10 / 14
第9話 認知症とは
しおりを挟む
物思いにふけりながら茂はこの風変りの小旅行を楽しんでいた。
朝と呼ばれるその女性は色々な場面で二人をフォローしてくれた。
段差を上がれなかったら支えてくれたり荷物を持ってくれたり、笑顔も可愛くとても好感が持てた。
たまに寂しそうにする横顔に少し心配になってしまう茂だった。
電車の中で、頼子が眠ってしまった時、茂は女性に尋ねた。
「朝ちゃんだったかな?どうして他人のワシまでこんなに親切にしてくれるんだい」
朝と呼ばれている女性は始め茂が言った言葉の意味が分からず首を傾げたがその後、分かったかの様にしゃべり始めた。
「ああ、私、誤解されているかもしれない。私、朝って名前じゃないよ。本名は友那って言うんだ」
そう困ったように笑いながら朝と呼ばれていた女性が答えた。
「へっ、この人の孫じゃないのかい?」
茂は困ったように目を丸くした。
「もちろん、えっあなたはこの方の旦那さんだよね?」
友那も負けないくらいびっくりした表情で言葉を返した。
「まさか、ワシも赤の他人じゃよ。ワシの本当の名前は茂じゃ」
二人して顔を見合わせ頼子に目線を移す。
「こんなこと言ったら失礼かもしれないだけど」
そういった後、友那はじっくり考える様に自分の顎に手を添えて、声を潜めながら話し始めた。
「このおばあちゃん、認知症なんじゃないかな?」
びっくりしてもう一度、頼子を見るとぐっすりと眠っている。
「えっまさか普通に会話していたじゃないか」
認知症、茂がずっと恐れていた病名だった。
親戚、友達には運よくその症状の人はいないと思っていたが......。
まさか認知症の人がこんなに普通に会話できるなんて茂は知らなかった。
もしかして、自分も偏見があったかもしれない。
友達、親戚にも気づかなかっただけで認知症の人は居たかもしれないそう茂は思った。
「認知の人は自覚がないんだよ。このおばあちゃんには私達が本当に将さんと朝ちゃんなんだよ」
そう語る友那の口調は専門家のような口ぶりだった。
「じゃー警察に預けた方がええんかね」
現実を突きつけられ事の重大さを意識し始めた茂は頼子の気持ちよさそうな幸せそうな寝顔を見ながら迷っていた。
朝と呼ばれるその女性は色々な場面で二人をフォローしてくれた。
段差を上がれなかったら支えてくれたり荷物を持ってくれたり、笑顔も可愛くとても好感が持てた。
たまに寂しそうにする横顔に少し心配になってしまう茂だった。
電車の中で、頼子が眠ってしまった時、茂は女性に尋ねた。
「朝ちゃんだったかな?どうして他人のワシまでこんなに親切にしてくれるんだい」
朝と呼ばれている女性は始め茂が言った言葉の意味が分からず首を傾げたがその後、分かったかの様にしゃべり始めた。
「ああ、私、誤解されているかもしれない。私、朝って名前じゃないよ。本名は友那って言うんだ」
そう困ったように笑いながら朝と呼ばれていた女性が答えた。
「へっ、この人の孫じゃないのかい?」
茂は困ったように目を丸くした。
「もちろん、えっあなたはこの方の旦那さんだよね?」
友那も負けないくらいびっくりした表情で言葉を返した。
「まさか、ワシも赤の他人じゃよ。ワシの本当の名前は茂じゃ」
二人して顔を見合わせ頼子に目線を移す。
「こんなこと言ったら失礼かもしれないだけど」
そういった後、友那はじっくり考える様に自分の顎に手を添えて、声を潜めながら話し始めた。
「このおばあちゃん、認知症なんじゃないかな?」
びっくりしてもう一度、頼子を見るとぐっすりと眠っている。
「えっまさか普通に会話していたじゃないか」
認知症、茂がずっと恐れていた病名だった。
親戚、友達には運よくその症状の人はいないと思っていたが......。
まさか認知症の人がこんなに普通に会話できるなんて茂は知らなかった。
もしかして、自分も偏見があったかもしれない。
友達、親戚にも気づかなかっただけで認知症の人は居たかもしれないそう茂は思った。
「認知の人は自覚がないんだよ。このおばあちゃんには私達が本当に将さんと朝ちゃんなんだよ」
そう語る友那の口調は専門家のような口ぶりだった。
「じゃー警察に預けた方がええんかね」
現実を突きつけられ事の重大さを意識し始めた茂は頼子の気持ちよさそうな幸せそうな寝顔を見ながら迷っていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
妻(さい)
谷川流慕
現代文学
リストラで職を失い、バイトで食いつなぐが、生まれつきの不器用さで、どこへ行っても仕事がうまくいかない。そんなダメ男である僕にとって唯一の宝は、良妻賢母の妻とやんちゃだが可愛い子どもたちだった。妻は再婚であり、前夫とは死別していたのだが、なぜかその死因については話そうとしない。気になりつつ平穏な家庭生活を送るのだが……
女子小学五年生に告白された高校一年生の俺
think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。
幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。
司優里という小学五年生の女の子に出会う。
彼女は体調不良だった。
同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。
そうしたことで彼女に好かれてしまい
告白をうけてしまう。
友達からということで二人の両親にも認めてもらう。
最初は妹の様に想っていた。
しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
Tokyo Flowers
シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる