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46、だらしなさの弊害

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「神殿の方がいるということは、アシュトン公爵令嬢からの不貞の慰謝料請求かしら? わたくしは殿下との仲は清算して縁を切ったし、ご令嬢も僅かな慰謝料でお許しいただくことができましたわ。お腹の子の処遇は王太后様に一任するという条件で、決まったはずですわ」

 お腹が張るのか、腹部を撫でながら言う夫人。商家の未亡人だという彼女は、非常に婀娜っぽい美女だった。ミニスも胸は大きさには自信があるが、彼女はそれを上回るたわわな巨乳だった。
 そして王太后が関わるということは、子供はエンリケとの間にできたと言っているようなものだった。
 王妃のグラニアは基本、責任のあることや面倒ごとを引き受けない。そのくせ、エンリケの我儘を周囲に受け入れろと強要する。
 結局のところ最終的な処遇はヘンリーやゾエが担う。途中の面倒はフレアに丸投げが多いが、エンリケが属すのは王家なのだ。
 ゾエ預かりであることを知っていたのか、大臣が頷きながら話す。

「ええ、それは分かっております。貴女は王命で強制招集し、保護をして出産していただくために来ていただいたのが大きいのです。生れた子供を誰かが誘拐したら厄介ですからね。
 他の方は、確認の為です。こちらがメインと言えます。この中で、エンリケ殿下と肉体関係のあった方は正直に申し上げてください」

「……わたくしはありました。エンリケ様に強く求められ、断れなかったのです」

 聞けば、ずっと泣いていた彼女は田舎からでてきたばかりの男爵令嬢らしい。
 エンリケにかなり熱心に口説かれ、気づいたら――と言っていた。
 それ以外にもちらほらと出てきて、見てみれば半数以上がそういう関係にあったと分かった。ミニスは愕然とする。
 あっけにとられ過ぎて返事をしていないのはミニスだけとなっていたが、それすら気づかないほどだった。

「我々は、病気の確認のために貴女がたを呼びました。アシュトン公爵令嬢から教えていただいた情報によると、エンリケ殿下は性病を患っておいでだそうです」

 その場にいた全員が凍り付いた。
 病気というのは忌避されがちだが、特に性病というのは外聞が悪い。未婚女性だろうが、既婚女性だろうが醜聞になるのは間違いなかった。
 フレアがエンリケの奔放な社交にうるさく言い続けていた理由は、これもあったのだろう。だが、王家の顔を立ててなるべく伏せて苦言を呈していたのだ。
 エンリケは全てを知っていても、自分が楽しければ万事を通す。のちのことは周囲に尻拭いをやらせればいいと軽く考えていたのだろう。その弊害が今ここに出ていた。
 関係がないと言っていた中にも、実はあった人がいたのだろう。
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