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第11話 家に帰るの!
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急がなければ、自分たちが誘拐犯にされてしまう。
そう茂が考えていたその時、
「あっ頼子さん」
後ろから低い女性の声が響いた。
振り返ると友那さんと同い年ぐらいの女性が安心したように胸を抑えていた。
走っていたのだろう息をするのもやっとという感じだった。
頼子は女性の顔を見た途端、表情をけわしくした。
「いや、私は将さんと行くの、やっと将さんと朝ちゃんに会えたの、家に帰るの!」
そう頼子は叫び茂の服を掴み走り出した。
とっさな事で驚いた茂だが思わず一緒に走っていた。
走り出した頼子を見て慌てて背の低い女性も追いかけるように走り出す。
「もう、あそこが頼子さんの家でしょ」
背の低い女性はそう叫びながら頼子を連れ戻そうと必死である。
「頼子さん? っていうの? 興奮してるよ、無理やり連れて行っても駄目だよ」
友那も三人の後を追い一緒に走り出す。
その時、背の低い声の女性と友那の目が合い友那は目を見開く。
「由紀」
背の低い少女の名を友那はそう呼んだ。
「友那、どうして友那が?」
友那から声をかけられ振り返った由紀の表情は、驚きに声がうまく出ない様子だった。
「なんか成り行きでと言うか、頼子さん?うちの施設の人だったんだ?」
「友那が辞めた後すぐ、入居が決まったんだ」
友那が頼子と一緒にいたという事が分かり由紀の表情が緩んだ。
「家族に連絡して迎えに来てもらおうか? あの人の事、旦那と思っているみたいだけど、本当の旦那さんは?」
友那は畳みかけるように由紀に質問を投げかけた。
「一年前に亡くなって......。旦那さんが奥さんの面倒を看てたみたいなんだけど、疲れが出たんだろうね、でも家族さんも旦那さんが亡くなってすぐ施設に入れるなんてね。今回の事も家族は文句ばかりで自分で頼子さんを探そうともしないで自分たちは仕事で忙しい、施設が責任取ってくれの一点張りよ」
寂しそうに由紀は笑う。
仕事と介護の両立をしていた頃の辛い日々を思い出しているかのように友那は寂しく笑った。
「まあ介護は家族にとっては二四時間だからね」
「そうだよね」
二人がそう話していたすきに茂を掴みどんどん先に頼子は走っていく。
走ると言っても高齢者二人がいくら走ってもさほどの距離ではなかった。
頼子は目の前に軽自動車のトランクが開いているのを目にした。
ボックスタイプの軽自動車で中には木々や刈った草花などが乱雑に入っており頼子は隠れるようにその中によじ登り木々に紛れ隠れた。
慌てて頼子を下ろそうと茂もトランクの中に上り込んだ時であった。
「早くしないと日が暮れちまうぞ。コスモス苑にも寄らなきゃなんねーんだぞ」
後ろから男二人の声が聞こえた。
しゃべっている男の前には背の低い筋肉隆々の男が前が見えないほどの木々を持って歩いており、茂と頼子が乗っていることに気が付かず覆い隠す様に木々をトランクの中に積みトランクを占める。
「分かってますよ」
もう一人がそう答えると、男二人は軽自動車に乗り込み発車してしまった。
後ろから友那と由紀が叫んでいるのも気が付かないような慌てぶりだった。
「ちょっ、ちょっとその車待った!」
由紀と友那は必死に追いかけるもさすがに車と人間じゃ追いつかない。
「友那、どうしよう!」
由紀の泣きそうな声が響く。
「大丈夫!二人が慌てて荷台に足を乗せて居るのが見えたから怪我の心配はない」
悠長に答える友那にますます不安と不満が募る由紀である。
「何言ってるの、何かあったら本当に施設の責任になっちゃう」
興奮している由紀は目元と顔が真っ赤である。
「由紀、携帯持ってるよね? 私の携帯、あのお年寄り達が荷物事持って行ったの」
そう友那は言いながらにやっと笑う。
「GPS!」
そうは持った後、近くに止めていた由紀の車で頼子と茂を乗せた軽自動車の後を追った。
そう茂が考えていたその時、
「あっ頼子さん」
後ろから低い女性の声が響いた。
振り返ると友那さんと同い年ぐらいの女性が安心したように胸を抑えていた。
走っていたのだろう息をするのもやっとという感じだった。
頼子は女性の顔を見た途端、表情をけわしくした。
「いや、私は将さんと行くの、やっと将さんと朝ちゃんに会えたの、家に帰るの!」
そう頼子は叫び茂の服を掴み走り出した。
とっさな事で驚いた茂だが思わず一緒に走っていた。
走り出した頼子を見て慌てて背の低い女性も追いかけるように走り出す。
「もう、あそこが頼子さんの家でしょ」
背の低い女性はそう叫びながら頼子を連れ戻そうと必死である。
「頼子さん? っていうの? 興奮してるよ、無理やり連れて行っても駄目だよ」
友那も三人の後を追い一緒に走り出す。
その時、背の低い声の女性と友那の目が合い友那は目を見開く。
「由紀」
背の低い少女の名を友那はそう呼んだ。
「友那、どうして友那が?」
友那から声をかけられ振り返った由紀の表情は、驚きに声がうまく出ない様子だった。
「なんか成り行きでと言うか、頼子さん?うちの施設の人だったんだ?」
「友那が辞めた後すぐ、入居が決まったんだ」
友那が頼子と一緒にいたという事が分かり由紀の表情が緩んだ。
「家族に連絡して迎えに来てもらおうか? あの人の事、旦那と思っているみたいだけど、本当の旦那さんは?」
友那は畳みかけるように由紀に質問を投げかけた。
「一年前に亡くなって......。旦那さんが奥さんの面倒を看てたみたいなんだけど、疲れが出たんだろうね、でも家族さんも旦那さんが亡くなってすぐ施設に入れるなんてね。今回の事も家族は文句ばかりで自分で頼子さんを探そうともしないで自分たちは仕事で忙しい、施設が責任取ってくれの一点張りよ」
寂しそうに由紀は笑う。
仕事と介護の両立をしていた頃の辛い日々を思い出しているかのように友那は寂しく笑った。
「まあ介護は家族にとっては二四時間だからね」
「そうだよね」
二人がそう話していたすきに茂を掴みどんどん先に頼子は走っていく。
走ると言っても高齢者二人がいくら走ってもさほどの距離ではなかった。
頼子は目の前に軽自動車のトランクが開いているのを目にした。
ボックスタイプの軽自動車で中には木々や刈った草花などが乱雑に入っており頼子は隠れるようにその中によじ登り木々に紛れ隠れた。
慌てて頼子を下ろそうと茂もトランクの中に上り込んだ時であった。
「早くしないと日が暮れちまうぞ。コスモス苑にも寄らなきゃなんねーんだぞ」
後ろから男二人の声が聞こえた。
しゃべっている男の前には背の低い筋肉隆々の男が前が見えないほどの木々を持って歩いており、茂と頼子が乗っていることに気が付かず覆い隠す様に木々をトランクの中に積みトランクを占める。
「分かってますよ」
もう一人がそう答えると、男二人は軽自動車に乗り込み発車してしまった。
後ろから友那と由紀が叫んでいるのも気が付かないような慌てぶりだった。
「ちょっ、ちょっとその車待った!」
由紀と友那は必死に追いかけるもさすがに車と人間じゃ追いつかない。
「友那、どうしよう!」
由紀の泣きそうな声が響く。
「大丈夫!二人が慌てて荷台に足を乗せて居るのが見えたから怪我の心配はない」
悠長に答える友那にますます不安と不満が募る由紀である。
「何言ってるの、何かあったら本当に施設の責任になっちゃう」
興奮している由紀は目元と顔が真っ赤である。
「由紀、携帯持ってるよね? 私の携帯、あのお年寄り達が荷物事持って行ったの」
そう友那は言いながらにやっと笑う。
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そうは持った後、近くに止めていた由紀の車で頼子と茂を乗せた軽自動車の後を追った。
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