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4章

33 SIDEダレスティア ※

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「ああッ……! きもち、いい……ン、ぁッ!」

潤んだ目と、閉じることを忘れた唇の端から歓喜の雫が零れ落ちる。そのそれぞれを舌先で舐め取り、欲のままに腰を振る。両肩に担いだタカトの足が私の動きに合わせて揺れている。
この体勢は、タカトの顔を見ながらできるだけ深く彼の中に入ることができるため、よく行っていたものだった。タカトの蕩けた表情も、身体の力の入らなさも、まるで本当にセックスしているかのように感じる。
彼の太腿の間に挟んだ自身が、その錯覚に更に興奮を得たことを表して硬さと大きさを増した気がした。太股の間から突き出ている陰茎の先でタカトの陰嚢を押しつぶすかのように腰を突き動かせば、ビクビクとした反応が強くなり劣情を煽られる。

「ダレスティアぁ、もっ、だめ……! イキたいぃ……!」
「っああ……私も、ッ」

タカトの足を下ろし、自身の昂りをタカトのモノに重ね合わせる。擦り合って淫らな水音を立てる二人の昂ぶりを重ねたまま握り、絶頂に向かうために上下に手を動かした。

「ひっ、ああああああッッ!!」
「ッく、ぅ……!」

仰け反って嬌声を上げ、押し寄せる快楽から逃れるように首を振るタカトの顎を掴んでキスをすれば、素直に舌を絡めて応えてくれる。それだけで満たされた気分になるが、艶やかに色づいた胸の頂の片方を指先で弄れば、塞がれた口から悲鳴のような呻きが漏れる。
腰だけでなく、全身が小さく跳ね始めた。絶頂が近い。私も、そろそろ限界だ。

「タカト……っ! いい、ッ、か?」
「うん……ッ! イイっ! イイから、ぁ……んああっ!」

口を離せば快楽に濡れた声が溢れ出す。その声をもっと引き出したいと、腰を強く速く突き上げて昂ぶりの裏筋を擦り上げる。時折亀頭を捏ねるように手を動かせば、声を振り絞るように啼き身を捩り、縋るかのようにシーツを握りしめた。

「もっ……んぁッ、ぅ、もうっ、イくッぅ……ぁ、ああッ、あああああぁぁ!!」
「っ……ぅ」

絶頂の直前にシーツから奪い取ったタカトの手が、私の手を痛いほどに握りしめる。堪えるように身体に入っていた力が抜け、私達を受け止めたベッドが少し揺れた。

「はぁ、はぁ……」
「は……大丈夫か?」
「ん……」

熱に浮かされたようにぼんやりとした表情で返事を返すタカトのしっとりとした額に口づけて、身体を起こした。ねちゃりとした音が下半身から聞こえて、そちらに視線を落とせば、二人の股間辺りがぐちゃぐちゃに濡れていた。恐らくタカトよりも私の方が多いだろうそれは、自分の性欲が目に見える形になったようで複雑な心境で見下ろし、重なり合っていた身体を離して、軽く拭いてからベッドの縁に腰を下ろした。汗ばんだ肌に触れる空気が心地よいが、汗が引けば身体を冷やしてしまう。

「タカト、風邪を引いてはいけない。汗を流そう」
「うん……」

挿入してのセックスよりも長く高まり合っていたこともあり疲れきってしまったのか、タカトは眠そうにゆっくりと瞬きする目で私を見つめて腕を伸ばしてきた。どうやら抱き起してほしいらしい。
甘えているのか無意識か。真意は分からないが、どちらでも私に心を許していると受け取れる行動に眦が下がった。
私の首の後ろに回った手に引き寄せられるままに上半身を曲げ、その身体の下に両手を差し入れて抱え上げる。
両腕にかかる重さは以前に比べれば重さを増したものの、それでもまだ軽い部類だ。ロイでももう少しあるだろう。タカトには筋肉の違いだと言われそうだが、サファリファスもタカトくらいの身長の平均体重はもう少し上だと言っていた。もう少し食事量と運動量を見直す必要があるだろうか。

「ん……ダレスティア、ちょっと冷たい。気持ちいい……」

元々体温が低い私の身体はすでに冷え始めているようだ。熱が身体の内に籠っているらしいタカトは、言葉通り気持ちが良さそうに私の肩口の肌に頬を寄せている。その幼い動作に頬が緩む。
浴室でシャワーを浴びながら互いの身体を洗えば、背が高くて届かないと頬を膨らませながら言われ、しゃがめば嬉しそうに笑いながら肩から背中全体を泡だらけにされた。
どうやら眠気よりも私を泡だらけにする方が勝ったらしい。先ほどまでの気だるげな様子はもう無く、クーロと水浴びをしていた時のような無邪気さを見せている。
それに感化されてしまった私も、タカトの髪が泡で見えなくなるほどにしてしまったのだが、タカトはそれにも楽しそうに笑っていた。たまには、こういう戯れもいいものだなと思った。初めての経験だ。
柄にもなく浮かれていた私は、タカトによってこの戯れがオウカに暴露され、ネチネチと一日中地味な攻撃を受け続けることになるとは予想もしていなかった。

「眠い……ぁふ……」
「食堂の者には別で取っておくように言っておくから、朝はゆっくり寝ているといい」
「ぅん……ありがと……」

タカトのベッドはまだシーツの処理が済んでいないため、いつもはクーロが寝ている方のベッドにタカトを横たわらせる。浴室ではしゃぎすぎたためか、彼はすぐにその眼をうとうととさせてすぐにでも寝てしまいそうだった。
実際、明日はオウカが来ると伝えると「もふもふ……」と呟いて幸せそうに口元を緩めたと思えば、そのまま眠りの世界に入ってしまった。
その穏やかな寝顔をしばらく眺め満足すると、汚れてしまったシーツを回収して灯りの魔導具を消し、部屋の換気用の魔導具を起動させてから静かに部屋を出た。
扉を閉めれば、扉の表面に魔法陣が浮かぶ。登録された人物以外の侵入を防ぐ魔法が正常にかかったことを確認し、夜も更けた静かな宿舎の廊下を歩く。
カツカツと響く自身の足音を聞きながら、陛下との会話を思い出していた。
しかし、突然訪れた陛下には驚かされた。あの方は時折アイルと似たような凸拍子もない行動をされる時がある。滅多とないが、その度にあの方とアイルの血の繋がりを強く感じることになる。アイルもやはり、陛下の息子なのだなと。
それにしても……

「……婚約、か」

廊下を照らす明かりを辿って見上げた月は、母上のようにただ静かに私の決断を見守っていた。
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