行に移すつもりだった。
そのしようと思っていた事はずっと気になっていた初恋の頼ちゃんがちゃんと幸せになれたか確かめる事だった。
それを見届けたら思い残す事はない。死のう。そう決めていた。
死ななくて良かった。
わしはこれからも生きる。
頼子と二人で。
この皺くちゃな手と手を一緒につないで。
友那と由紀がようやく追いついたようだ。
状況と友那の話とロケットの写真をいつも見ていた由紀には分っていた。
「頼子さん、噂のしげちゃんさんですか?」
そっと頼子の肩を擦る由紀である。
頼子は声をかけられびっくりし涙も止まる。
「あら由紀さんどうしてこんな所にいるの?そうみたい。なんで私、分からなかったのかしら。こんなに写真のままなのに」
恥ずかしそうに答えながら頼子は笑った。
「初恋の人って、いつも話してましたもんね」
由紀の言葉に顔が赤くなった茂である。
四人で顔を見合わせて笑う。
友那が茂を抱え上げた。
「よし、頼子さんの帰り道も分かった事だし帰るか」
友那の言葉に不思議そうに茂は由紀の顔を見る。
「あの施設、私が祖母を全面的に介護する前に働いていた所なんだ。由紀は同僚」
友那の話を聞き少し名残惜しくなった茂である。
「おばあちゃん残念だったね、今はどこかで働いているの?」
由紀が頼子を手を引きながら友那に聞く。
「いや、ええとまだ」
「友那、帰っといで。施設長も待ってるよ」
その言葉を聞き友那は照れ臭そうに笑った。
一ヵ月後ワシはある施設でボランティアを始めた。
「むかーしむかしのそのむかし」
施設内には茂の低いしゃがれ声が響きわたる。
茂の紙芝居を読む声に耳を傾け、手を振っているのは頼子である。
紙芝居が終わり片づけていると頼子がゆっくりと駆け寄り茂の手を握る。
「しげちゃん、お庭行こ」
「おお、行こう頼ちゃん」
一緒に手を繋ぎ庭まで歩く。
わし向川 茂は九十歳になったら、そこまで生きれたらしようと思っていた事があった。
それを実行に移すつもりだった。
そのしようと思っていた事はずっと気になっていた初恋の頼ちゃんがちゃんと幸せになれたか確かめる事だった。
それを見届けたら思い残す事はない。死のう。そう決めていた。
死ななくて良かった。
わしはこれからも生きる。
頼子と二人で。
この皺くちゃな手と手を一緒につないで。
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