15 / 73
15、ブランデルの外交事情
しおりを挟む一方、ブランデル王国はここ最近で、評判を大きく下げた国だ。
ヘンリーはかつて隣国の王女ベネシーと婚約していた。
だが、学園でグラニアと恋に落ちて、ベネシーを手酷く振ったのだ。
ベネシーは隣国ランファンの王女であったが、大した国ではなかった。ヘンリーは幼いころから手紙でやり取りをし、年に数回だけ国事であうベネシーを嫌いではなかった。
しかし、そうであっても親と国に決められて、縛られた結婚に反抗心を燻らせていた。
だからグラニアに恋に落ちたとき、ヘンリーは自分で選んだ愛する人と結ばれるためにかなり無茶をした。
正直に言ってしまえば、エンリケの様にプロムナードでベネシーを悪し様に罵って強引に婚約破棄に踏み切った。
だが、ヘンリーは愚かではなかったのでちゃんと側近や周囲に根回しをした。ヘンリーの母は激怒したが、世間を賑わせて若い貴族と平民に絶大な支持を得て押し切ったのだ。
ブランデルで悪の王女扱いされたベネシーは軽蔑と憎悪の目をして隣国に帰っていった。
後に彼女はグランマニエ帝国の第六皇子トルハーンに嫁ぎ、権力争いに勝ち第一皇妃となった。しかも、トルハーンは皇帝となった。そう、なってしまった。
ブランデル国王に遺恨のあるベネシーが、グランマニエ皇帝の寵愛を受け皇子たちを生み、今では皇妃として最も立場がある皇后となった。皇子時代からトルハーンを支え続けたベネシーは、絶大な勢力を持っているのだ。
ベネシーの憎悪が夫や子供たちに伝わっている可能性は大いにある。
今はまだベネシーは皇妃や国母として邁進しているが、何かの拍子に憎悪が焚きつけられるかもしれない。優秀な皇太子らが、復讐を代行しに来るかもしれない。
ヘンリーは、それは恐ろしかった。
(だから、だからこそフレアを矢面に立たせるはずだったのに!!)
皇帝トルハーンは実母――皇太后を敬愛していることは有名だ。
シェリダン公国の滅亡は痛ましくも、ドラマティックだった。自国が滅びようもグランマニエ帝国の為の情報をしっかり伝えた。竜の暴動の理由や、狂暴性、対処法などを書き記した。得られた情報は、グランマニエ帝国を、そしてその後ろにいる国々を救ったのだ。トルハーンは、賢明で聡明な亡国の王族の血を引いていることを誇りに思っている。
そんなトルハーンであれば、フレアがブランデルの顔となっている限り振り下ろす刃も鈍るはずだ。事実、国交の際に幼いフレアを無理やり行かせたが、手酷くされることは一度としてなかった。他の外交官が参加した時はけんもほろろだったし、手痛い洗礼を受けていた。
フレアがもともと優秀な資質を持っていることを差し引いても異例の対応だ。
トルハーンはブランデルを嫌っているがフレアを悪からず思っている。
あわよくばとその身柄や血筋をグランマニエに組み入れたいのだろう。フレアの優秀さが知れ渡るほど、喉から手が出るほど欲しがっているのが分かった。
国は滅び、各国に嫁いだり臣籍降下などしたりした血筋しか残っていないシェリダン公国の忘れ形見は少ない。
自称王族はいたが、フレアが間違いないのはその容姿にも表れていた。
王族たちの婚姻は友誼を結ぶために大切な手札だ。
そしてその手札は、その系譜や家柄によって威力が大きく変わる。
(フレアには生まれた時から国外から縁談が殺到していた! 何のためにクレアをアシュトン公爵家に嫁がせて血を残させたと思っているんだ!)
123
お気に入りに追加
3,896
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした
Karamimi
恋愛
15歳のフローラは、ドミスティナ王国で平和に暮らしていた。そんなフローラは元公爵令嬢。
約9年半前、フェザー公爵に嵌められ国家反逆罪で家族ともども捕まったフローラ。
必死に無実を訴えるフローラの父親だったが、国王はフローラの父親の言葉を一切聞き入れず、両親と兄を処刑。フローラと2歳年上の姉は、国外追放になった。身一つで放り出された幼い姉妹。特に体の弱かった姉は、寒さと飢えに耐えられず命を落とす。
そんな中1人生き残ったフローラは、運よく近くに住む女性の助けを受け、何とか平民として生活していた。
そんなある日、大けがを負った青年を森の中で見つけたフローラ。家に連れて帰りすぐに医者に診せたおかげで、青年は一命を取り留めたのだが…
「どうして俺を助けた!俺はあの場で死にたかったのに!」
そうフローラを怒鳴りつける青年。そんな青年にフローラは
「あなた様がどんな辛い目に合ったのかは分かりません。でも、せっかく助かったこの命、無駄にしてはいけません!」
そう伝え、大けがをしている青年を献身的に看護するのだった。一緒に生活する中で、いつしか2人の間に、恋心が芽生え始めるのだが…
甘く切ない異世界ラブストーリーです。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる