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前編
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「レイラ!今日は俺と一緒に剣の稽古しよう!」
「レイラ。僕と精霊の湖にお散歩デートしに行きませんか?」
「はぁ!?レイラは俺と稽古するんだよ!!」
「違います。レイラは僕と精霊王に結婚の挨拶をしに行くんです」
「けっ……!?だから!レイラは俺と結婚するの!」
「ふっ……あなたはまだプロポーズもしていないじゃないですか」
「うぐぅ……!?」
今日も、可愛い子猫たちが元気だ。喧嘩の内容は聞かなかったことにする。
「レイラ!ユリウスが俺をいじめるぅ!」
「レイラ。カーディのような腰抜けは置いて、早くデートに行きましょう」
お前たち、俺に現実逃避もさせてくれないのか……。とりあえず頭撫でておこう。よしよし。喧嘩はやめようねー。
ユリウスが俺の養子となり、正式に息子として登録されてからひと月が経った。ユリウスは俺と親子になったことに関しては納得してくれた。完全に事後承諾になってしまったことは申し訳なく思ったが、本人は逆に喜んでくれたのでよかったと思うことにした。「息子に下剋上された時のレイラも可愛いだろうなぁ」などと呟いていたことなど、俺は知らない。知らないったら知らない。
これからは俺とカーディアスを断罪する側であるユリウスと仲良くしていこうと決意を新たにしたのだが、ここで思ってもいなかった大問題が発生してしまった。意外なことにあの聞き分けの良い、いい子に育っていたカーディアスが反抗期になってしまったのだ。俺のことをレイラと呼び捨てにし始め、敬語もなくなった。一人称も「俺」にし、事あるごとにユリウスと衝突している。
とは言っても、俺を毛嫌いするのではなく、むしろ鳥の雛のようについてまわろうとするのはどうなのだろうか。嫌われて避けられるよりはマシなのだが、それでまたユリウスと口論になるのだ。そこにデリスも割り込むのだからたまらない。デリスが大人げなく子どもの喧嘩に割り込むことの良い点は、デリスが圧勝して俺が早く大岡引きから解放されることだけだ。
「お前たち、毎日よく飽きずに喧嘩できるな。そこまで仲良くなるとは、父さんも嬉しいぞ」
「「別に仲良くない」」
ほら、仲が良い。今にも唸り出しそうなほど威嚇しあっている2人の頭を撫でることで物理的な衝突を抑えていると、やっとデリスがやってきた。その服装はいつもの執事服とは違い、外出用の私服だ。ちょっとおしゃれなシャツなのに、なんであんなにオシャレに見えるんだろう。イケメンって本当にいいよな。
「デリス、馬車の準備ができたのか?」
「はい、お待たせして申し訳ございません」
「そこまで待ってないからいい。ちょうどこの2人が話し相手になってくれていたからな」
「そうですか。では、行きましょう」
「レイラ?どこかに行くんですか?」
「え、でも昨日何も言ってなかったのに……」
俺が外出すると知って、2人揃ってシュン……と落ち込む。まだ2人は俺と一緒に外出できない。社交界にデビューしていないからだ。本当ならもうとっくにしているのだが、色々と理由があって先延ばしになっている。カーディアスに関しては、すでにライアー家でデビューをしているが、パトリー家ではまだだ。
「悪いな。今から王都に行くんだ。戻ってこれるのは明後日だな」
「二日間も!?」
「嫌です!僕も一緒に行きます!」
「俺も行く!!」
「分かってるだろ?お前たちはお留守番だ」
悔しそうに、唇を噛む2人。ユリウスはぎゅっと俺の服の裾を握って無言の訴えをしている。カーディアスは大きな目をうるうるとさせていて、今にも泣きそうだ。まったく、手のかかる可愛い息子たちだなぁ。
「いいか?俺の代理として、息子であるお前たちにこの屋敷の管理を二日間任せる。俺の代わりに、立派にこの屋敷を守れよ。ちゃんと俺の留守を守れたら、お前たちを立派な男だと認めてやる」
「立派な」
「男?」
この2人はことあるごとに、どっちが男らしいかを俺に尋ねてきていた。そろそろ男として認められたい時期なんだろう。俺から見ればまだまだ子どもだが、そろそろステップアップさせてもいいかもしれない。どちらにしろ、一度は王都で茶会に顔を出さなければならないのだから、いい機会だ。
でも、俺はこの「男として認める」発言を公開することになるとは思わなかった。デリスの「あーあ」と言わんばかりの呆れ顔に気が付いてさえいれば、これからの「どちらがレイラの男として魅力的か」なんて息子たちの争いは起こらなかったかもしれないのに。
いや、これは必ずいつかは起きた案件かもしれない。俺の息子たち、肉食すぎない?そろそろ父親を射程圏内から外してくれないかな……と、王都から帰った日の夜に俺は遠い目をすることになるのだが、残念ながら予知能力がない俺は、デリスと共に王都に向かったのだった。
※他作品でもお伝えしているのですが、これから気まぐれ更新となります。
ゆっくりと更新をお待ちいただければ幸いですm(_ _)m
「レイラ。僕と精霊の湖にお散歩デートしに行きませんか?」
「はぁ!?レイラは俺と稽古するんだよ!!」
「違います。レイラは僕と精霊王に結婚の挨拶をしに行くんです」
「けっ……!?だから!レイラは俺と結婚するの!」
「ふっ……あなたはまだプロポーズもしていないじゃないですか」
「うぐぅ……!?」
今日も、可愛い子猫たちが元気だ。喧嘩の内容は聞かなかったことにする。
「レイラ!ユリウスが俺をいじめるぅ!」
「レイラ。カーディのような腰抜けは置いて、早くデートに行きましょう」
お前たち、俺に現実逃避もさせてくれないのか……。とりあえず頭撫でておこう。よしよし。喧嘩はやめようねー。
ユリウスが俺の養子となり、正式に息子として登録されてからひと月が経った。ユリウスは俺と親子になったことに関しては納得してくれた。完全に事後承諾になってしまったことは申し訳なく思ったが、本人は逆に喜んでくれたのでよかったと思うことにした。「息子に下剋上された時のレイラも可愛いだろうなぁ」などと呟いていたことなど、俺は知らない。知らないったら知らない。
これからは俺とカーディアスを断罪する側であるユリウスと仲良くしていこうと決意を新たにしたのだが、ここで思ってもいなかった大問題が発生してしまった。意外なことにあの聞き分けの良い、いい子に育っていたカーディアスが反抗期になってしまったのだ。俺のことをレイラと呼び捨てにし始め、敬語もなくなった。一人称も「俺」にし、事あるごとにユリウスと衝突している。
とは言っても、俺を毛嫌いするのではなく、むしろ鳥の雛のようについてまわろうとするのはどうなのだろうか。嫌われて避けられるよりはマシなのだが、それでまたユリウスと口論になるのだ。そこにデリスも割り込むのだからたまらない。デリスが大人げなく子どもの喧嘩に割り込むことの良い点は、デリスが圧勝して俺が早く大岡引きから解放されることだけだ。
「お前たち、毎日よく飽きずに喧嘩できるな。そこまで仲良くなるとは、父さんも嬉しいぞ」
「「別に仲良くない」」
ほら、仲が良い。今にも唸り出しそうなほど威嚇しあっている2人の頭を撫でることで物理的な衝突を抑えていると、やっとデリスがやってきた。その服装はいつもの執事服とは違い、外出用の私服だ。ちょっとおしゃれなシャツなのに、なんであんなにオシャレに見えるんだろう。イケメンって本当にいいよな。
「デリス、馬車の準備ができたのか?」
「はい、お待たせして申し訳ございません」
「そこまで待ってないからいい。ちょうどこの2人が話し相手になってくれていたからな」
「そうですか。では、行きましょう」
「レイラ?どこかに行くんですか?」
「え、でも昨日何も言ってなかったのに……」
俺が外出すると知って、2人揃ってシュン……と落ち込む。まだ2人は俺と一緒に外出できない。社交界にデビューしていないからだ。本当ならもうとっくにしているのだが、色々と理由があって先延ばしになっている。カーディアスに関しては、すでにライアー家でデビューをしているが、パトリー家ではまだだ。
「悪いな。今から王都に行くんだ。戻ってこれるのは明後日だな」
「二日間も!?」
「嫌です!僕も一緒に行きます!」
「俺も行く!!」
「分かってるだろ?お前たちはお留守番だ」
悔しそうに、唇を噛む2人。ユリウスはぎゅっと俺の服の裾を握って無言の訴えをしている。カーディアスは大きな目をうるうるとさせていて、今にも泣きそうだ。まったく、手のかかる可愛い息子たちだなぁ。
「いいか?俺の代理として、息子であるお前たちにこの屋敷の管理を二日間任せる。俺の代わりに、立派にこの屋敷を守れよ。ちゃんと俺の留守を守れたら、お前たちを立派な男だと認めてやる」
「立派な」
「男?」
この2人はことあるごとに、どっちが男らしいかを俺に尋ねてきていた。そろそろ男として認められたい時期なんだろう。俺から見ればまだまだ子どもだが、そろそろステップアップさせてもいいかもしれない。どちらにしろ、一度は王都で茶会に顔を出さなければならないのだから、いい機会だ。
でも、俺はこの「男として認める」発言を公開することになるとは思わなかった。デリスの「あーあ」と言わんばかりの呆れ顔に気が付いてさえいれば、これからの「どちらがレイラの男として魅力的か」なんて息子たちの争いは起こらなかったかもしれないのに。
いや、これは必ずいつかは起きた案件かもしれない。俺の息子たち、肉食すぎない?そろそろ父親を射程圏内から外してくれないかな……と、王都から帰った日の夜に俺は遠い目をすることになるのだが、残念ながら予知能力がない俺は、デリスと共に王都に向かったのだった。
※他作品でもお伝えしているのですが、これから気まぐれ更新となります。
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