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15、ブランデルの外交事情
しおりを挟む一方、ブランデル王国はここ最近で、評判を大きく下げた国だ。
ヘンリーはかつて隣国の王女ベネシーと婚約していた。
だが、学園でグラニアと恋に落ちて、ベネシーを手酷く振ったのだ。
ベネシーは隣国ランファンの王女であったが、大した国ではなかった。ヘンリーは幼いころから手紙でやり取りをし、年に数回だけ国事であうベネシーを嫌いではなかった。
しかし、そうであっても親と国に決められて、縛られた結婚に反抗心を燻らせていた。
だからグラニアに恋に落ちたとき、ヘンリーは自分で選んだ愛する人と結ばれるためにかなり無茶をした。
正直に言ってしまえば、エンリケの様にプロムナードでベネシーを悪し様に罵って強引に婚約破棄に踏み切った。
だが、ヘンリーは愚かではなかったのでちゃんと側近や周囲に根回しをした。ヘンリーの母は激怒したが、世間を賑わせて若い貴族と平民に絶大な支持を得て押し切ったのだ。
ブランデルで悪の王女扱いされたベネシーは軽蔑と憎悪の目をして隣国に帰っていった。
後に彼女はグランマニエ帝国の第六皇子トルハーンに嫁ぎ、権力争いに勝ち第一皇妃となった。しかも、トルハーンは皇帝となった。そう、なってしまった。
ブランデル国王に遺恨のあるベネシーが、グランマニエ皇帝の寵愛を受け皇子たちを生み、今では皇妃として最も立場がある皇后となった。皇子時代からトルハーンを支え続けたベネシーは、絶大な勢力を持っているのだ。
ベネシーの憎悪が夫や子供たちに伝わっている可能性は大いにある。
今はまだベネシーは皇妃や国母として邁進しているが、何かの拍子に憎悪が焚きつけられるかもしれない。優秀な皇太子らが、復讐を代行しに来るかもしれない。
ヘンリーは、それは恐ろしかった。
(だから、だからこそフレアを矢面に立たせるはずだったのに!!)
皇帝トルハーンは実母――皇太后を敬愛していることは有名だ。
シェリダン公国の滅亡は痛ましくも、ドラマティックだった。自国が滅びようもグランマニエ帝国の為の情報をしっかり伝えた。竜の暴動の理由や、狂暴性、対処法などを書き記した。得られた情報は、グランマニエ帝国を、そしてその後ろにいる国々を救ったのだ。トルハーンは、賢明で聡明な亡国の王族の血を引いていることを誇りに思っている。
そんなトルハーンであれば、フレアがブランデルの顔となっている限り振り下ろす刃も鈍るはずだ。事実、国交の際に幼いフレアを無理やり行かせたが、手酷くされることは一度としてなかった。他の外交官が参加した時はけんもほろろだったし、手痛い洗礼を受けていた。
フレアがもともと優秀な資質を持っていることを差し引いても異例の対応だ。
トルハーンはブランデルを嫌っているがフレアを悪からず思っている。
あわよくばとその身柄や血筋をグランマニエに組み入れたいのだろう。フレアの優秀さが知れ渡るほど、喉から手が出るほど欲しがっているのが分かった。
国は滅び、各国に嫁いだり臣籍降下などしたりした血筋しか残っていないシェリダン公国の忘れ形見は少ない。
自称王族はいたが、フレアが間違いないのはその容姿にも表れていた。
王族たちの婚姻は友誼を結ぶために大切な手札だ。
そしてその手札は、その系譜や家柄によって威力が大きく変わる。
(フレアには生まれた時から国外から縁談が殺到していた! 何のためにクレアをアシュトン公爵家に嫁がせて血を残させたと思っているんだ!)
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