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13、王太后ゾエの怒り
しおりを挟むエンリケが起こした事件を聞いて、国王のヘンリーは王宮にすっ飛んで戻ってきた。
王妃もエンリケもまともに王族としての仕事ができないため、国王自ら出向くことが多くある。
それでも、フレアがだいぶフォローしてくれた――しかし、今回エンリケがフレアを学園行事であるプロムナードに絶対出るように言っていたので、国王がその穴埋めに動くことになった。
王太后はそれなりに年なので、長い移動は体に堪える。持病もあり、無理は禁物なのだ。だから王が動いた。
本来であれば現王妃の仕事であるが、そんな能力がない事を知っていた。
王妃――グラニア・ブランデルはいつまでも少女の様な人である。
淡いブロンドの髪に、薄桃色の瞳。溜め息の出そうなほど可憐な美しい人――と吟遊詩人が歌わされているが、実際は年甲斐もなく落ち着きのない中年女性だ。
いい加減、あの若作りメイクも不自然になってきたし、その金の髪に白髪が混じり始めていることだって、身近な人間や目ざとい者は気づいていた。
特にここ数年で一気に老け込んでおり、美容関係の散財が激しい。その甲斐あって多少は若く見えても、流石にグラニアの望むレベルまでにはならない。
グラニアは未だにうら若い少女がするようなメイクやファッションを好むのだから、余計に浮いて見える。
いつまでも話題のお姫様気分の王妃は、その性質故に王太后に疎まれている。
能力のないお飾りの妃は、自分を褒めそやす人間ばかり集め、自分の宮殿で毎日のようにお茶会を開いている。
欲しい言葉だけをくれる人間だけを選び、小さな箱庭で女王の様に振舞っているのだ。
エンリケのふざけた運命の人理論を詰め込んだのも彼女である。
きっとグラニアのことだ。この婚約破棄を知っていたとしても、何も考えずにエンリケを応援したのだろう。
もともとグラニアは優秀なフレアを妬んでいた。
(ああ、なんてことだ! フレア・アシュトン以外に誰がエンリケを王にできるというのだ!)
あの冷ややかな冬の女王の様な少女は、血筋、家柄、能力の全てが揃っていた。
貴族の令嬢であることに、国の歯車であることを自覚しているフレア。
彼女にはエンリケが覚えなかった全て以上の物を学ばせたのだ。たとえ、エンリケがグラニアの様に後宮で一生遊び惚けても、フレアがいればすべてが回るほどに。
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