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ヴォン……と、聖板が機械の起動音のような音を発した。一滴落とした血は、綺麗に消えている。そこには、薄い青色に発光する文字が刻まれた、白いままの板があった。
「無事に聖板にも登録されたようだな。その聖板に刻まれた文字は、登録されている持ち主の母国語で記されている。そのため、我々は読むことができないのだ。原理は分かっていないが、それがお主のこの世界での身分証明の証となる」
「なるほど……わかりました」
国王に促されて、聖板を手に取る。それは本当に薄っぺらい金属の板という感じだった。しかし、そこに刻まれている文字は紛れもない日本語だった。一緒にこの世界に持ち込まれていた教科書は時々暇つぶしに読んでいたから懐かしさとかはなかったけれど、真新しい文章というだけでも興味は惹かれた。
「では、女神より与えられた祝福を共に確認するとするか。神官長」
「かしこまりました。では、水晶による魔力測定で確認された、ミヤマ様の職業は魔術師。赤の魔力と青の魔力による複合型で、主に火のマナと水のマナの扱いに長け、更に神聖力のマナを操ることができる素質を持っております」
「魔術師で、火と水と神聖力のマナを操れる……。聖板にも同じことが書かれています。火と水のマナが赤と青の魔力ということは分かりますが、その二つの複合で神聖力のマナを操れるというのはどういった原理なんですか?単純な疑問なんですが……」
赤と青が混ざって紫は分かる。だけど、火と水が混ざって神聖力はありえないだろう。そもそも、神聖力ってなんだ。
「この世界では、魔法はマナを使って使用するのだが、操ることができるマナは生まれ持った魔力の色によって変わるのだ。赤の魔力は火のマナ。青の魔力は水のマナ。といったようにな。世界中にはあらゆるマナが溢れている。そのマナの数だけ、魔力の色が存在するのだ。マナ同士の混ざり合いは基本ありえないが、魔力は属性が違っても明確には色が違うということしか分かっていない。だから赤と青が混ざり合い紫の魔力が生まれると、必然的に神聖力のマナを操ることができるということしか分からないのだ」
「つまり『何故そうなのか』は分からないということですね」
「そうとも言えるな!」
「ワハハ!」と笑う国王を半眼で見る。できるだけ呆れたオーラを出したが、ご機嫌な国王が気づくことはなかった。
「基本的にこの世界の人間は単色の魔力のみを持っているのですが、時々例外がいます。複数の色の魔力を持つ者。これは王族や貴族に多いですね。そして、単色同士の混ざり合いで生まれる色の魔力も持つ者。ナチや私のような者です」
「団長さんも?」
「……名前」
「う……ラスも?」
渋々名前を言い直すと、彼は嬉しそうに微笑んだ。相変わらず綺麗な人だ。猫を被っていると知らなければ、もっと惚れたのにな……。
「私は赤、青、緑、黒、白の魔力の複合型。赤と青は火と水。緑は植物、黒は闇、白は光のマナを操ることができます」
「赤、青、緑、黒、白……光の三原色。しかもおそらく加法混色……ということは、ラスは他にも様々なマナを操ることができるのでは?」
加法混色とは、黒を下地として赤と青と緑を重ね合わせることで白に近付けながら色を作り出していく発色方法だ。複合型ということは、おそらく加法混色で混ざり合った魔力の色をわずかながらにも持っているはずだ。
「……驚いたな。それは王族と彼の家族、そして神官長以外は誰も知らないトップシークレットだというのに」
「陛下、それは去年までの話です。今は彼の成人をもって公表したため、誰もが知る情報ですぞ。しかし、異世界から来られて以外、ずっと部屋にいらっしゃったミヤマ様が知る由もないということも事実です」
「……なんで分かったんだ?」
猫だましされた猫のような顔をしている団長さ……ラスの顔を見て、少しだけ満足感を感じた。猫被りの猫を落としてやったって感じ。
「黒を下地として赤、青、緑を混ぜて様々な色を作りながら白を作っていくという発色方法があります。そして、操れるマナは魔力の色で決まるというお話を聞いての仮説でしたが……どうやら正解のようですね」
「ミヤマ殿がおっしゃる通り、モーリス卿はこの世界のあらゆるマナを操る素質がある。その魔力の特異性から、かつて大騒ぎになったことがあってな。あまり詳しくは話すことができないのだが、王子がいなければ次の国王はモーリス卿だったかもしれないくらいの出来事だったのだ」
恐らく、よくある後継者問題だろう。血筋か、実力か。
「結局は、成人するまで彼の身を守るためにこの事実は秘匿することにし、事なきを得たと言ってもいい。それほどに、魔力というのは大切なのだ。理解してもらえたか?」
「はい」
人には、生まれもった能力に差がある。それはこの世で一番の不平等な事実だ。この世界で、その不平等の最たるものが魔力だというだけの話だ。
