復讐も忘れて幸せになりますが、何がいけませんの?

藤森フクロウ

文字の大きさ
上 下
28 / 73

28、王妃グラニアの嫉妬

しおりを挟む
 


 息子のエンリケがフレアと婚約破棄をして、ミニスという令嬢と新しく婚約すると報告したいと相談を受けた。
 グラニアは国王のヘンリーと恋愛結婚である。
 その大恋愛は、ブランデルでもロングセラーの小説となり、演劇や歌劇の題材となっている。吟遊詩人たちはいまだに人気の曲として歌い続けている。
 それだけ、グラニアとヘンリーの結婚は皆に祝福されたものだったのだ。
 それを聞いて育ったエンリケは、当然ながら恋愛結婚に憧れた。
 だが、グラニアと結婚したことにより、ヘンリーは本来いた婚約者とその母国と険悪な仲となり、多くの共同事業が頓挫して、貿易もかなり減った。
 母方が卑しい血筋の王子は他国から相手にされず、ヘンリーの時の派手な婚約破棄もあって、ブランデルの上級貴族からもそれとなく断られた。
 それでも何とか、公爵令嬢を婚約者にすげることができた。
 その家はグラニアとかつて恋仲にあった一人の男の実家だった。恋人の名はケイネス・アシュトン。今でも密やかな関係を続けている。不倫の末、王に隠れて、子を生んだこともあった。
 それくらい気に入っていたケイネス。
 彼は可哀想な人なのだ。
 グラニアとの関係がバレ、先代アシュトン公爵に追放されたケイネス。学園のプロムナードでの婚約破棄で、グラニア側にいたのが逆鱗に触れたのだ。
 優秀であったケイネスは廃嫡となり、すぐ下のジョージがアシュトン公爵家を継ぐこととなった。
 ジョージはケイネスと違い、顔立ちも成績もぱっとしない男である。優秀なケイネスへの劣等感を拗らせ、悪評判があったというのに王家との婚姻に頷いた。
 その結果が、妻のクレアの軋轢と別居。クレアもグラニアたちの婚姻を良しとしない考えを持っており、エンリケとフレアの婚約を無くさないと戻らないと実家に行ってしまった。
 しかし、それに反省するどころかジョージはここぞとばかりにフレアに言いきかせた。期待と重責が幼いフレアにのしかかり、幼いころから他の令嬢や令息と比較にならないほどの教養を身に付けさせられていた。
 そして、ジョージよりクレアに似ていたフレアは、ぐんぐんその知識を吸収し、才能を多方に開花させた。
 幼少期から、非の打ち所のない淑女としてフレアは完成していた。
 神秘的な美貌に完璧な所作。一目見て、惚れっぽいエンリケはフレアを見初めた。
 本人は忘れているようだが、国王夫妻や王太后が言う前から、エンリケはフレアを妃にすると言ってきかなかった。


 だから、グラニアはフレアが大嫌いだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

処理中です...