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「やっぱいるじゃねぇかよ。よぉ、深山。さっさと出て来いよ。久々の再会を楽しもうぜ」
ドガッ!
「はぁ……君にとって扉は絶対に蹴破らなきゃいけないものなの?」
「生意気言ってるんじゃないわよ。私たちが呼んでるんだから、早く出てきなさい」
この二人は、僕の立場を理解できていないらしい。もしかしたら、神尾くん以外は分かっていないのかもしれないな。彼は元々頭も良いし、この前ラスと一緒にいたところを見ている。でもこの二人はダメだろう。元々僕のことを虐げることが大好きだった二人だ。僕の言う事なんて聞きもしないだろう。
「なんで僕が君たちを出迎えないといかないのさ。ここはラスの部屋だよ。僕はここの主じゃない」
「だったらこの部屋から出ればいいだけだろ。俺たちの部屋に来いよ。みんなお前に会いたがってるぜ」
「断る。ラスがいない時はこの部屋から出ないように言われてるんだ。だから彼がいない時に来られても困る」
「ほんと、少し自由にさせてあげただけでここまで生意気になるなんてね。私は別にいいのよ。あんたが浩紀の前から消えてくれるなんて大歓迎。だけどね、捨てられたゴミの分際で彼の関心を奪うなんて許さないわよ」
扉越しでも感じる、強い憎悪。あぁ、女の嫉妬は怖いって言うけど、これは怖いってもんじゃないよ。神尾くんも、ちゃんと制御してほしいよね。
「そんなこと、僕は知らないよ。僕にはもう神尾くんは必要ないんだから」
「ラスティアさんの婚約者になったって話か? そんなものただの安っぽい同情だろ。お前がその貧相な身体で誘ったってみんな分かってんだ」
「私たちから逃げる手段にされたって団長さんが知ったら、あの優しい人でもあんたを捨てるに決まってるわ。あの人はここではなかなかの身分なんでしょ? 全部捨ててまであんたを助けるなんてありえない」
優しい人、か。ラスの部下たちでさえ彼の本性を知らないのだから、こいつらが知らなくてもしょうがないけど、面白いよね。ラスがただの優しい人にしか見えないなら、こいつらの目は節穴だな。恐らく、あの外見と優しそうなオーラに騙されただけだろうけど。
「君たちがどう思おうと勝手だよ。だけど、僕の立場は今かなり良いところにいるんだよね。王様にも婚約を祝福してもらったし。だから下手に行動できないんだ。そういう事情、いい加減分かってくれない?」
敢えて退屈そうに言うと、やはり彼らの怒りのボルテージは急速に限界を迎えた。そういう短絡的なところ、本当にアホらしいと思う。これからの旅で勝手に身内で潰れそう。
「つまり、あんたが私たちより上だって言うの? 浩紀に捨てられたあんたが? 浩紀に選ばれた私より?」
「そんなことあるわけねぇだろ! お前はこれまで通り俺らのサンドバッグやってればいいんだよ!」
「はぁ……ほんと君たちは馬鹿だよね。そもそも、今僕のところに来てるのって神尾くんの指示じゃないでしょ」
神尾くんなら、こんなリスクのある手は使わない。もっと自然に、堂々と僕と接触してくるはずだ。ついでに言うなら、この二人だけは絶対に使わない。これほど秘密の行動が合わない奴らはいないからね。ただ、教師に見つからないように虐めるって事に関しては天才だったかな。
「君たちのために言わせてもらうけど、この部屋全体に守護魔法がかかってるんだ。何かしらの攻撃が加えられれば、ラスの元に警告がいくようになってる。それがたとえ、扉であってもね」
「っ⁉」
ここまで言えば、察しの悪い彼らでも流石に分かっただろう。正直、守護魔法の件は嘘だけど、僕とラス以外の誰かが無理に扉を開けようとすれば警告が行くというのは本当だ。そんな度胸のある奴はいないと思ったけど、ここに何の問題なしの馬鹿がいたね。
「さっさと逃げなよ。時間的に、そろそろここに来る頃じゃないかな」
「っ、くそっ!」
「あんた、これで終わりだと思わないことね」
お手本のような悪役の逃げ台詞をありがとう。それ、実際に聞いてみたかったんだよね。
※表紙を変えてみました!