※作者、五月病の可能性アリ……。
更新不安定になります……。
「無事に聖板にも登録されたようだな。その聖板に刻まれた文字は、登録されている持ち主の母国語で記されている。そのため、我々は読むことができないのだ。原理は分かっていないが、それがお主のこの世界での身分証明の証となる」
「なるほど……わかりました」
国王に促されて、聖板を手に取る。それは本当に薄っぺらい金属の板という感じだった。しかし、そこに刻まれている文字は紛れもない日本語だった。一緒にこの世界に持ち込まれていた教科書は時々暇つぶしに読んでいたから懐かしさとかはなかったけれど、真新しい文章というだけでも興味は惹かれた。
「では、女神より与えられた祝福を共に確認するとするか。神官長」
「かしこまりました。では、水晶による魔力測定で確認された、ミヤマ様の職業は魔術師。赤の魔力と青の魔力による複合型で、主に火のマナと水のマナの扱いに長け、更に神聖力のマナを操ることができる素質を持っております」
「魔術師で、火と水と神聖力のマナを操れる……。聖板にも同じことが書かれています。火と水のマナが赤と青の魔力ということは分かりますが、その二つの複合で神聖力のマナを操れるというのはどういった原理なんですか?単純な疑問なんですが……」
赤と青が混ざって紫は分かる。だけど、火と水が混ざって神聖力はありえないだろう。そもそも、神聖力ってなんだ。
「この世界では、魔法はマナを使って使用するのだが、操ることができるマナは生まれ持った魔力の色によって変わるのだ。赤の魔力は火のマナ。青の魔力は水のマナ。といったようにな。世界中にはあらゆるマナが溢れている。そのマナの数だけ、魔力の色が存在するのだ。マナ同士の混ざり合いは基本ありえないが、魔力は属性が違っても明確には色が違うということしか分かっていない。だから赤と青が混ざり合い紫の魔力が生まれると、必然的に神聖力のマナを操ることができるということしか分からないのだ」
「つまり『何故そうなのか』は分からないということですね」
「そうとも言えるな!」
「ワハハ!」と笑う国王を半眼で見る。できるだけ呆れたオーラを出したが、ご機嫌な国王が気づくことはなかった。
「基本的にこの世界の人間は単色の魔力のみを持っているのですが、時々例外がいます。複数の色の魔力を持つ者。これは王族や貴族に多いですね。そして、単色同士の混ざり合いで生まれる色の魔力も持つ者。ナチや私のような者です」
「団長さんも?」
「……名前」
「う……ラスも?」
渋々名前を言い直すと、彼は嬉しそうに微笑んだ。相変わらず綺麗な人だ。猫を被っていると知らなければ、もっと惚れたのにな……。
「私は赤、青、緑、黒、白の魔力の複合型。赤と青は火と水。緑は植物、黒は闇、白は光のマナを操ることができます」
「赤、青、緑、黒、白……光の三原色。しかもおそらく加法混色……ということは、ラスは他にも様々なマナを操ることができるのでは?」
加法混色とは、黒を下地として赤と青と緑を重ね合わせることで白に近付けながら色を作り出していく発色方法だ。複合型ということは、おそらく加法混色で混ざり合った魔力の色をわずかながらにも持っているはずだ。
「……驚いたな。それは王族と彼の家族、そして神官長以外は誰も知らないトップシークレットだというのに」
「陛下、それは去年までの話です。今は彼の成人をもって公表したため、誰もが知る情報ですぞ。しかし、異世界から来られて以外、ずっと部屋にいらっしゃったミヤマ様が知る由もないということも事実です」
「……なんで分かったんだ?」
猫だましされた猫のような顔をしている団長さ……ラスの顔を見て、少しだけ満足感を感じた。猫被りの猫を落としてやったって感じ。
「黒を下地として赤、青、緑を混ぜて様々な色を作りながら白を作っていくという発色方法があります。そして、操れるマナは魔力の色で決まるというお話を聞いての仮説でしたが……どうやら正解のようですね」
「ミヤマ殿がおっしゃる通り、モーリス卿はこの世界のあらゆるマナを操る素質がある。その魔力の特異性から、かつて大騒ぎになったことがあってな。あまり詳しくは話すことができないのだが、王子がいなければ次の国王はモーリス卿だったかもしれないくらいの出来事だったのだ」
恐らく、よくある後継者問題だろう。血筋か、実力か。
「結局は、成人するまで彼の身を守るためにこの事実は秘匿することにし、事なきを得たと言ってもいい。それほどに、魔力というのは大切なのだ。理解してもらえたか?」
「はい」
人には、生まれもった能力に差がある。それはこの世で一番の不平等な事実だ。この世界で、その不平等の最たるものが魔力だというだけの話だ。
※作者、五月病の可能性アリ……。
更新不安定になります……。
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