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前編
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『お帰りなさいませ!』
「うん......」
途中で牛の行列の横断に立ち往生したが、その他は特に何事もなく屋敷に到着した。
初めて見るこの屋敷の管理をしている者たちと、本邸から連れてきた数人が門の側で待機し、俺たちを出迎えてくれた・・・・・・のだが、初めて来たのに「おかえりなさい」とは。返事に困るだろ。
「俺はレイラ・パトリック......あー、パトリック家の次男だった者だ」
「なんですか、その自己紹介は」
「いや、俺名前変わったの忘れてた」
上司がいきなり変な挨拶かましてもざわつかない諸君、流石パトリック家の使用人だ。末端と言ってもいい、この地区の屋敷にまで部下の教育が行き届いているとは。関心するね。
「改めて、今日からこの屋敷の主人となったパトリー家当主のレイラだ。こっちはカーディアス。聞いていると思うが、一応俺の息子だ」
「・・・・・・」
「これからよろしく頼む」
人見知りしているのか、デリスの後ろに隠れるカーディアス。まずは挨拶から教育していくか。
使用人だからって横柄な態度をとってはいけない。いくらお貴族様でも俺たちはホワイトな職場を彼らに提供しなくてはならないんだ。ホワイトな企業はトップの人間が清掃の人にまで挨拶をするって何かで見た。やっぱ挨拶って大事だよな。
「レイラ様、カーディアス様。ようこそお越しくださいました。私はこの屋敷を任されております、ターニャと申します。ずっと、旦那様のお帰りを屋敷と共にお待ち申し上げておりました。パトリー家の主となられたレイラ様の家となられることを、とても名誉に思いますわ。こちらこそ、これからよろしくお願いいたします」
そう挨拶してきたのは、物腰の柔らかそうな女性だ。優しげな微笑みを浮かべながらも、気品を感じる立ち姿に感心する。正直、こんなど田舎にいるべき人材じゃないと思うレベルを感じる。これは、思ったより良物件だったかもしれない。
パトリック家の分家とはいえ、原作と同じようにパトリックと名乗ることは、俺には許されなかった。完全にパトリック家の中から俺を排除したかったようだ。国王陛下にパトリーという名のパトリックの分家貴族として俺は認められているから、今までと社交会での待遇自体は変わらない。変なゴシップが出回るくらいだが、こんなど田舎で社交も何もない。
パトリック家の使用人と名乗りたかっただろうにそれをおくびにも出さないどころか、名前も変えられた分家の本邸になれたことを本当に名誉に思ってくれていることは、ターニャの目から分かる。他の使用人もだ。期待と誇りに顔が輝いている。これまでの本家からの関心の薄さが見て取れるその表情に胸が痛んだ。関心を抱かれないって、辛いよな。
こんな俺が屋敷の主人になってしまって少しだけ罪悪感がわいた。でも安心しろ。こんなデブのニートだけじゃなくて、将来有望な天使も連れて来たからな。
「よろしく、ターニャ。ほら、お前も挨拶しなさい」
未だデリスの影に隠れているカーディアスに声をかけると、おずおずと顔を出した。
その瞬間、使用人たちがカーディアスに堕ちたのを俺は察した。なんとか真面目な顔を崩さないようにしながらも身体を震わせる者。口を両手で押さえて目の中にハートを浮かべ、尊さの衝撃に打たれる者。立ちながら尊さで天に召されようとしている者......e.t.c.。
「・・・・・・よろしく」
一言発して、またデリスの後ろに引っ込んだだけだったが、使用人たちを骨抜きにするには十分だった。
「ターニャ、デリスと一緒にカーディの専属執事を選抜してくれ。剣術もやりたいみたいだから、剣の扱いが上手い者の中からな」
「かしこまりました。厳正な書類審査の上、面接を行い、更に試練を突破した者の中から厳重に選抜いたしますわ」
勇者の就職試験みたいになってるぞ。それ最後まで残れる奴がいたらとりあえず褒美でも与えよう。
「・・・・・・まぁ、ほどほどにな」
