16 / 73
16、婚約破棄を白紙に
しおりを挟むグラニアに魅了されたケイネス。次期公爵と有力視されていた。長男だったケイネスを追い出したアシュトン公爵家であるが、その早急な対応により王家やずっとグラニアに心酔した貴族たちより評判が良かった。
古い貴族たちの中には、ヘンリーやグラニアを未だに認めていない家もある。
もともと、王子であるヘンリーが強引に婚約者を捨てたことにより、ランファンと国ぐるみで提携していた事業が少なからずとん挫してしまったのだ。その被害を受けた家は没落したところもあった。それもあり、王家を――ヘンリーやグラニア、エンリケを恨んでいる家は多くあった。
(フレアは側妃でもいいから納得させ、とにかくこの国に縛らねば。国交を保ち、エンリケをどうにかできるのは彼女しかいない)
計画倒れした事業により、ブランデルは長らく不況の真っただ中にいる。
すべてはヘンリーの婚約破棄に始まり、その結果できた出来損ないの王子エンリケ。王太后はフレアを逃したら、今度こそエンリケを許さない。
ヘンリーは『真実の愛』『運命の恋』という耳障りの良い言葉で国民を扇動し、何とか誤魔化してきた。
全てがバレてしまえば、ヘンリーは玉座を追われ暗君、暴君として後世に語られる愚王として名を残すこととなるだろう。
ヘンリーの偉業は、身分差を超えたラブストーリーくらいだ。
だが夢は一時で、残った現実は厳しかった。無能な王妃を据え、母の手を借りなければ政治が回らない。生れた子供は酷く愚かで、獣のように女を漁る奔放さだった。
何が何でも、嘘を付き通してでも演じなければならない。愛に生きた幸福な王でいなければならないのだ。惨めな王に等なりたくなかった。
(……まずはアシュトン公爵だ。あれはまだ御しやすい。フレアは従順だが、得体のしれないところがある。今からでも婚約破棄を撤回させなければ。最悪、妹の方のユリアをこちらに寄越す様にすれば縁は薄れるが、フレアとの筋は残る)
王が筆を執った。急いで婚約破棄をなかったことにするために動いた。
しかしそれは遅すぎた。
その頃にはフレアは王宮から全ての使用人や私物を引き上げる指示を出し、エンリケの仕打ちを理由に婚約破棄の履行を裁判所と神殿に求め、ユリアの縁談を纏め終えた後であった。
現状に胡坐をかいて対策をしていなかったヘンリーと、機を待って万全を期したフレアでは勝敗は明らかだった。
113
お気に入りに追加
3,890
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる