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23、似た者同士のバカップル
しおりを挟むアシュトン公爵家に門前払いを食らったエンリケは、機嫌を損ねて数日部屋に籠っていた。
フレアは涙を浮かべて喜んで出迎えてくると思ったのに、フレアどころか誰一人公爵家の人間は顔を出さなかった。不敬にも程がある。
だが、不貞腐れても侍従に女を要求することは忘れなかったので、一人で過ごすことはほとんどなかっただろう。
その間、フレアから来た手紙や連絡は仕事の引継ぎについての事務的なものだけだった。
どうせフレアにまたやらせるからと、エンリケはすぐに見るのをやめた。元々難しい事やまどろっこしいことは大嫌いなのだ。
エンリケが欲しかったのは、謝罪と許しを乞う手紙だ。事務手続きの書類ではない。
イラついてもっといい女を呼べと侍従に八つ当たりした。
侍従が用意する女は従順だが、フレアの容色より大分劣るとしか言いようがなかった。外見もそうだが、所作や喋り方がやぼったい。
(やはり側妃に取っておくべきだった。フレアは可愛げはないが、美しさは俺の知る美女たちの中でも一番だからな。閨で調教してやればよかったんだ……)
ベッドの上なら、あの冷ややかな表情も崩れるだろう。
妄想に下種の笑みを浮かべるエンリケは、現実にいる隣のいまいちな女に落胆した。
エンリケは全く変わっていなかった。
同じ王宮で、婚約破棄をしてまで妃にしたい女性がいると叫んでいたのに、全く説得力も誠実さの欠片もない。
満足な女が手に入らないエンリケの怒鳴り声は、廊下の外までよく響いていた。
ミニスを呼びたかったが、そうもいかなかった。ミニスはミニスで忙しかった。王子妃――可能ならば王太子妃としての器量はあるかと、さっそく教養や学力レベルを調べさせられていた。
だが、外見がちょっと可愛いく胸が大きいことが取り柄のミニス。それ以外の出来は無残な物だった。愛嬌というか、頭と下半身の緩い男へ媚びを売ることにしか能がないと教師たちは溜息をもらす。
エンリケが拗ねるのに飽きて会いに行くと、ミニスはすぐに泣きついた。
「エンリケ様ぁ! こんなのミニスにはムリですぅ! みんなすぐ怒るし、冷たいし、事あるごとにフレア様フレア様って比較されて悲しいですぅ!」
「おお、可哀想にミニス! 俺がそんな教師などクビにしてやる! 俺の大事なミニスを泣かせるなんて、無礼な奴らだ!」
「嬉しい~! ミニス、エンリケ様の事だ~いすきです!」
金を貰いたいくらい酷い三文芝居だ。
エンリケが来たことをいいことに、ミニスは出された課題を放棄していた。
二人の世界とばかりにエンリケとイチャイチャしていると、来訪者が来た。
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