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26、高みの見物
しおりを挟む(あのミニスという娘はどうかしら? エンリケ殿下よりはお花畑ではなさそうだったけど)
慰謝料という大金に目が眩んでいる父親は、王家からどんなに打診されてもフレアもユリアも差し出さないだろう。
フレアにはああは言っていたものの、王家と縁続きになる実績と、実害を考えあぐねていた所での婚約破棄だ。
エンリケは浪費癖もあり、自分に割り当てられている予算では足りず、婚約者費用に手を付けていた。
婚約者費用はその名の通り、婚約者への贈り物として使用が許されている予算である。
本来ならば年中行事や公務等で、エンリケとフレアは社交をする必要がある。そこで、仲睦まじさや、センスを周りにアピールする一環でドレスや宝石を贈る。中には旅行や遠乗り用の馬を贈った王子も過去にいたが、基本はそういう用途に使う物である。
それに飽き足らず、アシュトン公爵家に関わる商会でツケの買い物をし、時にはフレアの名やアシュトン公爵家の名を出して散財や借用をし、踏み倒すことが年々増えていた。
それは結果、借用した本人のいる王家ではなく、支払える資金が見込めるアシュトン公爵家に支払いを求められる始末だ。
王家に伝えても、結婚するのだからと濁されて、ほとんど返ってきていない。
それだけ散財しても、フレアに対して花一輪すら贈らない。
エンリケは当然、婚約者同士のやり取りすら守らない。今まで、フレアにドレスやジュエリーなどが贈られないのは至らないからだとジョージは叱責されることもあったが、それはフレアの問題ではない。
(その時の『運命の恋人』さんに貢いでいたものね。横領だと分かっていないようですし)
紅茶の馥郁たる香りに目を細め、優雅にカップを傾ける。
悪くない茶葉だ。父の好みで流行遅れの葉だが、一流のものなのは違いなかった。
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