ドガッ!
「はぁ……君にとって扉は絶対に蹴破らなきゃいけないものなの?」
「生意気言ってるんじゃないわよ。私たちが呼んでるんだから、早く出てきなさい」
この二人は、僕の立場を理解できていないらしい。もしかしたら、神尾くん以外は分かっていないのかもしれないな。彼は元々頭も良いし、この前ラスと一緒にいたところを見ている。でもこの二人はダメだろう。元々僕のことを虐げることが大好きだった二人だ。僕の言う事なんて聞きもしないだろう。
「なんで僕が君たちを出迎えないといかないのさ。ここはラスの部屋だよ。僕はここの主じゃない」
「だったらこの部屋から出ればいいだけだろ。俺たちの部屋に来いよ。みんなお前に会いたがってるぜ」
「断る。ラスがいない時はこの部屋から出ないように言われてるんだ。だから彼がいない時に来られても困る」
「ほんと、少し自由にさせてあげただけでここまで生意気になるなんてね。私は別にいいのよ。あんたが浩紀の前から消えてくれるなんて大歓迎。だけどね、捨てられたゴミの分際で彼の関心を奪うなんて許さないわよ」
扉越しでも感じる、強い憎悪。あぁ、女の嫉妬は怖いって言うけど、これは怖いってもんじゃないよ。神尾くんも、ちゃんと制御してほしいよね。
「そんなこと、僕は知らないよ。僕にはもう神尾くんは必要ないんだから」
「ラスティアさんの婚約者になったって話か? そんなものただの安っぽい同情だろ。お前がその貧相な身体で誘ったってみんな分かってんだ」
「私たちから逃げる手段にされたって団長さんが知ったら、あの優しい人でもあんたを捨てるに決まってるわ。あの人はここではなかなかの身分なんでしょ? 全部捨ててまであんたを助けるなんてありえない」
優しい人、か。ラスの部下たちでさえ彼の本性を知らないのだから、こいつらが知らなくてもしょうがないけど、面白いよね。ラスがただの優しい人にしか見えないなら、こいつらの目は節穴だな。恐らく、あの外見と優しそうなオーラに騙されただけだろうけど。
「君たちがどう思おうと勝手だよ。だけど、僕の立場は今かなり良いところにいるんだよね。王様にも婚約を祝福してもらったし。だから下手に行動できないんだ。そういう事情、いい加減分かってくれない?」
敢えて退屈そうに言うと、やはり彼らの怒りのボルテージは急速に限界を迎えた。そういう短絡的なところ、本当にアホらしいと思う。これからの旅で勝手に身内で潰れそう。
「つまり、あんたが私たちより上だって言うの? 浩紀に捨てられたあんたが? 浩紀に選ばれた私より?」
「そんなことあるわけねぇだろ! お前はこれまで通り俺らのサンドバッグやってればいいんだよ!」
「はぁ……ほんと君たちは馬鹿だよね。そもそも、今僕のところに来てるのって神尾くんの指示じゃないでしょ」
神尾くんなら、こんなリスクのある手は使わない。もっと自然に、堂々と僕と接触してくるはずだ。ついでに言うなら、この二人だけは絶対に使わない。これほど秘密の行動が合わない奴らはいないからね。ただ、教師に見つからないように虐めるって事に関しては天才だったかな。
「君たちのために言わせてもらうけど、この部屋全体に守護魔法がかかってるんだ。何かしらの攻撃が加えられれば、ラスの元に警告がいくようになってる。それがたとえ、扉であってもね」
「っ⁉」
ここまで言えば、察しの悪い彼らでも流石に分かっただろう。正直、守護魔法の件は嘘だけど、僕とラス以外の誰かが無理に扉を開けようとすれば警告が行くというのは本当だ。そんな度胸のある奴はいないと思ったけど、ここに何の問題なしの馬鹿がいたね。
「さっさと逃げなよ。時間的に、そろそろここに来る頃じゃないかな」
「っ、くそっ!」
「あんた、これで終わりだと思わないことね」
お手本のような悪役の逃げ台詞をありがとう。それ、実際に聞いてみたかったんだよね。
※表紙を変えてみました!
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