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第9話 認知症とは
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物思いにふけりながら茂はこの風変りの小旅行を楽しんでいた。
朝と呼ばれるその女性は色々な場面で二人をフォローしてくれた。
段差を上がれなかったら支えてくれたり荷物を持ってくれたり、笑顔も可愛くとても好感が持てた。
たまに寂しそうにする横顔に少し心配になってしまう茂だった。
電車の中で、頼子が眠ってしまった時、茂は女性に尋ねた。
「朝ちゃんだったかな?どうして他人のワシまでこんなに親切にしてくれるんだい」
朝と呼ばれている女性は始め茂が言った言葉の意味が分からず首を傾げたがその後、分かったかの様にしゃべり始めた。
「ああ、私、誤解されているかもしれない。私、朝って名前じゃないよ。本名は友那って言うんだ」
そう困ったように笑いながら朝と呼ばれていた女性が答えた。
「へっ、この人の孫じゃないのかい?」
茂は困ったように目を丸くした。
「もちろん、えっあなたはこの方の旦那さんだよね?」
友那も負けないくらいびっくりした表情で言葉を返した。
「まさか、ワシも赤の他人じゃよ。ワシの本当の名前は茂じゃ」
二人して顔を見合わせ頼子に目線を移す。
「こんなこと言ったら失礼かもしれないだけど」
そういった後、友那はじっくり考える様に自分の顎に手を添えて、声を潜めながら話し始めた。
「このおばあちゃん、認知症なんじゃないかな?」
びっくりしてもう一度、頼子を見るとぐっすりと眠っている。
「えっまさか普通に会話していたじゃないか」
認知症、茂がずっと恐れていた病名だった。
親戚、友達には運よくその症状の人はいないと思っていたが......。
まさか認知症の人がこんなに普通に会話できるなんて茂は知らなかった。
もしかして、自分も偏見があったかもしれない。
友達、親戚にも気づかなかっただけで認知症の人は居たかもしれないそう茂は思った。
「認知の人は自覚がないんだよ。このおばあちゃんには私達が本当に将さんと朝ちゃんなんだよ」
そう語る友那の口調は専門家のような口ぶりだった。
「じゃー警察に預けた方がええんかね」
現実を突きつけられ事の重大さを意識し始めた茂は頼子の気持ちよさそうな幸せそうな寝顔を見ながら迷っていた。
朝と呼ばれるその女性は色々な場面で二人をフォローしてくれた。
段差を上がれなかったら支えてくれたり荷物を持ってくれたり、笑顔も可愛くとても好感が持てた。
たまに寂しそうにする横顔に少し心配になってしまう茂だった。
電車の中で、頼子が眠ってしまった時、茂は女性に尋ねた。
「朝ちゃんだったかな?どうして他人のワシまでこんなに親切にしてくれるんだい」
朝と呼ばれている女性は始め茂が言った言葉の意味が分からず首を傾げたがその後、分かったかの様にしゃべり始めた。
「ああ、私、誤解されているかもしれない。私、朝って名前じゃないよ。本名は友那って言うんだ」
そう困ったように笑いながら朝と呼ばれていた女性が答えた。
「へっ、この人の孫じゃないのかい?」
茂は困ったように目を丸くした。
「もちろん、えっあなたはこの方の旦那さんだよね?」
友那も負けないくらいびっくりした表情で言葉を返した。
「まさか、ワシも赤の他人じゃよ。ワシの本当の名前は茂じゃ」
二人して顔を見合わせ頼子に目線を移す。
「こんなこと言ったら失礼かもしれないだけど」
そういった後、友那はじっくり考える様に自分の顎に手を添えて、声を潜めながら話し始めた。
「このおばあちゃん、認知症なんじゃないかな?」
びっくりしてもう一度、頼子を見るとぐっすりと眠っている。
「えっまさか普通に会話していたじゃないか」
認知症、茂がずっと恐れていた病名だった。
親戚、友達には運よくその症状の人はいないと思っていたが......。
まさか認知症の人がこんなに普通に会話できるなんて茂は知らなかった。
もしかして、自分も偏見があったかもしれない。
友達、親戚にも気づかなかっただけで認知症の人は居たかもしれないそう茂は思った。
「認知の人は自覚がないんだよ。このおばあちゃんには私達が本当に将さんと朝ちゃんなんだよ」
そう語る友那の口調は専門家のような口ぶりだった。
「じゃー警察に預けた方がええんかね」
現実を突きつけられ事の重大さを意識し始めた茂は頼子の気持ちよさそうな幸せそうな寝顔を見ながら迷っていた。
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