とある変態紳士の供述

あぶらみん

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変態紳士は眠らない

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ペン先が机を叩く硬い音で満ちていた。

みながみな、顔を下に向け机の上に置かれた1枚の紙切れに意識を集中させている。

無論、ぼくもそのうちのひとりだ。

紙に印字された問題文を読み、解答欄に答えを記入していく。

カッカッカッカッカ!

意識的にペンを大きく鳴らし、次の問題へとうつる。

一定のリズムを刻みながらそれを繰り返した。

これは持論だが、テストを解く時に最も重要なのは知識じゃあない。リズムなのだ。

己の魂の旋律に耳をすませば自然と身体が動き、解答欄は埋まっていく。

ぼくにとってテストなどというものは、お昼休みに友人とお巫山戯で興じるタップダンスのようなものだ。

まるでイルカが海を泳ぐみたいに自然な動作でぼくの握るペンがはしり、白い答案用紙を黒く染めていく。

そうして30分ほどテスト用紙にダンスを刻んだところで、全ての解答欄が埋められた。

「ふう…」

一息付きペンを置いてからもう一度テスト用紙を見やり、恍惚の笑みを浮かべる。

均整のとれた文字が精密に並ぶそれは、まさに流麗という他なかった。

まるで完璧な小説のように、あるいはひとつの穢れもない新雪のように。

会心の出来に満足して、暇を持て余したぼくは視線を上げて周りを観察した。

既に解答を終えぼんやりと空を見るもの、間違いがないか再度確認するもの、解のわからぬ問題に頭を悩ませるもの。

様々な生徒がいたが、ぼくの気を惹くようなことは何も無かった。

「ふわぁ…」

あまりの退屈に口元が緩む。

換気のために開け放たれた窓から、あたたかい風がふわりと吹き込んでカーテンを優しく撫でてた。

そんな陽気さが、ぼくの意識を微睡みの中に導いていった。


カラン。

何かの音で、うつろんでいたぼくの脳は覚醒した。

寝ぼけ眼をゴシゴシと手で擦って、顔を上げて教室を見渡した。

先程よりも手を動かすものが減ってはいたが、どうやらまだテストは終わっていないらしい。

時計を見ると10分ほど経過していた。

退屈だったとはいえテスト中に寝てしまうとは、ぼくとしたことが何たる体たらくか。

心中で自分を罰し、贖いとばかりに見直しを始めた。

ひとしきり確認し終えたところで、ぼくは自分のペンが机から姿を消していることに気づいた。

おおかた船を漕いでいるときに下に落としてしまったのだと見当をつけ、床に視線を下げる。

案の定、ペンはぼくの足元近くにぽつねんと転がっていた。

カンニングと誤解されないように、そろりと身を屈める。

手を伸ばしてペンを回収すると、ペン全体がしっとりと濡れていた。

なんだこれは?ぼくが寝ている間に誰か茶でもこぼしたか?

怪訝な顔で再び周囲に目をやると、生徒たちがザワザワとさざめき立っていた。

生徒の視線の集まる先に目をやると、ひとりの女生徒が俯いて肩を震わせていた。

その女生徒の椅子からは液体が滴り落ち、床に黄色い水たまりをつくっていた。

監督の教師が慌てて女生徒に駆け寄り、保健室に行くように促した。

女生徒は顔を耳まで赤く染めて立ち上がり、教室のドアまで歩いていく。

彼女のスカートの臀部の辺りに、シミが広がっていた。

それでぼくもやっと事態が呑み込めた。

彼女は漏らしてしまったのだ。

そんなに我慢しないで素直にトイレに行けば良かったのに、と冷徹な感想を抱いたところで、教師が唐突にぼくの名を呼ぶ。

「ロッカーに掃除用の雑巾があるからそれで床を拭いといてくれ」


「はっ…え?」


反射的に返事をしそうになるが何とか言葉を飲み込んで、ぼくは教師に聞き返した。


「なんでぼくなんですか?」


「いや、お前暇そうにしてたし、後ろの席だし丁度いいだろ」


相手は教師だ。

不本意ではあるがぼくは承諾するしかなかった。

席をたちロッカーへいき、雑巾を取り出してから水溜まりの前で立ち尽くす。

教師の急かす声に押されて渋々腰を落とし、雑巾を黄色い世界へとダイブさせた。

乾ききった雑巾はまるでスポンジのようにそれを吸収し、あっという間にびちゃびちゃになった。

雑巾をバケツの上で絞ってから床を拭き、また絞って拭いた。

繰り返すうちに、ぼくは不意にこのおしっこの生みの親である彼女のことを考えていた。

彼女はとても整った顔立ちをしており、学年でもトップクラスに入るほどの美貌の持ち主だった。

そんな彼女の汚物をぼくが処理している。

その事実がぼくの心臓を激しく動悸させた。

「ハァ…ハァ…」

息を荒げて、おしっこを見つめる。

これが…彼女の…。

気づくと、ほのかにしめった自分の指先をペロリと舐めていた。

苦味の奥に、ただ深く芳醇な包容力を感じる。

これが、彼女の持つ味なのだ…。ぼくはそう確信した。

それからというもの、ぼくは女性のおしっこを愛飲することに至上の喜びを見出す身体になってしまったのだ。

ぼくがおしっこを飲んだことを、彼女が知ることは無い。
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