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14、不出来な王妃の穴埋め
しおりを挟むグラニアの出自は本来王妃として相応しくないものだった。能力も酷くお粗末だ。
それを補うために由緒正しき令嬢の中でも、ずば抜けて優秀かつ国内外でも名門と言えるフレアにしたのだ。何もかも足りない王子しかいないブランデル王家が、これ以上に顰蹙を買わないために彼女を選んだ。
アシュトン公爵家はブランデル王国でも譜代貴族であり、フレアの母のクレアは亡国であるシェリダン公国の血を引いている。
亡国と言うと凋落と思えるかもしれないが、シェリダン公国は周辺国でも一等強国であるグランマニエ帝国の皇太后がその出身なのだ。
シェリダン公国はグランマニエ帝国の兄弟国であり、長らく友好を紡いでいた。
シェリダン公国の滅亡は、ポルカ国が竜の巣を攻撃し、隣国のアディオンを襲わせようとしたのが原因だ。
しかもその方法が残酷だった。竜の卵や子を奪い壊し、惨たらしく殺し、子を失い怒り狂った親竜を襲わせるという恐ろしい計画だった。卵の残骸や、幼竜の死体を襲わせたい砦や街付近に埋めれば、親竜はやってくる。
その計画はある程度上手くいったが、それだけでは済まなかった。怒り狂ったのは親竜だけでなかった。その群れだけにとどまらず、同胞の慟哭と怒号を聞きつけた他の群れまで集まってそのアディオンどころか周囲一帯の国を焦土にしたのだ。
竜種の賢さと、共鳴や共感力を侮ったのだ。
たくさんの集落、国、部族が消えた――その一つがシェリダン公国だ。
妖精と花園の国と称賛されたシェリダン公国。四季折々に豊かな花が咲く美しい国は愚かな隣国の暴挙により消えた。
大国グランマニエにも暴徒化した竜たちは襲い掛かったが、皇太后が実家からいち早く受けた連絡により迎撃に成功。何とか撃退して、竜たちを散り散りにさせ追い返した。
自国を失おうとも、友好国の為に素早く動いて未来を繋いだシェリダン公国は、グランマニエ皇帝直々に感謝の意を表して、王城があった場所に壮麗な神殿と霊廟が建てられた。
グランマニエ帝国の被害は最小限で済んだし、竜の大群に襲われてはひとたまりもなかっただろう周辺所外からも感謝と尊敬を集めた。
だから、そのシェリダン王族を父方に血を引くクレア・アシュトン――そしてその娘のフレア・アシュトンはその辺の王侯貴族とは格が違えば、箔も違う。
グランマニエ帝国に特別な恩義があり、名高い美談を持つシェリダン公国の血筋は、プレミアがついているのだ。
なにせ、それをきっかけにグランマニエ帝国はシェリダン公国のあった場所を王家直轄の地として皇太后に召し上げられ、かつてアディオンやポルカのあった場所はグランマニエ帝国の支配下となって、一層の国力増強となった。
美談の裏にある実利は多くあった。グランマニエ帝国は、国庫を潤す稀少な鉱脈や珍重される植物や穀倉地帯を手に入れたのだ。
列強大国の中でも、一段とのし上がった形となった。
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