「えぇ。全力でやらせていただきますわ」
ガチじゃん。
「うん......」
途中で牛の行列の横断に立ち往生したが、その他は特に何事もなく屋敷に到着した。
初めて見るこの屋敷の管理をしている者たちと、本邸から連れてきた数人が門の側で待機し、俺たちを出迎えてくれた・・・・・・のだが、初めて来たのに「おかえりなさい」とは。返事に困るだろ。
「俺はレイラ・パトリック......あー、パトリック家の次男だった者だ」
「なんですか、その自己紹介は」
「いや、俺名前変わったの忘れてた」
上司がいきなり変な挨拶かましてもざわつかない諸君、流石パトリック家の使用人だ。末端と言ってもいい、この地区の屋敷にまで部下の教育が行き届いているとは。関心するね。
「改めて、今日からこの屋敷の主人となったパトリー家当主のレイラだ。こっちはカーディアス。聞いていると思うが、一応俺の息子だ」
「・・・・・・」
「これからよろしく頼む」
人見知りしているのか、デリスの後ろに隠れるカーディアス。まずは挨拶から教育していくか。
使用人だからって横柄な態度をとってはいけない。いくらお貴族様でも俺たちはホワイトな職場を彼らに提供しなくてはならないんだ。ホワイトな企業はトップの人間が清掃の人にまで挨拶をするって何かで見た。やっぱ挨拶って大事だよな。
「レイラ様、カーディアス様。ようこそお越しくださいました。私はこの屋敷を任されております、ターニャと申します。ずっと、旦那様のお帰りを屋敷と共にお待ち申し上げておりました。パトリー家の主となられたレイラ様の家となられることを、とても名誉に思いますわ。こちらこそ、これからよろしくお願いいたします」
そう挨拶してきたのは、物腰の柔らかそうな女性だ。優しげな微笑みを浮かべながらも、気品を感じる立ち姿に感心する。正直、こんなど田舎にいるべき人材じゃないと思うレベルを感じる。これは、思ったより良物件だったかもしれない。
パトリック家の分家とはいえ、原作と同じようにパトリックと名乗ることは、俺には許されなかった。完全にパトリック家の中から俺を排除したかったようだ。国王陛下にパトリーという名のパトリックの分家貴族として俺は認められているから、今までと社交会での待遇自体は変わらない。変なゴシップが出回るくらいだが、こんなど田舎で社交も何もない。
パトリック家の使用人と名乗りたかっただろうにそれをおくびにも出さないどころか、名前も変えられた分家の本邸になれたことを本当に名誉に思ってくれていることは、ターニャの目から分かる。他の使用人もだ。期待と誇りに顔が輝いている。これまでの本家からの関心の薄さが見て取れるその表情に胸が痛んだ。関心を抱かれないって、辛いよな。
こんな俺が屋敷の主人になってしまって少しだけ罪悪感がわいた。でも安心しろ。こんなデブのニートだけじゃなくて、将来有望な天使も連れて来たからな。
「よろしく、ターニャ。ほら、お前も挨拶しなさい」
未だデリスの影に隠れているカーディアスに声をかけると、おずおずと顔を出した。
その瞬間、使用人たちがカーディアスに堕ちたのを俺は察した。なんとか真面目な顔を崩さないようにしながらも身体を震わせる者。口を両手で押さえて目の中にハートを浮かべ、尊さの衝撃に打たれる者。立ちながら尊さで天に召されようとしている者......e.t.c.。
「・・・・・・よろしく」
一言発して、またデリスの後ろに引っ込んだだけだったが、使用人たちを骨抜きにするには十分だった。
「ターニャ、デリスと一緒にカーディの専属執事を選抜してくれ。剣術もやりたいみたいだから、剣の扱いが上手い者の中からな」
「かしこまりました。厳正な書類審査の上、面接を行い、更に試練を突破した者の中から厳重に選抜いたしますわ」
勇者の就職試験みたいになってるぞ。それ最後まで残れる奴がいたらとりあえず褒美でも与えよう。
「・・・・・・まぁ、ほどほどにな」
「えぇ。全力でやらせていただきますわ」
ガチじゃん。
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